【スーパーフード】納豆の種類と健康効果、栄養価を意識した納豆の選び方
スーパーやコンビニなどで手軽に買うことができる納豆。
日本では特に、小さい頃から「納豆は身体にいい」と言われて育った方も多いのではないでしょうか。
これほど身近で馴染みのある食べ物がスーパーフードとされる理由を詳しく紐解きながら、納豆が持つ嬉しい健康効果についてお話ししていきます。
菌の専門家イチオシの納豆もご紹介しますので、納豆選びの参考になさってみて下さいね。
納豆の種類
納豆の種類をどのくらいご存知ですか?
一般的には、丸大豆の大粒や小粒の糸引き納豆を想像される方が多いことでしょう。
納豆は、その粒の大きさだけでなく使用される豆の品種や形状、食事として食べる目的のものもあればお菓子として食べるものまで様々な種類があります。
この記事では、食事として日常的に食べる機会も多く、手に入りやすい糸引き納豆を中心に解説していきます。
納豆がスーパーフードとされる理由
そもそも、なぜ納豆は身体に良いのでしょうか。
実は納豆が健康に良いスーパーフードだとされる理由としては、納豆やその原料となる大豆に含まれる栄養素が深く関係しています。
それぞれの栄養素とその効果について順に見ていきましょう。
①ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼとは、納豆のネバネバとした部分に含まれる酵素の一種で、これは大豆と納豆菌とが合わさることによって生成されるもの。
ナットウキナーゼには、体内の血液が固まることによってできる血栓を溶かしやすくする働きがあるとされています。
ナットウキナーゼによる健康効果
血液中の血栓を溶かしやすくするナットウキナーゼの働きによって血流が改善され、血液をサラサラにしたり、血圧を下げる効果が期待されています。
こうしたことから、高血圧や動脈硬化、心臓病などのいわゆる血管系疾患の予防に役立つ栄養素としても、注目されているのです。
また、血流が改善されることによって代謝が上がり、脂肪の燃焼を助ける働きも。ダイエットに嬉しい効果と言えますね。
ナットウキナーゼ8週間チャレンジの実験
血圧の高い86名の成人を対象に、2,000FU(単位)のナットウキナーゼ含有カプセルを8週間摂取したところ、血圧が下がったという結果が論文で報告されています。
2,000FUのナットウキナーゼは、納豆パックでいうところの1.5〜2パック分に相当しますので、血圧が気になる方は試してみてもよいでしょう。
②γ-ポリグルタミン酸
γ-ポリグルタミン酸とは、納豆のネバネバとした粘着成分に含まれる物質です。
うま味成分とも呼ばれ、アミノ酸の一種であるグルタミン酸を多く含んでいます。
よく「納豆はたくさん混ぜると美味しい」と言われるのも、納得ですね。
γ-ポリグルタミン酸による健康効果
γ-ポリグルタミン酸の健康効果についてはまだ確定的なエビデンスがないのが実情です。
しかし、マウスの実験によってγ-ポリグルタミン酸が善玉菌である乳酸菌量を増やすなど、腸内細菌にとって良い働きをする可能性が示唆されています。
③ビタミンK
ビタミンKは、油脂に溶ける性質を持つビタミンで、体内の血液を凝固させて止血する因子を活発化させる働きがあります。「止血のビタミン」と呼ばれることも。
また、骨にあるタンパク質を活性化する働きもあるとされています。
ビタミンKが多く含まれる食べ物としては海藻やブロッコリー、小松菜などが有名ですが、実は納豆にも非常に多くのビタミンKが含まれているのです。
さらに、大豆などを単体で摂取するよりも発酵が進んだ状態の方がさらにビタミンKが豊富なため、そういった意味でも納豆はビタミンKを摂るのに最適な食べ物と言えるでしょう。
ビタミンKの健康効果
「止血のビタミン」とも呼ばれ、ビタミンKには出血時に血を固まらせて早く傷口を治す効果があります。
また、骨の健康維持にも役立っていることから、骨粗鬆症予防にも関連すると考えられています。
④大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、特に大豆の胚芽の部分に多く含まれる成分です。
女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをすることから、植物性エストロゲンとも呼ばれます。
大豆イソフラボンの健康効果
大豆イソフラボンは、女性ホルモンの働きをサポートし、更年期障害など女性特有の悩みや骨粗鬆症、肌の弾力不足などにも効果的であるとされています。
また、エクオールというエストロゲンに似た物質も腸内細菌から産生されることで、女性の健康と美容に嬉しい働きをしてくれることで知られています。
残念ながらこのエクオールを腸内で作り出すことができる人とできない人がおり、日本人では約2人に1人しか作り出すことができないとされています。
しかしエクオールも、大豆イソフラボンを摂取することで生産されやすくなることが分かっているのです。
こうしたことからも、大豆イソフラボンは女性の健やかさと美しさに大切な成分と言えるでしょう。
⑤ポリアミン
あまり馴染みのない成分かもしれませんが、実はこのポリアミンこそ、菌の専門家が大注目している成分。
ポリアミンはあらゆる生物の細胞内に含まれ、細胞の増殖や成長など、細胞の生命活動に関わっている重要な成長因子です。
ポリアミンの健康効果
ポリアミンは、私たちの細胞が生まれ変わるのに必要不可欠な成分。
細胞の増殖や成長に関わるため、肌や髪、爪などの健やかさや美しさにも影響を与えると考えられています。
