妊活中に食べたほうが良いもの!食べ物選びでプレコンセプションケア
病院に行く前に自分でできることってないかな?など、妊活を意識し始めたときに、まず見直したいのが毎日の食事です。
私たちの身体は毎日の食事でできています。食べ物が変わると、身体が変わります。
今日は、妊活のために食べたほうがいいものや、妊活と食事との関係について、現役助産師ライター増田がご紹介します。
妊活に良い食べ物は?見直したい食習慣の大切さ
「身体づくり」や「健康」と聞いて、何を一番にイメージしますか?
健康な身体づくりといえば、食事・睡眠・運動などの生活習慣を整えること。中でも『食事』は私達の身体のエネルギー源になったり成長発達に欠かせないものです。
もちろん、妊活という点でも妊娠前からの身体づくりが大切だとされています。厚生労働省でも「プレコンセプションケア」の一環として、妊娠前からの食生活について指針があったりします。(※1)
しかし、実際に妊活中に一体何をどうやって食べるといいのか、反対に何をどうやって食べると良くないのか分かりませんよね。実は、自分の中で「当たり前」になっている食習慣が、妊活に影響しているかもしれません。
妊活がうまくいかない…?普段の食べ物をチェック
妊活目的でクリニックに受診されると、まずはBMIや、食生活や嗜好品の有無、女性の場合は月経に関する情報も伺います。女性の月経周期や男性の精液所見は、ストレスや生活習慣に大きく影響を受けます。
受診されてすぐに治療を開始する場合もありますが、まずは食事を見直したり、適正体重を目指しましょうということも。つまり、妊活と普段の生活は密接に関係しているのです。
妊活中の食べ物選びのコツ「まごわやさしい」とは?
妊活のためには、妊娠前からの身体作りがとても大切。日本では、依然として若い世代の「やせ」が多いことなどの課題を受け、厚生労働省では指針が示されています。
大切なのは、妊娠前から『バランスの良い食事』をとること。
分かりやすい語呂合わせに【ま・ご・わ・や・さ・し・い】というものがあります。
ま・・・豆類やお豆腐や味噌など
ご・・・ゴマなどの種実類
わ・・・わかめなどの海藻類
や・・・野菜全般
さ・・・魚介類
し・・・椎茸などのキノコ類
い・・・いも類
これらの食材を毎日の食事に取り入れましょう。その中でも特に意識したいポイントも紹介していきます。
【妊活中に良い食べ物】積極的に摂りたいもの7つ
具体的に妊活の観点では、どんな食べ物を摂ればいいのか。まずは抑えておきたいポイント7つがこちらです。
1.鉄分豊富な赤身肉や魚【血液を作り酸素を運ぶ】
女性の身体には月経があるため、元々男性に比べて鉄分が不足しやすい傾向があります。
鉄分は、身体に酸素を運ぶ働きや、子宮内の粘膜を作るという働きを担っています。妊活のためには、血液の循環が良いことや、受精卵が着床しやすい厚みのある子宮内膜が必要です。
吸収の良い鉄分は赤身の肉・魚に多く含まれています。しかし、赤身肉は摂りすぎると腸内の悪玉菌を増やしてしまう一面も。肉と魚のバランスを考えながら摂るようにしましょう。
鉄分はビタミンが含まれる野菜と一緒にとることで吸収アップ。反対にコーヒー、緑茶、紅茶に含まれるタンニンと一緒にとることで吸収率がダウンしてしまうので、摂り方には少し注意が必要です。
2.タンパク質豊富な肉・魚・卵、大豆製品【身体を作る材料】
人の身体の中で水の次に多い成分はタンパク質です。つまり、それくらい私達の身体のいたるところはタンパク質でできています。
そして、身体の色々な機能の調整をしているホルモンの中にはタンパク質を必要とするものも多くあります。しかし、私たち日本人は昔に比べ、タンパク質摂取量が減少傾向にあるというデータも。(※2)
タンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品などに多く含まれています。妊活中の方は、毎食納豆やお豆腐などの小鉢を一品添えるのがおすすめです。(※3)
3.亜鉛を含む牡蠣【免疫と生殖力アップ】
亜鉛と聞くと、男性の妊活に有効というイメージがあるかも知れません。しかし実は男女共に必要な栄養素です。
