PMSにピルは効く?副作用はある?ピルに頼らない緩和方法
これらの症状は日常生活に支障をきたすこともあり、改善方法を探している方も少なくありません。
近年、PMSの症状緩和に効果があるとされる方法の一つにピルの使用が挙げられています。
しかし、ピルを使用することに対する不安や副作用の心配もあるでしょう。
この記事では、ピルがPMSにどのように効果をもたらすのか、考えられる副作用、そしてピルに頼らないPMSの緩和方法について詳しくご紹介します。
毎月のしんどいPMS
毎月訪れるPMSは、多くの女性にとって辛い時期です。
PMSの症状は個人差が大きく、軽度から重度まで様々ですが、一般的には以下のような症状が見られます。
身体的症状
腹痛や腰痛 | 下腹部や腰に強い痛みを感じることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。 |
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頭痛 | 偏頭痛や緊張性頭痛が現れることがあり、集中力の低下を引き起こすことがあります。 |
乳房の張りや痛み | 乳房が敏感になり、触れると痛みを感じることがあります。 |
むくみ | ホルモンバランスの変化により体がむくみやすくなり、特に足や手がむくむことがあります。 |
精神的症状
イライラや不安感 | 些細なことにイライラしたり、理由もなく不安になることがあります。 |
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気分の落ち込み | 急に気分が落ち込み、何もしたくないと感じることが増えます。 |
集中力の低下 | 仕事や勉強に集中できず、効率が悪くなることがあります。 |
行動面の症状
過食や食欲不振 | 特定の食べ物が欲しくなったり、逆に食欲が全くなくなることがあります。 |
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睡眠の乱れ | 寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めることが増えます。 |
これらの症状は月経の始まる1〜2週間前から始まり、月経が始まるとともに徐々に軽減されることが多いです。しかし、毎月このような症状に悩まされるのは非常に辛いことです。
女性ホルモンの波がPMSの原因になる
PMSの原因は一つではありませんが、その中心には女性ホルモンの波やその乱れが深く関与しています。
女性の体は月経周期を通じてエストロゲンとプロゲステロンという二つの主要なホルモンの変動に影響を受けます。
エストロゲンとプロゲステロンは、月経周期を通じて異なる役割を果たします。エストロゲンは月経周期の前半に分泌され、卵胞の成長を促し、子宮内膜を厚くします。また、気分を安定させる作用もあります。
一方、プロゲステロンは排卵後に分泌され、子宮内膜を維持し、妊娠の準備を整える役割を担っています。このホルモンもリラックス効果があり、気分に影響を与えます。
月経周期の前半では、エストロゲンのレベルが上昇し、気分が高まりやすくなります。しかし、排卵後にはプロゲステロンが急増し、エストロゲンは減少し始めます。このホルモンのバランスの変化がPMSの症状を引き起こす原因とされています。
特に、プロゲステロンの増加に対する体の反応やエストロゲンの減少が、気分の不安定や身体的な不快感を引き起こすことがあります。
ホルモンバランスが乱れると、PMSの症状が一層ひどくなることがあります。ストレスや生活習慣の乱れは、ホルモンの分泌に直接影響を与えます。
例えば、過度なストレスはコルチゾールというストレスホルモンの分泌を増加させ、これがエストロゲンやプロゲステロンのバランスを崩す原因となります。また、睡眠不足や不規則な食生活もホルモンの分泌を乱し、PMSの症状を悪化させる要因となります。
年齢や健康状態もホルモンの波に影響を与えます。例えば、30代後半から40代にかけての女性は、卵巣の機能が徐々に低下し始め、ホルモンの分泌が不規則になることがあります。
これにより、PMSの症状が以前よりも重く感じられることがあります。また、甲状腺の問題やポリシスティックオーバリアンシンドローム(PCOS)など、ホルモンに関連する健康状態もPMSの症状に影響を与える可能性があります。
PMSにピルが効く理由
PMSの症状を和らげるために、ピル(経口避妊薬)が有効であることが多くの研究で示されています。ピルはホルモンバランスを安定させることで、PMSの様々な症状を軽減する効果があります。では、具体的にどのようにピルがPMSに効くのかを見ていきましょう。
ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンを含んでいます。これらのホルモンが体内で一定のレベルに保たれることで、自然なホルモンの波を抑制し、月経周期全体のホルモンバランスを安定させる役割を果たします。
この結果、ホルモンの急激な変動が原因で生じるPMSの症状、特に気分の不安定や身体的な不快感が軽減されます。
ピルの種類
ピルには大きく分けて「複合ピル」と「ミニピル」の2種類があります。それぞれのピルの特徴とPMSに対する効果について説明します。
複合ピル
複合ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの両方を含むピルです。このタイプのピルは、ホルモンバランスを安定させることで、PMSの症状を緩和する効果があります。
複合ピルは特に、気分の変動、乳房の痛み、腹痛などの身体的症状に対して効果的です。また、複合ピルには21日間の服用と7日間の休薬期間があるタイプや、28日間連続で服用するタイプなどがあります。
ミニピル
ミニピルは、プロゲステロンのみを含むピルです。このタイプのピルはエストロゲンを含まないため、エストロゲンに対する感受性が高い女性や、エストロゲンを避けたい場合に適しています。
ミニピルはホルモンの波をより穏やかにすることで、PMSの症状を軽減しますが、複合ピルに比べて若干効果が弱いとされることもあります。また、毎日同じ時間に服用する必要があるため、服用スケジュールに注意が必要です。
ピルを使用することで、PMSの症状を大幅に緩和することができますが、すべての女性に適しているわけではありません。個々の体質や健康状態によって、適切なピルの種類や服用方法が異なるため、医師と相談して自分に最適なピルを選ぶことが重要です。
また、ピルの服用には副作用のリスクも伴うため、定期的な健康チェックも欠かせません。
ピルの費用
PMSの症状緩和のためにピルを使用する場合、その費用が気になる方も多いでしょう。ピルの費用は種類や購入場所によって異なりますが、一般的な費用についてご紹介します。
ピルの購入費用
ピルには大きく分けて「複合ピル」と「ミニピル」の2種類があります。どちらのピルも、保険適用外のため自費での購入が必要です。以下に一般的な費用の目安を示します。
複合ピル | 月額約2,000円から4,000円程度。 |
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ミニピル | 月額約3,000円から5,000円程度。 |
これらの価格は、処方されるピルのブランドや種類、薬局やクリニックの販売価格によって異なります。一部のオンライン薬局では、定期購入割引などを提供している場合もあります。
病院受診の費用
初診料
2,000円から5,000円程度。
再診料
1,000円から3,000円程度。
初診時には、問診や健康状態のチェック、場合によっては血液検査やその他の検査が行われることがあります。これらの検査費用も加算される場合があるため、初回は少し高額になることがあります。
総合的な費用
ピルを継続的に使用する場合、月々のピルの費用と定期的な診察費用が必要となります。例えば、複合ピルを月額3,000円で購入し、3ヶ月ごとに再診(診察料2,000円)を受ける場合、年間の総費用は以下のようになります。
ピルの費用 | 3,000円 × 12ヶ月 = 36,000円 |
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診察費用 | 2,000円 × 4回 = 8,000円 |
年間総費用 | 44,000円 |
このように、ピルの費用と病院受診の費用を合わせると、年間で約40,000円から50,000円程度の費用がかかることが見込まれます。ピルの使用を検討する際には、これらの費用を考慮し、自分の予算や生活スタイルに合った選択をすることが重要です。
ピルの服用方法
ピルには複合ピルとミニピルがありますが、それぞれの服用方法には違いがあります。
複合ピルの服用方法
複合ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの両方を含むピルです。一般的な複合ピルの服用方法は以下の通りです。
21日間服用タイプ
21日間連続してピルを1日1錠、同じ時間に服用します。
21日間の服用後、7日間の休薬期間を取ります。この期間中に月経が始まります。
休薬期間が終わったら、新しいピルシートを開始します。
28日間服用タイプ
28日間連続してピルを1日1錠、同じ時間に服用します。
このタイプは、21錠の有効成分を含むピルと7錠のプラセボ(偽薬)がセットになっていることが多いです。プラセボ期間中に月経が始まります。
プラセボ期間が終わったら、新しいピルシートを開始します。
どちらのタイプも、毎日同じ時間に服用することが重要です。服用時間を忘れないようにアラームを設定するなどの工夫をすると良いでしょう。
