KINSの投資家の皆様がどういった点でKINSを評価したのか、代表の下川との対談形式でお届けするインタビューです。
本記事はNIPPON EXPRESSホールディングス株式会社でコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを立ち上げ、スタートアップとの共創を推進するコーポレートベンチャリング部長の青 浩司さんとの対談になります。
KINSに限らず医療・ヘルスケア領域での物流の課題や、その中でKINSとの共創に期待することなどについて、お考えを交えてうかがいました。
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
コーポレートベンチャリング部長
1993年日本通運入社。航空貨物のセールス、オペレーション業務に従事後
2000年より本社企画部門に異動。社内起業でデジタルガレージとJVプロジェクトを立案し
Eコマースのフルフィルメント会社を創業、代表取締役に就任。
本体復帰後、人財育成部門、グローバルセールス部門、営業戦略部門を経て2023年1月より現職。
KINSとの出会い
インタビューアー:
ファーストコンタクトについて、NIPPON EXPRESSホールディングス様からKINSにご連絡いただいたそうですが、そのきっかけをおうかがいしてもよろしいでしょうか?
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社、青さん(以下、青さん):
KINSさんの「菌バンク」というキーワードをとある媒体で見つけたのがきっかけです。物流産業は様々な業界のお客様との関係性の中で成り立っていますので、当社のCVCもスタートアップの探索領域の幅は、比較的広めに設定しています。我々のグループ会社でこの「菌バンク」と非常に近しい領域でサービスを展開している会社(後述の株式会社NXワンビシアーカイブズ)があるので、そことのシナジーが見込めるのではないかと考え連絡をさせていただきました。
インタビューアー:
ありがとうございます。菌のバンキング自体を行っている会社は他にもあるかと思いますが、その中でどういうところが良かった、魅力的だったなどもしあれば教えてください。
青さん:
KINSさんが、健康意識が非常に高いユーザーの皆様と、疾患でお悩みの方との両睨みで事業を展開されている点が非常に興味深く、またそこで蓄積されるデータを新たなプロダクト開発に活用していくビジネスモデルにも惹かれました。下川さんの社長としてのお人柄も魅力的ですので、当社の担当者がそこに魅せられた、というのも大きなポイントであったと認識しています。
インタビューアー:
ありがとうございます。最初にKINSのことを知られてからどれくらいで出資を決められたのでしょうか?
青さん:
半年くらいであったと記憶しています。
インタビューアー:
KINSの方では、物流産業の会社とのシナジーは以前から感じられていたのでしょうか?
KINS、下川(以下、下川):
今振り返ると、初回にお話しさせていただく際は一般的な方が想像される事業内容以上に十分な理解をできていなかったと思うのですが、初回のキックオフで対話をさせていただく中ですぐに具体的なイメージが湧いてきました。
というのも、特に今年は石川県で地震があったこともあり、今後弊社の独自の菌原料が次々と原料化していく中で、当社のラボで同じことが起こったらどうなるのだっけというのを想像すると危機感を感じました。そのタイミングでNXグループのNXワンビシアーカイブズ社のサービスがすごくマッチしました。
また、今後国内だけではなく海外で本格展開していくときに国境を越えた検体や原料の輸送の実行をどうするのかという点が十分に整理されていなかったことに対話の中で気づかせていただき、ここを一気に整える必要があるなと感じました。
気づきを与えていただいたことをありがたく感じました。
資金調達について
インタビューアー:
KINSの資金調達についておうかがいできればと思いますが、その前に現在の事業モデルやこれまでの実績について簡単にお教えいただけますでしょうか。
下川:
はい。足元はプロダクト事業、クリニック事業、メディカルプラットフォーム事業の3つの事業のかけ算で新しい価値を提供していっています。
マイクロバイオームの良さをいかに多くの人々に届けるかというのを重要視しており、例えば先ほど青さんにもおっしゃっていただきましたが健康な方に対しては予防医療の観点で届けていきたいですし、疾患の方には治療という観点で貢献していきたいと思っています。
弊社の特長はやはりB2C事業で多くのロイヤルカスタマーの方々とつながっているので健康な方のデータが取れるということと、クリニックでは疾患の方のデータが取れるので、両方のデータを取りながら自社ラボで独自の原料について研究が行える点にあります。創業後の5年強でこのビジネスモデルを作り上げつつ、シーズの探索を同時並行的に行ってきましたが、結果として今独自原料が3つ、来年には更に数個と次々と菌原料のシーズが出てきており、それを医薬品、食品、化粧品と様々な事業に活用できるモデルを確立できたのかなと思っています。
今後はこれをB2CおよびB2Bで広く届けていくのですが、その際に原料の輸送・保管の観点で海外国内問わずシナジーを実現できればと考えています。
インタビューアー:
ありがとうございます。青さんにおうかがいさせてください。今回の資金調達のディスカッションの中でKINSのビジネスモデルについて聞かれたと思うのですが、その後対話を重ねていく上で印象が変わった点や意外と思われた点などがもしあれば教えてください。
青さん:
先日KINSさんのシンガポールのクリニックを見学させていただきましたが、日本を感じる世界観が作りあげられていることに驚きを感じました。 受付、掲示物の仕方、お客様の導線など、随所に工夫が見られ、何か日本の病院に来たような感じがするのです。サービスを通じて美しくなるとか、疾患が改善するというような価値をKINSさんは提供されていらっしゃいますが、そのベースとして日本ならではの良さ・安心感等も大切にされているのだな、と改めて感じました。
インタビューアー:
ありがとうございます。こちらはおうかがいできる範囲で構わないのですが、他にも案件がある中で、半年という比較的短期間で意思決定まで進められた点についてはどのような要因があったと考えられていますか?
