掲載日 | 2023.08.24
更新日 | 2023.08.24

美肌菌とは?美肌菌が肌に与える影響と守る方法

掲載日 | 2023.08.24
更新日 | 2023.08.24

近頃よく耳にする「美肌菌」。その名の通り美肌の秘訣となる菌ですが、実際どのような効果があるのでしょうか。

本当に美肌に効果があるの?
あるとしても、美肌菌をどうケアすればいいの?

などまだまだ疑問も多い美肌菌のこと。

美肌菌の本当の働き、そして「美肌菌」を守りながら健やかで美しい肌をキープするためにはどのような方法があるのかを、菌の専門家KINSが解説していきます。

美肌菌とは肌トラブルや乾燥からお肌を守る救世主

「美肌菌」とは、美肌をサポートしてくれる皮膚常在菌の一種を指す言葉です。顔の皮膚表面には約20種類の皮膚常在菌が住んでいると考えられており、肌にとって良い働きをする「善玉菌」もあれば、アトピー性皮膚炎やニキビなど肌トラブルの原因を引き起こす「悪玉菌」も存在します。

なかでも「美肌菌」として代表的な表皮ブドウ球菌をはじめとする、3つの皮膚常在菌について見ていきましょう。

表皮ブドウ球菌(善玉菌、いわゆる美肌菌)とは

世間で美肌菌と呼ばれているものが、この「表皮ブドウ球菌」です。

この美肌菌は顔の皮脂や汗を分解して「グリセリン」や「脂肪酸」という物質を生成します。
保湿成分である「グリセリン」は、肌の潤いを保つ働きがあるとされています。

肌の保湿がされているとツヤが出るだけでなく、キメが整って毛穴が目立ちにくくなるメリットも。 そして抗菌成分である脂肪酸は肌を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える働きがあるとされています。
つまり表皮ブドウ球菌は、肌のバリア機能を保つ美肌菌の代表格とも言える「善玉菌」なのです。

アクネ菌(日和見菌)とは

「日和見菌(ひよりみきん)」とは、基本的には害がないが、バランスが崩れると悪玉菌と同様の働きをする菌を言います。

日和見菌であるアクネ菌は「ニキビの原因」といったイメージを持たれがちですが、基本的には肌の保湿機能を高めて弱酸性に保つといった善玉菌的な面も持っています。

しかし、皮脂や汚れで毛穴が詰まって中にあった酸素が失われると、アクネ菌が炎症を引き起こすタンパク物質である「CAMP因子」を作り出すことでニキビの発症に繋がるとされています。
ニキビを作らないためにも、アクネ菌そのものというよりはまず過剰な皮脂や毛穴の詰まりに注意したいですね。

黄色ブドウ球菌(悪玉菌)とは

美肌菌ではありませんが、知っておきたい黄色ブドウ球菌。これは、増え過ぎることによって肌トラブルを引き起こすとされる「悪玉菌」のひとつです。

皮膚を乾燥させて痒みや炎症、化膿などを引き起こす可能性が高いため「悪玉菌」とされています。
また、アトピー性皮膚炎の発症・重症化との関連性を示唆した研究報告もあります。(※1)

「悪玉菌」とはいえ誰にでも存在している皮膚常在菌の一つなので、トラブルがないうちはさほど心配し過ぎる必要はありませんが、増やさないためのケアは心がけたいですね。

美肌菌の効果とは?美肌菌発想でケアするメリット

「美肌菌」と名前がついているくらいですから、その通り肌に良い働きが期待できるとされる美肌菌。
ここでは美肌菌が肌にどういいのか、効果やはたらきについて解説していきます。

また、美肌菌が適度なバランスに保たれることによるメリットについても見ていきましょう。

1.肌のバリア機能を助ける

健やかな肌は、肌表面にある角層のバリア機能がしっかり整っています。これは美肌菌のはたらきとも無縁ではありません。

表皮ブドウ球菌、いわゆる美肌菌は、潤い成分である「グリセリン」を出して肌を保湿し、乾燥や外的刺激から肌を守ってくれる働きがあります。

また、美肌菌は抗菌作用をもつ「抗菌ペプチド」というタンパク質を作り出す働きも。
「抗菌ペプチド」は肌荒れやアトピー性皮膚炎を引き起こすとされる、黄色ブドウ球菌などの悪玉菌の増殖を抑えてくれます。