ミニピルの服用方法
ミニピルはプロゲステロンのみを含むピルで、エストロゲンを含まないため、エストロゲンに対する感受性が高い女性に適しています。ミニピルの服用方法は以下の通りです。
ミニピルは28日間連続して1日1錠、同じ時間に服用します。休薬期間はありません。
服用時間が非常に重要で、毎日同じ時間に服用しなければなりません。特に、服用時間がずれると効果が低下するため、注意が必要です。
服用忘れへの対処法
ピルの服用を忘れた場合は、速やかに対処することが大切です。
複合ピルの場合
服用忘れが24時間以内であれば、気づいた時点で1錠服用し、その日の分も通常通り服用します。
24時間以上経過した場合は、医師の指示に従って対処しますが、追加の避妊措置が必要になることがあります。
ミニピルの場合
服用時間から3時間以上遅れた場合、直ちに1錠服用し、次の錠剤も通常通りの時間に服用します。
12時間以上遅れた場合は、次の錠剤を服用し、7日間は追加の避妊措置を取る必要があります。
ピルの服用方法を正しく理解し、指示通りに服用することで、PMSの症状を効果的に管理することができます。
ピルの副作用
PMSの症状緩和に効果的なピルですが、副作用が伴うこともあります。ピルの使用を検討する際には、これらの副作用について理解しておくことが重要です。
胃のムカムカ、吐き気
ピルの服用初期には、胃のムカムカや吐き気を感じることがあります。これはホルモンバランスの変化に体が適応する過程で起こることが多く、数週間で改善することが一般的です。
吐き気が続く場合は、食後に服用する、または医師に相談してピルの種類を変更することを検討すると良いでしょう。
むくみ
ピルの使用により、水分が体内に蓄積しやすくなり、むくみを感じることがあります。特に足や手がむくむことが多いです。
塩分の摂取を控えたり、適度な運動を行うことでむくみを軽減することができます。
体重増加
一部の女性は、ピルの使用により体重が増加することがあります。これはホルモンが水分や脂肪の蓄積に影響を与えるためです。
体重増加が気になる場合は、食事の内容を見直し、バランスの取れた食事を心がけるとともに、定期的な運動を取り入れることが大切です。
頭痛
ピルの服用により頭痛を感じることがあります。これはホルモンの変動が原因であることが多く、通常は服用を続けることで症状が改善されます。
しかし、頭痛が続く場合や強い場合は、医師に相談して適切な対処法を見つけることが必要です。
肌荒れ
一部の女性は、ピルの服用により肌荒れが生じることがあります。ホルモンバランスの変化が皮脂の分泌に影響を与え、ニキビや吹き出物ができやすくなることがあります。
スキンケアを見直し、皮脂コントロールを意識したケアを行うことで、肌荒れを軽減することができます。
ピルでPMSが悪化することはある?
PMSの症状を和らげるためにピルを使用することは一般的ですが、一部の女性はピルの使用開始初期に症状が悪化したと感じることがあります。
1から3シート目
ピルの服用を開始して最初の1から3シート目は、体が新しいホルモンバランスに適応する過程で、副作用が出やすくなります。これにより、一時的に以下のような症状が現れることがあります。
これは必ずしもPMSの悪化を意味するわけではなく、副作用が一時的に強く出ていることで起きる症状です。
・むくみや体重増加
・頭痛
・肌荒れ
これらの副作用は一時的なもので、多くの場合、4シート目以降には体がホルモンに慣れ、副作用が軽減されることが期待できます。
4シート目以降
4シート目以降、副作用が落ち着き、ピルの本来の効果が現れ始めます。しかし、それでもPMSの症状が緩和されない場合は、以下のような理由が考えられます。
子宮の病気の可能性
PMSが緩和されない場合、子宮内膜症や子宮筋腫などの子宮の病気が隠れている可能性があります。これらの病気は、PMSと似た症状を引き起こすことがあります。
出血量の個人差
ピルの使用により月経の出血量が減ることが一般的ですが、個人差があり、必ずしも理想の出血量になるとは限りません。
PMDDの可能性
PMSの症状が特に重く、イライラや不安が強い場合、PMDD(月経前不快気分障害)の可能性も考えられます。PMDDはPMSの一種ですが、症状がより重度で日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
▼PMDDについてはこちら
ピルを使用してもPMSの症状が緩和されない、または副作用が強く出る場合は、医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。ピルの種類や使用方法を変更することで、より良い効果が得られる場合もあります。
副作用がこわい方は食生活やサプリがおすすめ