女性では、妊娠に関係する性ホルモンの働きを高めてくれ、卵子の老化予防も期待できると言われています。男性でも同様に、性ホルモンの増加や精液所見の向上が期待でき、前立腺の機能の増進にも一役買ってくれます。
亜鉛が豊富に含まれる食材の代表は牡蠣。その他、豚レバー、たたみいわし、松の実やゴマなどにも含まれています。
亜鉛はビタミンC、動物性タンパク質と一緒にとると吸収率がアップ。フィチン酸やタンニンととると吸収率がダウンしてしまう傾向があります。(※4)フィチン酸は米ぬかや玄米に多く含まれています。
4.ビタミンB群豊富な赤身魚、鶏肉、穀物【エネルギー代謝のサポーター】
ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンのこと。ビタミンB群の働きは、エネルギー代謝を円滑にすることです。
身体に気を遣った食材をたくさん摂っても、ビタミンB群が不足していると栄養素達のパフォーマンスが落ちてしまいます。ビタミンB群は赤身の魚、鶏肉、穀物などに含まれています。
6.葉酸の摂れるキノコ類【胎児発育に必要不可欠!】
ビタミンB群のうちのひとつである葉酸は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の予防にも繫がるとされています。妊娠を知るのは神経管ができる時期よりも遅いので、妊活中からの摂取がおすすめ。
葉酸は枝豆、ブロッコリー、ほうれん草などの葉物野菜やキノコ類に多く含まれています。キノコは善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維も摂れる食品で、腸活的にもおすすめ。
食事で足りない場合はサプリメントなどで補っても良いでしょう。
7.発酵食品・ラクトフェリン【身体の中の善玉菌を増やす】
健康な身体のためには、栄養素を代謝して吸収し、不要になったものを排泄する力も大切です。その上で切っても切り離せないのが腸内環境。これは腸内細菌のバランスを指します。
また、妊活という視点では腸内だけでなく、子宮内環境を整えることも大切です。実は子宮内にも色々な「常在菌」が棲んでおり、そのバランスは人によって違います。
子宮内検査の専門家へインタビューをしたところ、子宮内フローラ(菌叢)が妊娠に影響している、といった可能性についても伺えました。
子宮内フローラ検査に関するインタビュー記事はこちら▼
インタビューの中では、発酵食品やラクトフェリンを摂ることも子宮内フローラバランスに良いのでは、とされています。
発酵食品は、善玉菌を直接取り入れるのに役立ち、消化されやすい性質があります。手軽に摂れる発酵食品は、発酵調味料(味噌、醤油、お酢、みりんなど)や、納豆、キムチなどがあります。
また、「ラクトフェリン」という成分も善玉菌を増やす手助けをしてくれます。ラクトフェリンは加熱処理されていない乳製品に多く含まれています。
菌のバランスが鍵・摂った栄養が効果的に働く身体づくり
妊活中に意識したいたくさんの栄養素。
結局のところ、「色々なものをバランス良く」というのが基本です。そして、栄養素を代謝・吸収・排泄できる身体であることが大切です。
せっかく妊活に向けて栄養素を意識した食事をしても、例えば便通が悪い状態では、代謝・吸収・排泄がうまくいっているとは言えません。(※5)
また、子宮内の常在菌のバランスも、妊娠と関連があるということがわかってきているようです。
子宮内の菌バランスはまだ未解明な部分も多いものの、腸内と同様に食事や生活習慣の影響を受けると考えられ始めています。まずは「腸内環境・子宮内環境を整える」というところにフォーカスした取り組みから始めてみてもいいと思います。
▼子宮内フローラ検査の専門家によるインタビューはこちら
妊活中これは注意!妊活中に控えたい食べ物と食習慣
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白い誘惑… 白砂糖などの高GI食品
「GI(グリセミック・インデックス)」は、食後の血糖値の上昇を示す指数のこと。高GI食品とは食べた後に急激に血糖値が上昇する食品のことで、低GI食品とはその逆の食品のことです。