2.肌の潤いを保つ

肌の水分量やバリア機能を保ち、肌トラブルを防いでくれる救世主とも言える美肌菌。
保湿がされていると肌のキメが整って透明感が上がって見えるなど見た目のメリットはもちろん、乾燥トラブルのない健やかで揺らぎにくい肌に繋がります。
美肌菌は、まさに美容エッセンスのような心強い存在と言えるでしょう。

美肌菌を守る方法はスキンケアにあり

美肌菌が健康的で美しい肌の秘訣となることが分かりました。では、美肌菌を増やすための方法やコツはどういったものがあるのでしょうか。

実はそのポイントは普段のスキンケア習慣にもあるのです。

美肌菌を守るためのスキンケア習慣

美肌菌を守るためにまず意識したい、特に重要なスキンケアのポイントを解説します。

1.皮脂を奪いすぎない

美肌菌にとって皮脂や汗はエサとなるものなので、日々のスキンケアで奪いすぎないよう心がけることが大切です。
洗いすぎや落としすぎを控え、美肌菌にとって棲みやすい環境を保ちましょう。

ニキビが心配だから何度も重ねて洗顔を…、オイリーにならないようとにかく脱脂力の強い洗顔料で洗う…、など良かれと思っていることが、必要な皮脂を奪いすぎている可能性も。
適度な皮脂は美肌菌の棲み処として必要なものなのです。

もちろん汚れを落とすのは大事ですが、なるべくダブル洗顔は控える、肌を乾燥させない程度のマイルドな洗顔料を選ぶなど、日頃から意識してみましょう。

2.ぬるま湯で摩擦レス洗顔を

熱いお湯での洗顔やゴシゴシ擦るような摩擦を伴う濯ぎは、肌の汚れだけでなく美肌菌までも洗い流してしまっているかもしれません。
美肌菌は皮膚表面のわずか0.02mmの厚さしかない角層に存在しているからです。

濯ぐ場合は擦るのではなく、少しぬるいと感じるくらいのぬるま湯を当てるように優しく濯ぐのがおすすめです。
洗顔後はタオルでゴシゴシ拭くのではなく、そっとタオルやクロスを顔に当てて水気だけを吸い取るようにすると、刺激を抑えることができますよ。

美肌菌を減らしかねない?NGスキンケアとは

美肌菌を守るために、良くないスキンケア習慣はあるのでしょうか?知らず知らずのうちにやってしまいがちな、NGスキンケアについても考えてみましょう。

1.紫外線対策をしない

紫外線によるダメージを受けた肌は水分や皮脂を失って乾燥し、適度な皮脂がない肌では美肌菌の生息が難しい肌環境となってしまいます。
また、まだ明らかにはなっていないものの紫外線は殺菌効果があることから、皮膚常在菌にもダメージを与える可能性も考えられるのです。

日焼け止めや帽子、日傘を活用して紫外線対策を心がけると良いでしょう。おしゃれなUVカットウェアを楽しむのもいいですね。

冬であっても晴れの日の紫外線量は夏のピーク時の4割程度と言われているので、冬でも紫外線対策をおすすめします。

美肌菌と紫外線の関係や日焼け止めについてはこちら▼

2.洗浄力の高い界面活性剤の使いすぎやダブル洗顔

洗浄力の高い洗顔料などを使って洗いすぎることで、角質の中にいる美肌菌まで洗い流してしまう可能性があります。(※2)
また、洗い落とされた美肌菌は回復するものの、一度洗い落とされてしまった菌が元の数に戻るのには半日程度かかると考えられています。

ダブル洗顔など、洗顔の回数が多いとその分美肌菌の回復に時間がかかり、その働きで得られる恩恵が減りかねません。
美肌菌の効果を最大限に活かすためにも、洗顔の回数は最小限に止めることをおすすめします。

