肌の潤いやバリア機能に関係していることで、近年注目されている「美肌菌(表皮ブドウ球菌)」。
実はその美肌菌はデリケートで、紫外線によっても影響を受けるのでは?と考えられています。
この記事では、紫外線が美肌菌に与える影響、そして美肌菌を守るための日焼け止めの正しい知識や、選び方を一緒に学習していきましょう。
紫外線は美肌菌の大敵?
私たちのお肌には、お肌を美しく保ってくれる美肌菌が存在しています。
菌と聞くと悪いイメージを持ってしまう方もいるかもしれませんが、美肌菌はお肌にとって必要不可欠な存在なのです。
私たちの皮膚には無数の菌が常在していますが、その菌たちは大きく分類すると善玉菌と悪玉菌に分類されます。そして、表皮ブドウ球菌、通称「美肌菌」は善玉菌として私たちの肌に良い影響を与えてくれるのです。
美肌菌は、短鎖脂肪酸を産生し肌を弱酸性に導き、同時に抗菌ペプチドを産生し、悪玉菌の増殖を抑えます。(※1)
またグリセリンを始めとした保湿性を作り出すことも知られており、悪玉菌を抑制しながら皮膚バリア機能を高めることによって、肌トラブルの予防と美肌を保つ役割を担っています。(※2)
まさに美肌を守って、育む菌と言えますね。
紫外線の”殺菌作用”が美肌菌に影響する可能性
なぜ紫外線が美肌菌に影響を与えそうかというと、紫外線には殺菌作用があることが関係しています。
医療の現場でも紫外線殺菌装置など、紫外線の殺菌作用を利用した技術が使用されているように、紫外線には様々な菌の細胞にダメージを与え、殺菌する効果を持っています。
肌へ紫外線があたった時の表皮ブドウ球菌への直接的な影響は、まだ明確なデータが発表されているわけではありません。
ただ、太陽光を当てて表皮ブドウ球菌が減った研究報告があったり(※3)、紫外線を浴びて乳酸菌が減ったというデータは見られています。(※4)
このことから、紫外線には皮膚常在菌に何らかの影響を及ぼすことが予想でき、美肌菌への影響も無視できないと考えられるのです。
紫外線が美肌菌へ与える影響については、今後研究が進むにつれさらに明らかになってくるかもしれません。
さらに一般的にも知られている紫外線ダメージとして、乾燥を招きお肌の弾力やハリを失わせてしまったりという悪影響も心配ですね。
美肌を紫外線から守るための日焼け止め選び
紫外線による肌ダメージを防ぎ、健やかな肌を守るために必要なのが日焼け止めです。
日焼け止めには、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤といった添加物が含まれていますが、それぞれにどういったものなのでしょうか。
紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、化学的な仕組みで紫外線エネルギーを吸収し、熱などの他のエネルギーに変換することで、紫外線がお肌に影響を与えるのを防ぐことができます。
一般的にケミカルタイプと呼ばれる日焼け止めが、この紫外線吸収剤を使用しているものです。
無色透明でジェルタイプもあったり、塗り心地がサラッと軽く、白浮きしにくいものが多い傾向があります。
ただし紫外線吸収剤は時間が立つと構造が壊れて時間とともに効果が落ちるものがあるため、SPF50であっても2時間後にはSPF40~30程度になっていることもあり得ます。
また汗や水で流れる可能性もあり、そういった意味でも塗り直しが必須です。
効果が落ちるのを防ぐため複数種の紫外線吸収剤を配合することが多くありますが、紫外線吸収剤の一部には発がん性を指摘されるような原料もあり、数を多く使うことで肌に負担を掛ける可能性のある成分が増えるとも取れます。
(ただし紫外線を浴びたダメージより、紫外線吸収剤を塗った時に受ける刺激の方が少ないとも考えられるため、一概に塗るべきでないという事ではありません。)
紫外線散乱剤
紫外線散乱剤は物理的な仕組みでお肌を均一にバリアすることで紫外線が肌表面で反射し、散乱させることができます。
お肌が紫外線を浴びないようにバリアをしてくれるので、紫外線による影響を防ぐことが可能です。
一般的にノンケミカルタイプと呼ばれることが多く、細かな粘土質のような素材で作られます。
紫外線反射剤の場合、汗や水で流れない限りは効果が落ちることはありません。
その代わり白くなりやすく、テクスチャーが重くなりがちではあります。
日焼け止めの成分について、さらに詳しくはこちらの記事でご紹介しています
紫外線の種類について
紫外線には、UV-AとUV-Bがあるのを知っていましたか?
正しい日焼け止めの選び方を理解するために、UV-A、UV-Bについて知っておく必要があります。
それぞれについて簡単に説明していきましょう。
UV-A
UV-Aとは、主にシミの元を作る原因になります。
生活紫外線とも呼ばれており、私たちの身体に届く紫外線の約9割が、このUV-Aだと言われています。
波長が長いことから雲やガラスをすり抜けてしまうため、曇りの日でも家の中でも紫外線による影響が及んでしまうことも…!
