そのケアはNG?!ニキビを寄せつけない肌のためにできること

掲載日 | 2023.12.06
更新日 | 2024.01.26
30〜40代の15%から40%の人が大人ニキビに悩まされている

ある日とつぜん現れる、招かれざるニキビ

10代の頃は「青春のシンボル」と言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、実は統計上、30〜40代の15%から40%の人が大人ニキビに悩まされていることが分かっています。

10代の頃より治りも悪くなり、ますます悩ましい大人ニキビですが、ちょっとした習慣の違いでニキビができにくい人とニキビができやすい人の明暗が別れることも。

この記事では、ニキビに困らなかったある民族の習慣をヒントに、現代人がセルフケアで陥りがちなNGケアを見直しながら、ニキビを寄せつけない肌づくりの簡単なポイントをご紹介します。

ニキビとは なぜニキビができるのか?

ニキビとは なぜニキビができるのか?

ニキビは思春期頃から多くの人が経験する生理現象とも考えることができますが、正式には尋常性ざ瘡という名前がついた皮膚の病気の一つです。

ニキビができる原因は年齢や環境などによっても変わってきますが、代表的な原因としては皮脂の過剰分泌が挙げられます。

皮脂が過剰に分泌されることによって毛穴が詰まり、炎症が起きてニキビができてしまうのです。

また、この他にも食事や化粧品、常在菌バランス、遺伝、さらに女性であればホルモンバランスの乱れもニキビの原因になり得ます。

ニキビは思春期からの長いお付き合い。仕方がない。と諦めてしまう前に、ニキビに困らなかった狩猟採集民族の生活習慣をヒントに、これからの習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

ニキビに困らなかった狩猟採集民族

ニキビに困らなかった狩猟採集民族

狩猟採集民族とは、野生の動植物を狩猟・採集して生活を営む民族のことを指します。
必要なものは周りにある石や骨、木などの材料から作り、作ったもので獲物を狩って生活しているのです。

遠い旧石器時代の話のように感じるかもしれませんが、狩猟採集民族は現在も存在しています。

スキンケアなどとはほど遠い生活をしているはずの彼らが、ニキビと無縁である理由はどこにあるのでしょうか。彼らの生活を覗いてみましょう。

狩猟採集民族の食事

狩猟採集民族の食事は、自分たちが獲った動物の肉や植物になります。つまり、口にするもの全てが天然のものです。

味付けや調理、長期保存のための加工をしたりせず、新鮮な素材をそのままシンプルに食べる。これが狩猟採集民族の食事なのです。

私たちの食生活と大きく違う点は、彼らの食生活は精製穀物や加工食品、砂糖、防腐剤などとは無縁であるということ。

私たちがいかに、無意識のうちにそういったものを口に入れているかが分かります。

狩猟採集民族の環境

彼らの生活は常に「今日、食べ物(獲物)にありつけるか」という緊張感と共にあります。

日が昇ると狩猟・採集ために絶え間なく移動し、動き続けます。日常がエクササイズと言っても過言ではないほど、彼らは常に身体を動かしている状態。運動不足などとは無縁なのです。

アプリ1つで玄関先まで食べ物が届く私たちは、動かずとも食事にありつけるとても便利な環境にあります。
便利さ故の運動不足は、現代人ならではの問題とも言えますね。

狩猟採集民族の生活リズム

狩猟採集民族は太陽の光で目を覚まし、辺りが明るくなると狩りや採集などの活動を始め、明るいうちに食事も済ませます。
彼らは電気や照明を使用しないため、日が落ちて暗くなると翌日の活動・移動に備えて休息を取ります。

一見ハードな生活を送っているように思える彼らですが、彼らは太陽と共に行動し、その結果として十分な休息・睡眠を取っているのです。

狩猟採集民族がお手本!サーカディアンリズム

狩猟採集民族がお手本!サーカディアンリズム

サーカディアンリズムとは、人や動物が24時間ごとに繰り返す生理学的な体内時計のことです。この体内時計は、主に太陽の動きによって昼と夜のサイクルが修正されていると考えられています。
体内時計が正しく調整されていると、日中は体温が上がり、覚醒度が高まることで活動しやすくなったり代謝が高まります。逆に夜になると体温が下がり、眠りが訪れやすくなるのです。