美肌菌を意識した生活習慣とは

美肌菌を意識して健やかな肌を保つためには、スキンケアだけでなくライフスタイルも関係してきます。日常で特に大切で、取り入れやすい習慣をご紹介します。

1.適度な運動で汗をかく

汗と皮脂は美肌菌にとってのエサとなるため、運動などで適度な汗をかくことも美肌菌を増やすために重要と言えるでしょう。
頻繁に良い汗をかいているスポーツ選手の肌を見て綺麗だと思った経験はありませんか?美肌菌にとっての栄養源が豊富なことも、関係しているのかもしれませんね。

汗をかくほどの運動が難しい場合でも、寝る前に軽くストレッチや筋トレなどをして肌表面にうっすら汗をかいた状態で寝ると、美肌菌の働きを促すことに繋がると考えられています。(※3)
ストレス解消や血行促進の意味でも、運動は美肌や健康のために欠かせない習慣ではないでしょうか。

2.バランスのとれた食事

偏った食生活を送ったりサプリメントだけに頼るのではなく、バランスの取れた食事を心がけましょう。
甘いものや油っこい食べ物の食べ過ぎは余分な皮脂の分泌を促し、その結果アクネ菌の増殖によるニキビや肌荒れを引き起こす原因にも。

食事バランスを良好に整えていくことは、結果的に美肌菌にとっての棲みやすい環境づくりに繋がると言えます。
もちろん美肌菌の観点からだけでなく、ビタミンやミネラル、タンパク質など必要な栄養素をしっかり摂れていることは健康な肌づくりの基本です。

血糖値が急上昇しやすい高GI食品をなるべく控え、水溶性食物繊維の豊富な食材(野菜・果物・海藻・きのこ)や発酵食品、良質なお魚/お肉などバランス良く摂るのがおすすめです。

美肌菌を育てるために避けたい生活習慣とは

美肌菌を育てるために、注意したほうが良い生活習慣もあります。

1.過剰な洗顔など菌を減らす行為

ニキビなどの肌荒れのもとは、雑菌が増えることのはず…。だから美肌のためにはとにかく殺菌作用のあるものを使ったり、1日に何度も洗顔しておくのがよい、と思っている方もいるかもしれません。

ただ一般的にニキビの原因菌として知られるアクネ菌も、基本的には肌に潤いをあたえる働きをもっていて悪い菌とは言い切れません。
過剰な皮脂など環境によって増殖しトラブルにつながることがありますが、必ずしも100%殺菌するべきというわけではないのです。

過剰な洗顔などで悪玉菌を減らそうとする行為は、同時に美肌菌にも影響を与えてしまうおそれがあります。
個人差はありますが美肌菌を守ることを意識するほうが、結果的に美肌菌が悪玉菌をおさえてくれ、良いバランスになっていくと考えられます。

2.長時間のメイクや落ちにくいメイク

メイクに含まれる油分は、長時間肌の上で酸素に触れていると酸化します。
酸化して肌の上で不要な皮脂となった油分は、毛穴を詰まらせることに。
アクネ菌の増殖によるニキビなどの肌トラブルに繋がってしまうので、夜メイクをしたまま眠ってしまう…なんてことはないようにご注意を。

また、落ちにくいメイクはそのぶん強いクレンジング剤が必要になったり、ゴシゴシ擦ってしまったりと肌に刺激を与えてしまいがちです。
肌にダメージを与えたり美肌菌に必要な皮脂まで減らしてしまわないよう、ほどほどに。たまにはメイクをしない日を作るのもおすすめです。

美肌菌を守ってトラブル知らずの肌へ

美肌菌は誰の肌にも存在し、美しい肌を作る上でとても重要な菌であることが分かりました。
また、バランスの良い生活習慣やスキンケアでの意識によって守っていくことが可能な性質を持っています。

この性質を利用できれば、ツヤのある潤い肌をキープし厄介な肌トラブルを防ぐことも期待できると言えるでしょう。
健康的な生活習慣で、美肌菌を守って健やかな美肌を目指しましょう。

参考文献:
(※1)鈴木修一ほか. 乳児期の黄色ブドウ球菌の皮膚定着とアトピー性皮膚炎の発症. 日本アレルギー学会誌. 2009. 23巻 1号 p56-61
(※2)宮野直子. 界面活性剤の皮膚常在菌への影響. 大阪府立公衆衛生研究所報. 2009. 研究報告第47号
(※3)書籍「化粧品やめたら美肌菌がふえた!」著・出来尾格

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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