青さん:
我々のCVCは2023年1月に設立したばかりのまだ新しい組織ですので、スピード感をもって投資判断ができるように、メンバーには様々な工夫をしてもらっています。
例えば、物流事業も現場が非常に重要なビジネスですので、投資先のトップの方が描く計画と実際の現場のビジネスがうまくリンクしているか、というようなポイントは重要視しています。
同じような価値観をもてるかといった観点ですね。その点、 KINSさんは実業に対するコミットメント力もしっかりとお持ちですので、我々も意思決定がしやすかったように記憶しています。
インタビューアー:
ありがとうございます。KINSが複数の事業を行っている中で、既にB2C事業で一定の実績があるということも評価になったのでしょうか?
青さん:
はい、それもありますが、今後KINSさんが事業領域をB2Bに拡大されていく流れの中で、当社がプラスアルファの付加価値を提供できる余地があるのではないか、という可能性を感じられたことが大きかったように思います。
先ほどご紹介いただいたNXグループのNXワンビシアーカイブズ社では、いわゆる細胞や検体の凍結保管サービスを提供しておりますが、ただ単に保管するだけではない、付加価値をもっと出していきたいという風に社内では常に話しているのだそうです。
まだ具体的なことは申し上げられないのですが、何かそんなところでもKINSさんとご一緒できればな、と思っています。また、今後のグローバル展開のサポートももちろんしていきたいですし、当社では大手EC事業者のロジスティクスオペレーションの支援も行っていますので、KINSさんの事業戦略と当社のアセットで合致する部分を今後色々と見出せそうだなとも感じています。
シナジーについて
インタビューアー:
ありがとうございます。出資実行後の事業提携の進捗や今後の展望についておうかがいしたいです。
下川:
はい。直近、弊社のラボの拡張移転をいたしましたが、その際に独自菌株のバックアップ保管をNXワンビシアーカイブズ社にお願いさせていただきました。
弊社にとってはじめてのラボ引越で慣れない中でご丁寧なサポートをいただき、当社の研究員も大変感謝しておりました。
他には当社の中国事業に関係する輸送の相談などもさせていただいています。
インタビューアー:
ありがとうございます。NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社の方での今後の協業への期待値についても改めてお教えいただけますか。
青さん:
はい。実はヘルスケア産業はNXグループが経営計画で定めている5つの重点産業の1つであり、医薬品や医療機器等に関わるロジスティクスサービスは今後さらに磨いていこうとしていますので、KINSさんとの協業がこの領域での事業拡大につながるきっかけになればと思っています。
例えば、医療領域では、温度管理他の管理自体が大変厳格に求められますし、保管設備の審査や輸送容器の開発などのプロセスもあります。そういう部分でもKINSさんとのグローバルでのコラボレーションの可能性があるのではないかと思っています。
インタビューアー:
ありがとうございます。KINSの方では、現在課題に思っていることや、それを踏まえて期待している部分などありますか。
下川:
そうですね、当社は様々な事業を行っており、マーケティング、CRM、バックオフィスなど様々なチームがあるのですが、ロジスティクスの部分についてはまだまだ強化する余地が大きいと思っているので、すごく学ばせていただきたいと思っていますし早速NXワンビシアーカイブズ社にも頼らせていただいています。
あとは今話を聞いていて改めて思ったのが、マイクロバイオーム創薬の方だとやはり難易度が相当に高く、よい薬やプロダクトを作れても最終的にクリニックや消費者に届けられるのかというところです。
直近では、例えば生菌を入れた化粧品が欧米では一部で始めているのですが、それを輸送して届けるということになると、何も考えずにやると輸送費が高くなって結局広く届けられないようなことになりそうな可能性を感じます。
この辺りは、物流のプロの皆様は当社よりもはるかに多くの選択肢をお持ちだと思いますので、連携させていただきながら新しい価値を広く世の中に届けられるようなことができれば理想だなと思っています。
最後に
インタビューアー:
ありがとうございます。色々おうかがいさせていただきましたが、最後に今後についての意気込みを教えてください。
下川:
そうですね、当社だけではできないところという点で、やはり一緒にやらせていただくことで新しいことをできるかが大事だと思っております。
例えばこれまで日本にはなかった新しい原料とか、新しいプロダクトとか、そう言った部分で新しい価値を限定された範囲でではなく広く世の中に届けるにはロジスティクスが肝となりますので、この部分で新しい取り組みができればと考えています。
青:
今のお話を受けて思い出しましたが、私が以前大阪にいた時に医薬品関係のお客様のお仕事をさせていただいたのですが、温度管理に大量のドライアイスと発泡剤が必要ということがありました。このような温度管理面でのイノベーションであるとか、当社も比較的大きい会社ではありますが現場でのイノベーションを大切にしているので、是非KINSとの提携を通じて新しい付加価値の提供を追求していきたいと思っております。
一同:
ありがとうございました。