掲載日 | 2023.10.06
更新日 | 2023.11.21

ダイエットと腸内細菌編【前編】ダイエットホルモンで腸から痩せ体質になる方法

掲載日 | 2023.10.06
更新日 | 2023.11.21
ダイエットに励むうえで、大切に考えたい腸内細菌

腸内細菌は、私たちの体質をも左右する重要なものです。せっかく運動や食事制限を頑張っていても、からだが痩せ体質になっていなければ、その努力はかなりの遠回りになっているかもしれません。

この記事では、腸から痩せ体質になることで、効率よく健康的にダイエットを成功させる方法と、その鍵となる意外なメカニズムについて詳しく解説していきます。

「脳腸相関」 脳と腸の意外な関係

まずは、腸から痩せ体質になるうえで重要な鍵となる、「脳」と「腸」の繋がりについてご説明します。

脳腸相関とは?

お腹が空くとイライラしてしまったり、緊張や不安などのストレスを感じるとお腹が痛くなってしまうといった経験はありませんか?

これは、空腹や不調といった「腸」の状態が「脳」に影響してイライラや不安感などを与え、逆に緊張やストレスといった「脳」の状態が「腸」に影響して腸内環境の乱れや腹痛などの不調を及ぼすことで起きる現象です。

このように、私たち生物にとって重要な器官である「脳」と「腸」が互いに影響し、連携し合っていることを脳腸相関(腸脳相関)と言います。

脳腸相関ー脳と腸を繋ぐルート | 神経

「脳」と「腸」は、脳腸相関という密接な繋がりを持っていることをお話ししましたが、
この「脳」と「腸」を繋ぐルートのひとつが、神経です。

なかでも迷走神経は脳腸相関のルートとして注目され、この迷走神経が直接的に「脳」と「腸」を繋いでいることを証明する実験が行われました。

ラットによる迷走神経の実験

不安感など精神的ストレスへの緩和効果があるとされている乳酸菌の一種(ラムノサス菌)をラットに摂取させたところ、菌を摂取していないラットに比べてストレス緩和の行動が見られました。

続いて、ラムノサス菌を与えたラットの迷走神経を物理的に切断したところ、菌を摂取させたにもかかわらず、ストレス緩和の効果が得られなかったのです。

この研究から、迷走神経が「脳」と「腸」を直接的に繋いでいる重要なルートであることが証明されました。

脳腸相関ー脳と腸を繋ぐルート | 血液

「脳」と「腸」を繋ぐルートとして、血液も重要な役割を担っています。
緊張やストレスを和らげて睡眠の質を高めることでも知られるGABAや、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンも、実は腸で作られることが分かっています。

そして、それらは血液を通って脳に送り込まれることが研究によって明らかにされました。

GABA(ギャバ)

GABAとは、「Gamma Amino Butyric Acid」の略称です。
アミノ酸の一種で、カカオやトマト、発芽玄米などの食材に含まれています。
GABAは人間の脳や脊椎にも存在し、緊張やストレスを和らげて脳の興奮を抑え、睡眠の質を高めるなどの働きがあるとされています。

近年この効果が注目され、GABAが配合されたお菓子やサプリメントが多く見られるようになりました。

セロトニン

セロトニンは、脳内の神経伝達物質のひとつです。
必須アミノ酸であるトリプトファンから作られ、大脳基底核や視床下部などに存在しています。

セロトニンは、驚きや恐怖など激しい感情やストレスを感じた時に放出される神経伝達物質「ノルアドレナリン」や、喜び・快楽を感じた時に放出される「ドパミン」の情報を抑制することで精神状態を安定させる働きがあることが分かっています。

「しあわせホルモン」とも呼ばれ、幸福感が増して精神が安定することから、食べ過ぎを抑える効果も期待されています。

ダイエットに効果的なホルモン「GLP-1」を腸で作る方法

ここまでは
・脳と腸の関係「脳腸相関」
・ダイエットに効果的なホルモンや神経伝達物質が存在すること
・それらは腸で作られ、神経や血液を通って脳に送られること

についてお話ししました。

ここからは、ダイエットホルモンとして近年話題を集めている「GLP-1」についてお話ししていきます。

ダイエットホルモン「GLP-1」とは?