家の中や夏以外でも日焼け止めが必要だと言われているのは、このUV-Aの性質からなのです。
UV-B
UV-Bとは、主に肌を赤くさせる影響があります。
レジャー紫外線と言われることもあり、肌に直接浴びることで炎症を起こし赤みとして現れるものです。
私たちに届く紫外線の1割程度であるUV-Bですが、その力はとても強くお肌の赤みや色素沈着、シミやそばかすなどの原因になることも。
SPF、PAとは
日焼け止めに記載されている、SPFやPAという文字。
これらの意味をご存知ですか?
実は日焼け止めを選択するために、分かっておきたい大切なポイントです。
それぞれの意味を確認していきましょう。
SPF
Sun Protection Factorの略で、UVB(シミ・そばかすの原因となる紫外線B波)をカットする効果が続く時間を表したものです。
一般的に「何もつけずにUVBを浴びて日焼けするまでの時間は約15~20分」と言われます。
SPF1=20分間を基準にしているため、「SPF20」の日焼け止めを塗った場合は、通常(20分)の20倍(約6時間半)、肌を日焼けから守ってくれます。
ですので、SPF50を塗ると50倍の時間守ってくれるという指標です。
PA
Protection Grade of UVAの略で、主にUV-Aに対して効果のあるものを指します。
PAの数値は、PA+~PA++++までの4段階が存在し、+の量が多ければ多いほどUV-Aを防ぐ効果があります。
美肌菌にやさしい日焼け止め選びのポイント
ここからは、実際に日焼け止めを選ぶ場合のポイントをKINS流にご紹介します!
日焼け止めを買いに行く前に、ぜひ目を通してみてくださいね。
ポイントその1:SPF30以上の日焼け止めを選ぼう
アメリカの皮膚科学会ではSPF30以上の日焼け止めを使用することを推奨しています。
SPF値が低すぎることでUV-Bにより肌がダメージを受けてしまう可能性もあるため、SPF30以上の日焼け止めを選択しましょう。
また、曇りや家の中でも油断せず日焼け止めを使用することが大切です。
最近では日焼け止めだけでなく、化粧下地に日焼け止め効果があるものも。
ライフスタイルに合った日焼け止めを選択するといいでしょう。
ポイントその2:刺激成分の少ないものを選択しよう
日焼け止めの中にも、ものによっては強い防腐剤や合成界面活性剤などの刺激成分が含まれていることがあります。
美肌菌へのダメージリスクを減らしお肌を守る、という意図で日焼け止めを塗っているのに、結果的に菌にあまり良くない成分を使ってしまうこともありえます。
日焼け止めを購入する際は、必ず成分を確認しておきましょう。
また、個人差がありますが紫外線吸収剤の入っていないものは敏感肌さんも使いやすいとされています。
おすすめな日焼け止めの種類について、さらに詳しくこちらの記事でご紹介しています
ポイントその3:数値が高ければ良いは間違い
SPFやPAは数値が高いほど紫外線を防ぐ効果がありますが、数値が高い分お肌への負担が大きくなることも…。
とりあえず数値の高いもの!と選択すると、場合によっては思わぬ肌トラブルを生じることがあります。
ご自身の肌タイプや、TPOで使い分けることが重要です。
シーンに合わせ使用できるよう、SPFやPAの数値が違うものを購入し常備しておくといいでしょう。
ここまで、美肌菌と紫外線の関係、日焼け止めの基礎知識や選び方、おすすめの日焼け止めをご紹介しました。
紫外線からお肌を守り、美しく保つために日焼け止めはとても大切です。
あなたの美肌菌と美しい肌を守り抜くために、正しく日焼け止めを選択しましょう。
参考文献:
・(※1)Dongqing Li ,Wang Wang ,Yelin Wu; Xiaojing Ma .Wenbo Zhou;.Yuping Lai Lipopeptide 78 from Staphylococcus epidermidis Activates β-Catenin To Inhibit Skin Inflammation FEBRUARY 15 2019
・(※2)Yue Zheng, Rachelle L Hunt, Amer E Villaruz, Emilie L Fisher, Ryan Liu, Qian Liu, Gordon Y C Cheung, Min Li, Michael OttoCommensal Staphylococcus epidermidis contributes to skin barrier homeostasis by generating protective ceramidesFebruary 04, 2022
・(※3)Atena Amirsoleimani,Gail M BrionSolar disinfection of turbid hygiene waters in Lexington, KY, USA2021.003
・(※4)Djouhar Souak, Magalie Barreau,Aurélie Courtois,Valérie André,Cécile Duclairoir Poc,,Marc G. J. Feuilloley, and Manon GaultChallenging Cosmetic Innovation: The Skin Microbiota and Probiotics Protect the Skin from UV-Induced Damage2021 May