現代人の多くは照明の下での生活が当たり前になり、太陽の動きとは関係のない生活が簡単にできてしまう環境にあります。

多忙を極めて昼夜逆転、という話もよく聞きますね。こうした不規則な生活によって体内時計が狂うと、健康的な生活から遠のいてしまうことに。当然お肌にも良くないことは明らかです。

狩猟採集民族のスキンケア?お肌事情

狩猟採集民族のスキンケア?お肌事情

猟採集民族は、洗浄力の高い洗顔料などで毎日洗顔を行っているでしょうか。
毎日ダブル洗顔を欠かさない狩猟採集民族などいるのでしょうか。

答えは、ノーです。
自然の中の限られた資源を最大限活用する彼らにとって、石鹸や洗顔料などの化学製品を使う習慣は一般的ではありません。

彼らは狩りなどで汚れたら、川や湖などの水で洗い流し、必要以上に洗うことをしません。

洗うことに慣れた現代人からすると、少々驚く内容かもしれませんが、実は狩猟採集民族の皮膚常在菌の数は、現代人の約3倍もあると考えられています。

必要以上に洗わないことによって肌が乾燥から守られ、肌の自然な皮脂バランスと潤いが保たれます。
彼らのこうした習慣が、肌環境の安定に繋がっているのだと考えられています。

ニキビ改善へのセルフケア① 食事の改善

ニキビ改善へのセルフケア① 食事の改善

狩猟採集民族による、自然の恩恵を生かしたシンプルな暮らし。

これをヒントに、私たちがニキビ改善のためにできるセルフケアについてご紹介します。

高GI食品を控える

高GI食品を控える

まずは、GI値の高い食品を控えることです。

GI値とは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後血糖値の上昇度を示す指標です。
食事の後、どれくらいの速度で血糖値が上昇するかのスピードを数値化したもので、GI値の高いものほど血糖値が上昇しやすい高GI食品とされています。

高GI食品には、精製された白い炭水化物が多く含まれます。

【高GI食品とされている食品の例】

・白米
・小麦粉のパン
・上白糖(白砂糖)
・パスタ、ラーメンなどの麺類

高GI食品とニキビの関係

高GI食品を摂取して血糖値が急激に上がると、私たちの体内では急上昇した血糖値を下げようとインスリンというホルモンが大量に分泌されます。

このインスリンは IGF-1というホルモンを刺激する作用があり、これによって皮脂が増えて毛穴が詰まりやすくなると考えられています。

皮脂による毛穴の詰まりは、ニキビなど炎症の原因に。

皮脂の過剰分泌を防ぐためにも、高GI食品をなるべく控え、低GI食品に代えることをおすすめします。

【高GI食品を低GI食品に代える例】

・白米
・小麦粉のパン
・上白糖(白砂糖)
・パスタ、ラーメンなどの麺類
・玄米、雑穀米、十五穀米など
・ライ麦パン、全粒粉パンなど
・甜菜糖、アガベシロップ、蜂蜜など
・グルテンフリー麺

牛乳やプロテインにも気をつけたい

牛乳やプロテインがニキビの原因に

皮脂の過剰分泌による毛穴のつまりやニキビに悩む方に注意していただきたいのが、牛乳です。

牛乳に含まれるロイシンというアミノ酸が、皮脂の過剰分泌を引き起こすとされる
IGF-1を上昇させることが分かっています。

このロイシンはホエイプロテインにも多く含まれている成分なので、プロテインを選ぶ際の参考にもなさってみてください。

ニキビ改善のセルフケア②-スキンケア

ニキビ改善のセルフケア②-スキンケア

狩猟採集民族の洗いすぎないシンプルなケアが、ニキビ知らずの肌を保つヒントになるというお話をしましたが、私たちが普段のセルフケアの中で陥りがちなNGケアにはどんなものがあるのでしょうか。