「GLP-1」は、もともと私たちの体内にあり、小腸から分泌される消化管ホルモンです。
食べた物が小腸に運ばれてきた際に、インスリンを分泌して血糖値を下げる働きがあります。

この血糖値を下げる働きから、「GLP-1」は糖尿病の治療薬(GLP-1受容体作動薬)としても投薬が認可されているホルモンです。

なぜ「GLP-1」がダイエットに効果的なのか

食後の血糖値が急激に上がると、血液中の糖質を処理するため一時的にインスリンが過剰に分泌され、余分な糖が脂肪として蓄積されます

血糖値が急上昇した後、今度は過剰に分泌されたインスリンによって急激に血糖値が下がり、こうした血糖値の急激な変動によって強い空腹感やイライラを感じやすくなることが分かっています。

「GLP-1」は、腸で作られたのち脳に送られ、こうした食後の血糖値上昇を抑えることによって身体に脂肪を溜め込みにくくしたり、空腹感による食べ過ぎを抑えることが期待できます。

ダイエットホルモンを出す方法① | オメガ3脂肪酸

「痩せ体質」を作るホルモンとして期待されている「GLP-1」。
このダイエットホルモンを腸で作るためにおすすめの栄養素と食材をご紹介します。

1つ目は、オメガ3脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸は、脂肪が豊富な魚の油に含まれるDHAやEPA、エゴマやアマニ油など
植物油に含まれるα-リノレン酸などの脂肪酸の総称です。
オメガ3脂肪酸には、血液をサラサラにしたり、中性脂肪を下げる働きがあることが確認されています。

【オメガ3脂肪酸が含まれる食材】

・サバやマグロ、サンマなどの青魚
・えごま油、アマニ油、なたね油
・くるみ、アーモンドなどのナッツ類

ダイエットホルモンを出す方法② | 水溶性食物繊維

2つ目は、水溶性食物繊維です。
善玉菌など、腸内細菌のエサとなる食物繊維には水溶性と不溶性があります。
水溶性食物繊維は水に溶けやすく、ゼリー状になる性質があります。

そのため保水性が高く、特にネバネバとした食材はその粘性によって便を柔らかくしたり、血糖値の上昇を穏やかにする働きがあるとされています。

【水溶性食物繊維が含まれる食材】

・わかめ、昆布、もずくなどの海藻
・全粒粉、大麦、オートミールなどの穀物
・オクラ、モロヘイヤ、里芋などの野菜
・納豆

ダイエットホルモンを出す方法③ | オルニチン

3つ目は、オルニチンです。
オルニチンは、主に肝臓で活躍するアミノ酸です。
肝機能の働きを助けたり、脂肪の燃焼に作用する成長ホルモンの分泌を促進したりする働きがあるとされています。

オルニチンを含む食材ではしじみが有名ですが、しじみ以外にもオルニチンが含まれるものをご紹介していますので、献立の参考にしてみてはいかがでしょうか。

【オルニチンが含まれる食材】

・しじみ
・きのこ(ぶなしめじ、まいたけなど)
・チーズ
・キハダマグロ

腸から痩せ体質になることで内側からのヘルシーを目指して

ダイエットと腸内細菌編【前編】の記事では、脳と腸には密接な繋がりがあること、そして腸内細菌のエサとなる食材を摂ることでダイエットホルモンを作り出し、腸から痩せ体質になる方法について解説しました。

からだの内側からのアプローチで、ポイントを抑えた効率の良いダイエットができるよう、この記事を参考にして食生活を見直してみてくださいね。

ダイエットと腸内細菌編【後編】では、話題の痩せ菌と、スーパーで手軽に買えるダイエットにおすすめのヨーグルトについてご紹介します。

是非そちらもご覧ください。

ダイエットと腸内細菌編【後編】はこちらから

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【前編】痩せるホルモン「GLP-1」を腸で作る方法/「脳腸相関」 脳と腸の意外な関係

【後編】痩せ菌・デブ菌とは?スーパーで買えるダイエットにおすすめのヨーグルトを紹介

【参考文献】
ラムノーサス菌を飲むと不安が下がる / 脳と腸の迷走神経切除の結果 Liu Y, et al. Loss of vagal integritydisrupts immune components ofthe microbiota-gut-brain axis andinhibits the effect of Lactobacillusrhamnosus on behavior and thecorticosterone stress response.Neuropharmacology. 2021 Sep1;195:108682. doi:10.1016/j.neuropharm.2021.108682.

オメガ3脂肪酸や水溶性食物繊維、L-オルニチンによるインクレチン(GLP-1)の分泌 Takahashi M, Tahara Y. Timing of Food/Nutrient Intake and Its Health Benefits. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2022;68(Supplement):S2-S4. doi: 10.3177/jnsv.68.S2.

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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