糖質が多く、食物繊維の少ない食品はGIが高い傾向があります。つまり、精製された炭水化物はGIが高いものが多いのです。高GI食品は身体の糖化を促進し、これは卵巣機能にも影響します。普段から高GI食品より低GI食品を選択するようにしたいですね。
代表的なものとしては、いわゆる白砂糖(精製糖)や、白米、パスタやラーメンなどの主食も当てはまるものが多いです。摂り過ぎには注意しましょう。
手軽の裏には罠がある トランス脂肪酸
トランス脂肪酸とは、油脂の加工・精製でできるもので、マーガリンやショートニングなどに多く含まれています。生活習慣病を防ぐためにも、多く摂らないことが望ましいとされている成分のひとつ。
妊活という視点でも過剰摂取は排卵障害が起こりやすくなると考えられています。比較的安価で手軽にとることができるファストフードや菓子パン、スナックに含まれていることが多い成分です。
手軽で時には頼りたい食品ですが、摂り過ぎないに越したことはなさそうです。
健康的なベジタリアン、ヴィーガンのためには豊富な知識が必要
健康の目的だけでなく、宗教や思想などの理由で菜食を選択されている方もいらっしゃると思います。動物性のものを口にしない選択をする場合、豊富な知識や正しい方法を知っておくことが必要です。
植物性の栄養成分は動物性のものに比べて、吸収されにくい性質があります。実際に、妊娠中どうしても貧血傾向になる妊婦さんが多い中、菜食主義の方が貧血を改善するためにはサプリメントや薬剤に頼らざるをえないことも多々。
また、産後の傷の治癒が悪かったり、傷の離開を繰り返す方は、食事からのたんぱく質が少なかったというケースもあります。
もちろん様々な理由があってのことなので、菜食自体は否定できるものではありません。動物性のものを口にしないという選択をする際には、自分の身体の声を聴きながら正しい知識と方法を持って実践するようにしたいですね。
嗜好品はほどほどに カフェイン
カフェインに関しては諸説ありますが、濃いエスプレッソを1日に何杯も飲むようなことがなければ、気にしすぎなくていいでしょう。
しかし、カフェインのとりすぎは身体を冷やしてしまうこともあります。冷えは妊活中の方に限らず、大敵。また、カフェインと聞くと、コーヒーのイメージが強いと思いますが、コーヒー以外にもエナジードリンクや炭酸飲料にも含まれていることがあります。過剰にならないよう、知識として知っておきましょう。
〝適度な〟酒は百薬の長?飲み過ぎはNGのアルコール
アルコールに関しても、諸説ありますが飲み過ぎなければ問題ありません。しかし、アルコールを摂取するとアルコールを分解して代謝するエネルギーが必要になるため、身体に負担がかかります。
健康面を考えると飲酒は適度にしましょう。また、休肝日を持つことや、アルコールの分解に必要とされる水やビタミンが含まれるものをとることも大切です。もちろん、妊娠したら胎児への影響を考え『禁酒』一択です。
妊活は毎日の食べ物から。あなたに合った『プレコンセプションケア』を!
プレコンセプションケアとは、「女性やカップルを対象として、将来の妊娠や出産のための健康を促す取り組み」のこと。その1つとして食事を見直してみるのもいいかもしれません。
毎日の食事が変化すると身体が変わります。そして、体内環境が変わると腸内・子宮内の環境にもつながっていくと考えられます。
自身の食習慣を見直して、まずは取り入れられそうなことから少しずつ積み重ねていきましょう。
参考文献:
(※1)プレコンセプションケア – 健やか親子21-妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト-,
(※3)妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針|国立健康・栄養研究所
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
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