そんな時は、化粧品の選び方やお手入れ方法で知らず知らずのうちに「美肌菌」を減らしてしまっているからかもしれません。
この記事では、「美肌菌」の働きや守り方、守るためのスキンケアや化粧品選びのコツなどについて解説していきます。
美肌菌は乾燥や肌荒れからお肌を守っている
美容賢者のSNSなどでもよく目にする「美肌菌」。私たちの肌表面に数多く存在する皮膚常在菌のうち、肌に良い働きをする善玉菌が「美肌菌」と呼ばれています。
その中でも知っておきたい3つの皮膚常在菌について見ていきましょう。
表皮ブドウ球菌(美肌菌)
一般的に「美肌菌」と呼ばれている表皮ブドウ球菌は、肌の潤いとバリア機能を保つ働きをしています。
私たちの肌表面に汗や皮脂が分泌されると、表皮ブドウ球菌はそれらをエサにして保湿成分である「グリセリン」と抗菌成分である「脂肪酸」を作り出します。
肌のバリア機能が高まることにより、肌が弱酸性に保たれて肌荒れの原因となる悪玉菌の増殖も抑えられるなど、美肌作りを助けてくれると考えられています。
アクネ菌(日和見菌)
日和見菌とは、肌フローラの中で善玉菌が優位な環境下では善玉菌と似た働きをし、肌フローラのバランスが崩れて悪玉菌優位になると悪玉菌と同様に肌トラブルの原因となる働きをする菌のことを指します。
アクネ菌もその一つです。 善玉菌が優位な時は肌の潤いやバリア機能を保持する善玉菌的な存在ですが、皮脂汚れなどで毛穴が詰まって悪玉菌の優位な肌環境になると、悪玉菌的な働きをしてニキビを引き起こす性質があると言われています。
アクネ菌そのものが「悪」というわけではなく、アクネ菌を悪玉菌的に働かせない環境づくりが大切ですね。
黄色ブドウ球菌(悪玉菌)
悪玉菌は数が少ないうちはさほど悪影響を及ぼすことはないと言われていますが、間違ったスキンケアや化粧品選びなどで常在菌バランスが崩れると異常増殖を起こすことがあります。
黄色ブドウ球菌も悪玉菌とされる菌のひとつです。 こうして増殖した黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎の発症や悪化などの肌トラブルを起こす原因になり得るとされています。(※1)
つまり、普段から悪玉菌を増やさないためのケアが重要と言えるでしょう。
美肌菌を守るスキンケアのコツや化粧品選び
表皮ブドウ球菌などの善玉菌を守り、逆に悪玉菌を増やさないようにすることが美肌の近道になることが分かりました。
美肌菌を守るためのスキンケアや化粧品選びのコツについて解説していきます。
洗いすぎない・優しい洗顔
美肌菌は、肌表面にある厚さわずか0.02mmの角層に棲んでいると言われています。
そのため、ゴシゴシ擦って洗顔をしたり、シャワーを直接顔に当てて洗い流したりしてしまうと、せっかくの美肌菌まで洗い落とされてしまうことになりかねません。
濯ぐ際は、ぬるま湯を当てるようにして優しく濯ぎましょう。
また、洗いすぎも美肌菌のエサとなる皮脂を必要以上に奪う可能性が。W洗顔を控えて洗顔の回数を最低限にとどめることも大切です。
34°くらいのぬるま湯洗顔
美肌菌を減らさないため、洗顔時に摩擦と同じくらい気をつけたいのが、お湯の温度です。
冷たい水では皮脂汚れやメイクの油分が落ちにくく、また毛穴が閉じてしまって毛穴奥の汚れも落とすことが難しくなります。
逆に体温を超えるような熱いお湯では皮脂を奪いすぎることも考えられるので、34°くらいのぬるま湯で洗うことを心がけましょう。
体温よりも少し低めの温度なので、触れた時に少しぬるいと感じるくらいを目安にしてみてくださいね。
シンプルなスキンケアと化粧品選びを
保湿をしようと、いくつもの化粧品をあれもこれも顔に塗っていませんか?
スキンケアのステップが増えれば増えるほど、界面活性剤や防腐剤などを取り込むリスクが増えがちに。
それら自体が害というわけではないですが、使いすぎは常在菌バランスを崩す原因にもなりかねません。
自分にあったシンプルなスキンケア化粧品を選ぶことが大切です。
美肌菌の増やし方とは?生活習慣でできること
普段の生活の中でも、美肌菌を増やし育てるための意識を持つことは大切です。美肌菌観点で意識したい生活習慣をご紹介します。
汗をかく習慣
美肌菌は、皮膚表面の汗や皮脂をエサにして保湿成分を作り出す性質があるとされています。
また、汗に含まれる抗菌ペプチドという成分は悪玉菌の増殖を抑える働きも。 そのため、適度な運動で汗をかくことは美肌菌を増やし、育てるために有効と言えるでしょう。
ただ、普段から汗をかいていないと不純物の多いベタついた汗が出ることがあり、逆に悪玉菌を増やしかねないので注意が必要です。単に汗をかけばいいということではなく、普段からストレッチやウォーキングなどで汗をかく習慣を持ち、さらさらとした質の良い汗をかけるようにしておくことが大切です。
長風呂に注意
汗をかきたいからと熱いお風呂に長時間浸かっているのも、美肌菌観点では少し懸念があります。
長風呂をしていて手や足の皮膚がふやけてブヨブヨになった経験はありませんか?
皮膚がふやけた状態で摩擦が加わると、肌のバリア機能が失われる原因になりかねません。皮脂が失われて美肌菌にとって棲みにくい環境となってしまうと考えられています。(※2)
美肌菌の観点で考えるなら、お風呂に浸かるのは長くても10〜15分にとどめ、ぬるめの温度で入浴すると良いでしょう。
美肌菌を守り、健やかな肌へ
美肌菌を守るためのスキンケアや化粧品選び、生活習慣についてお伝えしました。
美肌菌のためには高価な化粧品をいくつも使えばよいということではなく、菌をはぐくむことを意識したシンプルケアを継続することが大切です。
また、運動や食事など、トータルでのインナーケアも意識してアプローチすることが美肌菌にやさしいライフスタイルと言えるでしょう。美肌菌を味方につけて、健やかで美しい肌を手にいれましょう。
(※1)鈴木修一ほか. 乳児期の黄色ブドウ球菌の皮膚定着とアトピー性皮膚炎の発症. 日本アレルギー学会誌. 2009. 23巻 1号 p56-61
(※2)書籍「化粧品やめたら美肌菌がふえた!」著・出来尾格