ニキビに悩む539名の患者を対象とし、普段のセルフケアについてアンケートを取った韓国の論文で、ニキビに悩む人に共通する習慣があることが分かりました。

順に見ていきましょう。

ニキビに悩む人に共通する習慣|洗いすぎ-ダブルクレンジング

一つ目は、洗いすぎているという点です。

メイク落としで化粧を洗い落とし、そのあと洗顔石鹸などで再び洗うダブルクレンジングや、界面活性剤など強い成分が入った洗顔料を毎日使う習慣。

こうしたケアは、洗いすぎによって肌に負担をかけているばかりか、肌のバリア機能や水分を保ってくれている皮膚常在菌まで洗い流してしまっている可能性も。

もちろん、しっかりメイクをした日は洗浄力の高い洗顔料を使用して残さずオフすることも必要ですが、なるべく肌に負担をかけないよう意識したいところです。

普段はナチュラルメイクを心がけ、ダブル洗顔不要で肌に優しいクレンジングを使用したり、朝は洗顔料を使わずぬるま湯で洗うなど、工夫するのもおすすめです。

ニキビに悩む人に共通する習慣|使いすぎ-基礎化粧品の使用個数

2つ目は、基礎化粧品を使いすぎるという点です。

私たちの肌には、肌にいい働きをして美肌に貢献してくれるとされる善玉菌を含む皮膚常在菌が棲んでいます。

肌にいいからと、いくつも化粧品を肌に塗ることは、それだけ界面活性剤や防腐剤などのリスクも増え、常在菌を弱らせたり減らしてしまう原因にもなりかねません。

界面活性剤や防腐剤が必ずしも悪いということではありませんが、肌の常在菌バランスを保って健やかな肌を維持するためにも、極力シンプルなケアをおすすめします。

ニキビに悩む人に共通する習慣|落ちないメイク

3つ目は、落ちない(落ちにくい)コスメを日常的に使用しているという点です。

コロナウイルスの流行でマスクをつけることが当たり前になった背景から、コスメも飛躍的に進化し、ティントタイプのリキッドファンデーションやリップなどのマスクをつけても落ちないメイクが多く発売されました。

つけ直しが要らなかったり崩れにくかったりと便利な面がある一方で、落ちにくいメイクにはそれだけ洗浄力の高いメイク落としが必要であるというデメリットもあります。

落ちにくいメイクはここぞという時だけにして、なるべく普段は優しく落とせるタイプのメイクを使用するなど、メリハリをつけてみてはいかがでしょうか。

ファンデーションとクレンジングの相性も考えて

ファンデーションとクレンジングの相性も考えて

石鹸で落とせるタイプのファンデーションをつけているのにも関わらず、洗浄力の高いクレンジングを使用してさらに洗顔フォームで洗う。

ティントタイプのファンデーションをつけているのに、メイク落としを使わず石鹸のみで洗う。

これらは極端なNG例ではありますが、使用するファンデーションとクレンジングの相性を考えることはとても大切なのです。

一見、キレイさっぱり落とせたと思っているメイクも、実は落としきれずに残っているということも。

メイク残りを防ぎながらも、なるべく肌に負担をかけず優しく落とせるクレンジングを見極めることも大切です。

肌のことを考えるなら、オイルクレンジングはNG?!

肌のことを考えるなら、オイルクレンジングはNG?!

拭き取りタイプやクリームタイプ、ジェルタイプにミルクタイプと、色々な種類があるクレンジング。
オイルタイプは強すぎて、ニキビなど肌荒れに悩む敏感な時期の肌には向かないのではと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、オイルタイプのクレンジングも天然由来成分のものを選ぶことで、洗浄力と優しさの両方を叶えることができます。

特におすすめなのは、天然油脂系クレンジングオイルです。
炭化水素系クレンジングオイルや合成油脂系クレンジングオイルなどと比べて肌への刺激を抑えることができ、そのうえメイクもしっかり落とすことができます。

ニキビ改善のセルフケア③-腸内環境

ニキビ改善のセルフケア③-腸内環境

高GI食品を摂取すると、皮脂の分泌を過剰にするインスリンとIGF-1というホルモンが分泌され、毛穴のつまりが起こってニキビに繋がるメカニズム。

実は腸内環境を整えることでその肌荒れが起こるメカニズムを抑えることができることが分かっています。

イタリアのプロバイオティクス研究

プロバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されています。
例えば、乳酸菌やビフィズス菌がこれにあたり、摂取することで腸内環境を整える働きをします。

イタリアの研究によると、生きたまま腸に届くヒト由来のプロバイオティクス乳酸菌であるラムノサス菌を12週間摂取したところ、皮脂の過剰分泌を引き起こすホルモン
IGF-1が減少したという報告がされています。

ニキビ改善のセルフケア④-皮膚細菌

ニキビ改善のセルフケア④-皮膚細菌

腸内環境を整えるプロバイオティクス乳酸菌を摂取することで肌荒れのメカニズムを抑えるのと同じ原理で、皮膚の細菌にアプローチすることによって体質からニキビになりにくくする研究も注目されています。