ピルはPMSの症状緩和に効果的ですが、副作用が出やすく、一時的にかえってつらい思いをすることもあります。
副作用が心配な方や、ピルを使用せずにPMSを緩和したい方には、食生活の改善がおすすめです。食生活の改善は、PMSの緩和だけでなく、健康や美容にも良い影響を与えるため、総合的なメリットがあります。
女性ホルモンを整えるエクオール
エクオールは、大豆製品を摂取することで体内で生成される物質で、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをします。エクオールの摂取は、PMSの症状を緩和するのに効果的です。
エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されることで生成されます。エストロゲン受容体に結合することで、体内のエストロゲンのバランスを整える働きがあります。これにより、ホルモンバランスの乱れによるPMSの症状を緩和することが期待できます。
大豆製品を積極的に摂取することで、エクオールの生成を促進することができます。以下のような大豆製品がエクオールの生成に役立ちます。
・納豆
・豆乳
・味噌
これらの大豆製品を日常的に取り入れることで、エクオールの生成を促し、女性ホルモンのバランスを整える効果が期待できます。
エクオール産生菌を持っていない方はサプリで
エクオールを体内で生成するためには、特定の腸内細菌、つまりエクオール産生菌が必要です。実際、約半数の女性はこのエクオール産生菌を持っておらず、そのため大豆製品を摂取しても体内でエクオールを生成することができません。
エクオール産生菌を持っていない場合、体内でエクオールを生成することができないため、PMSの緩和効果を十分に得ることが難しくなります。そこで、エクオールやプレエクオールといった成分が含まれるサプリメントを摂取することが推奨されます。
エクオールのサプリメントは、体内で直接エクオールを補給することができるため、エクオール産生菌を持っていない方でも効果を期待できます。また、プレエクオールという成分は、エクオールの前駆体であり、体内でエクオールに変換されることで、同様の効果を得ることができます。
イライラや不安が強い方は腸内環境を整える
PMSの中でも特にイライラや不安などの精神面での症状が強い方には、腸内環境を整えることが効果的です。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、精神的な健康に大きな影響を与えます。腸内環境を整えることで、精神的な症状を緩和しやすくなります。
セロトニンの分泌を促す
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させる働きを持つ神経伝達物質です。セロトニンの約90%は腸内で生成されるため、腸内環境を整えることがセロトニンの分泌を促進するのに役立ちます。
腸内環境を整えるためには、以下の方法が有効です。
②腸内の善玉菌のエサとなる食物繊維を摂り、腸内環境を改善する。
腸内環境が整うことで、セロトニンの分泌が促進され、気分の安定やイライラの軽減に繋がります。
▼腸内環境とセロトニンについてはこちら
GABAの分泌を促す
GABA(γ-アミノ酪酸)は、リラックス効果を持つ神経伝達物質で、不安を軽減し、ストレスを緩和する効果があります。GABAは腸内細菌によって生成されることがあり、腸内環境を整えることでその生成を促すことができます。
GABAの生成を促すための方法は以下の通りです。
②乳酸菌を含む食品やサプリメントを摂り、腸内の善玉菌を増やし、GABAの生成をサポートする。
③GABA産生菌を摂ることで、GABAを生成する腸内細菌が増え、GABAがより多く生成されるようになる。
腸内環境を整えることで、GABAの生成が促され、リラックス効果や不安の軽減に繋がります。
ピルに頼りすぎないPMS対策を
PMSの症状緩和にピルを使用することは効果的ですが、副作用が心配な方や全身の健康を気にする方には、ピルに頼りすぎない対策も重要です。
食生活の改善は、ホルモンバランスを整え、PMSの症状を緩和するだけでなく、全体的な健康や美容にも良い影響を与えます。エクオールを生成する大豆製品の摂取や、腸内環境を整える発酵食品、食物繊維の摂取は、PMSの精神的な症状を軽減する効果があります。
セロトニンやGABAの分泌を促すことで、気分の安定やリラックス効果も得られます。ピルに頼るだけでなく、食生活の改善を取り入れることで、より自然な形でPMSの症状を管理し、全身の健康を維持しましょう。
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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