新陳代謝を高めたり、老化を予防する効果が期待されていることから、アンチエイジングの鍵として注目を集めているのです。
まだまだある納豆のすごい効果
納豆に含まれる栄養素とその効果についてお伝えしてきましたが、納豆のパワーはこれだけにとどまりません。
納豆がスーパーフードとされるべく、その驚きの効果についてご説明します。
抗菌作用
納豆に含まれるオリゴ糖やγ-ポリグルタミン酸によって、善玉菌である乳酸菌を増やす効果が期待される一方で、悪玉菌を減らす抗菌作用もあることが分かっています。
納豆菌にはジピコリン酸などの抗菌物質が含まれ、ピロリ菌や大腸菌O-157、アトピーとの関連性が指摘されている黄色ブドウ球菌などの悪玉菌が腸内で育つのを抑制してくれる働きがあるとされています。
いい菌を増やして悪い菌は減らす。まさに夢のような効果ですね。
免疫力の向上と抗ガン作用
免疫力を高めるためには、身体の細胞や免疫物質を作るためのタンパク質を摂取することが大切です。
納豆には免疫力を向上する豊富なタンパク質に加えて、病原菌などから身体を守るためのバリア機能を管理するビタミンが豊富に含まれています。
また、大学の研究によって、納豆に含まれる抗菌作用のあるアミノ酸(抗菌ペプチド)に抗ガン作用を確認したという報告があります。
納豆への期待がますます高まりますね。
逆効果?納豆に気をつけたい人も
ここまでは、納豆に含まれる豊富な栄養素とその驚くべき健康パワーについて解説してきました。
健康維持のためにおすすめしたい納豆ですが、残念ながら体質によっては納豆が身体に合わず、かえって体調を崩してしまう人も。
どんな体質が該当するのか、ここからは納豆に気をつけていただきたい人についてご説明します。
過敏性腸症候群の人
過敏性腸症候群(IBS)とは、病院などで検査をしても異常が見つからないにも関わらず、慢性的な下痢や便秘など排便の異常を起こす病気です。
その多くは過度なストレスや緊張から引き起こされると考えられていますが、明確な原因は分かっていません。
納豆に含まれるオリゴ糖は消化されずに生きて大腸まで届くことで善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きをすることで知られていますが、過敏性腸症候群の人にとってはその消化・吸収されにくいオリゴ糖の性質がかえって症状を悪化させてしまうことがあるのです。
このような理由から、過敏性腸症候群の症状がある人は納豆に注意した方がいいと考えられています。
抗凝固薬を使用している人
抗凝固薬とは、血液を固まらせないようにすることで血液をサラサラにする効果がある薬です。
血栓ができたり、血管内で血液が固まることによって起こる脳梗塞などの疾患を予防するために服用されます。
納豆には反対に血液を固まらせる働きがあるビタミンKが含まれているため、抗凝固薬を使用している人は納豆を摂取しないようにするか、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
納豆を選ぶ際のポイント
納豆について詳しくなったところで、実際に納豆を購入する際にどんな点を意識して選ぶと良いか、菌の専門家おすすめのポイントをご紹介します。
ポイント①共培養(自然発酵)の納豆
一般的にスーパーなどでよく目にする納豆の多くは大量生産のため人工発酵の手法が取られ、入っている納豆菌の種類も単菌であることがほとんどです。
これに対して共培養は、2種類かあるいはそれ以上の細胞腫や組織を一緒に培養することを指します。
納豆においては自然発酵の手法が取られ、入っている納豆菌が複数種類に渡るものも。
共培養で2種類以上の菌を発酵させることによって、単菌培養のもの以上に代謝産物が増え、より健康に嬉しい納豆になるのです。
ポイント②ひきわり納豆
ひきわり納豆はよく知られた身近な納豆なので、普段から食べている人もいらっしゃることでしょう。
丸大豆の納豆以上にひきわり納豆をおすすめする理由は、その製造過程にあります。
ひきわり納豆は、発酵させる前の段階で先に大豆を引き割って潰し、それから納豆菌をかけて発酵させます。
これによって豆の表面積が大きくなり、菌のエサが増えることによってより発酵が進みやすくなると考えられています。
ポイント③黒千石納豆(ポリフェノール)
通常の納豆よりもアントシアニンというポリフェノールの一種が多く含まれ、強い抗酸化作用を持つとされています。
目や身体の老化防止に役立つ成分としても知られており、積極的に摂っていきたい栄養素の一つ。
また、黒千石納豆は通常の納豆よりも納豆特有の香りが少なく、豆本来の甘味があって食べやすいため、納豆が苦手な方にもおすすめしたい納豆です。
ポイント④味
以上、納豆を選ぶ際のおすすめポイントについて3つご紹介しました。
もちろん、よく目にする一般的な納豆も身体にいいことには変わりありませんので、ご紹介した内容は菌の専門家のおすすめの一つとして参考になさってみてください。
丸大豆の納豆は好きだけどひきわり納豆は苦手、という人も中にはいらっしゃることでしょう。
そういった場合は、身体にいいからと我慢してひきわり納豆を食べる必要はありません。
ぜひ、自分の好きな味や食感の納豆を見つけて、楽しみながら食べてくださいね。
納豆を日々の食事にプラスして、もっと健やかに
この記事では、納豆がスーパーフードとされる所以となる栄養素に迫りながら、その健康効果について解説しました。