乳酸菌ラクトバチルスパラカゼイの研究

軽度から中程度のニキビに悩む患者104名をランダムに2つのグループに分け、Aグループには一般的なニキビ治療薬である2.5%過酸化ベンゾイルを患部に塗布してもらい、Bグループには乳酸菌ラクトバチルスパラカゼイの代謝産物をエキスにしたプロバイオティクス・ローションを塗布してもらうという実験を4週間行いました。

4週間後、結果はどちらのグループにも抗炎症効果が見られ、グループ間には統計的優位な差はなかったことが報告されています。

つまり、乳酸菌を使用したプロバイオティクス・ローションは、一般的なニキビ薬と同程度の抗炎症効果を持つことが証明されたのです。

このことによって、これまで薬の使用によって副作用に苦しんでいたニキビ患者への安全かつ新しい選択肢の可能性が示唆されています。

食事・スキンケア・菌バランスを整えて
ニキビ知らずの肌へ

食事・スキンケア・菌バランスを整えてニキビ知らずの肌へ

今回は、ニキビに困らなかった狩猟採集民族のシンプルな生活習慣を参考に、私たちがすぐに改善・実践できる内容をご紹介しました。

ニキビは、物にあふれた便利な世の中に生きる現代人ならではのやりすぎ美容も原因のひとつ。

規則正しい生活と食生活の見直しを行いながら、引き算のケアにトライしてみるのもよいでしょう。

ニキビに悩む時、どうしても肌という外側に目を向けがちですが、外側だけでなく内側(腸内)の菌バランスにも目を向けてケアをしていくことが大切です。

この記事を参考に、ニキビ改善への一歩を踏み出していただけたら幸いです。

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【前編】ニキビを最速で治す方法&ニキビの予防法を徹底解説します

【後編】ニキビが増える間違ったスキンケアを徹底解説

【参考文献】
・30代、40代 大人ニキビ 15%から40%
Collier CN, et al. The prevalence of acne in adults 20 years and older. J Am Acad Dermatol. 2008 Jan;58(1):56-9. doi: 10.1016/j.jaad.2007.06.045.

・年齢が増すにつれてニキビの原因が変わる
Kutlu Ö, et al. Adult acne versus adolescent acne: a narrative review with a focus on epidemiology to treatment. An Bras Dermatol. 2023 Jan-Feb;98(1):75-83. doi: 10.1016/j.abd.2022.01.006.

・狩猟採集民族はニキビにならない
Cordain L, et al. Acne Vulgaris: A Disease of Western Civilization. Arch Dermatol. 2002;138(12):1584–1590. doi:10.1001/archderm.138.12.1584

・狩猟採集民族は皮膚常在菌が現代人の3倍
Prescott SL, et al. The skin microbiome: impact of modern environments on skin ecology, barrier integrity, and systemic immune programming. World Allergy Organ J. 2017 Aug 22;10(1):29. doi: 10.1186/s40413-017-0160-5.

・全世界でニキビになっている人口
Vos T, et al. Years lived with disability (YLDs) for 1160 sequelae of 289 diseases and injuries 1990-2010: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2010. Lancet. 2012 Dec 15;380(9859):2163-96. doi: 10.1016/S0140-6736(12)61729-2. Erratum in: Lancet. 2013 Feb 23;381(9867):628.

・日本人の腸内環境
Nishijima S, et al. The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness. DNA Research. 2016 Apr;23(2):125–133.

・ 高GI食品 インスリン IGF-1上がる
Baldwin H, Tan J. Effects of Diet on Acne and Its Response to Treatment. Am J Clin Dermatol. 2021 Jan;22(1):55-65. doi: 10.1007/s40257-020-00542-y. Erratum in: Am J Clin Dermatol. 2020 Dec 26.

・ 牛乳 IGF-1 増える
Adebamowo CA, et al. Milk consumption and acne in teenaged boys. J Am Acad Dermatol. 2008 May;58(5):787-93. doi: 10.1016/j.jaad.2007.08.049.

・4週間 プロバイオティクス
Huang N, et al. Efficacy of probiotics in the management of halitosis: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2022 Dec 20;12(12):e060753. doi: 10.1136/bmjopen-2022-060753.

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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