スーパーフードと聞くとハードルの高い食べ物に感じられるものが多いですが、納豆は手に入れやすいとても身近な食べ物。発酵食品のキムチをトッピングするのもおすすめです。
ぜひ、今日から「あと一品」に納豆を加えて、納豆の持つ健康パワーで健やかにお過ごしください。
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【前編】【スーパーフード納豆】菌の専門家が解説!納豆の最強8大効果とは!?
【後編】【納豆効果の秘訣】スーパー成分「ポリアミン」とは?栄養価を意識した納豆の選び方
【参考文献】
・ナットウキナーゼ と血圧
Kim JY, et al. Effects of nattokinaseon blood pressure: a randomized,controlled trial. Hypertens Res.2008 Aug;31(8):1583-8. doi:10.1291/hypres.31.1583.
・マウスの実験 乳酸菌量上がるγ-ポリグルタミン酸
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・γ-ポリグルタミン酸 血糖値上昇を抑える
Araki R, et al. The Possibility ofSuppression of IncreasedPostprandial Blood Glucose Levelsby Gamma-Polyglutamic Acid-RichNatto in the Early Phase afterEating: A Randomized CrossoverPilot Study. Nutrients. 2020 Mar27;12(4):915. doi:10.3390/nu12040915.
・血液サラサラの薬を飲んでいる方は要注意
Sato Y, et al. A Systematic Review of the Acceptable Intake Level of Vitamin K among Warfarin Users. Shokuhin Eiseigaku Zasshi. 2015;56(4):157-65. Japanese. doi: 10.3358/shokueishi.56.157.
・ビタミンK 骨密度の維持
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・大豆イソフラボン エクオール増える
Mayo B, et al. Equol: A BacterialMetabolite from The DaidzeinIsoflavone and Its PresumedBeneficial Health Effects. Nutrients.2019 Sep 16;11(9):2231. doi:10.3390/nu11092231.
・大豆イソフラボン 内臓脂肪
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・大豆イソフラボン 更年期障 高血圧
Chen LR, et al. Utilization ofIsoflavones in Soybeans forWomen with MenopausalSyndrome: An Overview. Int J MolSci. 2021 Mar 22;22(6):3212. doi:10.3390/ijms22063212.
・ポリアミン アンチエイジング
Hirano R, et al. Health-PromotingEffects of Dietary Polyamines. MedSci (Basel). 2021 Feb 5;9(1):8. doi:10.3390/medsci9010008.
・血中コレステロールの制御
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・血管系 高血圧 動脈硬化 心臓病の予防
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・腸内細菌の改善 オリゴ糖
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・抗菌作用 ピロリ菌 大腸菌 黄色ブドウ球菌抗菌
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・免疫力の向上
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・脂肪の減少
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・骨密度の維持
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・過敏性症候群の人は納豆に注意
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・抗凝固薬を飲んでいる人も納豆に注意
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記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
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