掲載日 | 2023.11.01
更新日 | 2023.11.01

【老化時計】たった8週間で3歳若返る?伝説の研究

掲載日 | 2023.11.01
更新日 | 2023.11.01
久しぶりに集まった同窓会で、年齢が同じにも関わらず、人によって見た目や体力面での老化度合い(老化ペース)に差を感じたという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「老化時計」とは、1年に1歳ずつ歳を重ねる「暦」としての老化ペースではなく、肌や頭髪などの見た目や健康面、体力面に表れる生物学的な老化ペースを指します。

この記事では、20年もの老化研究によって明らかになった「本当の老化」と、そして刻一刻と歩みを進める老化時計の針をペースダウンさせ、さらに逆回転させることによって8週間で3歳以上若返ることも可能にする方法を分かりやすくご説明します。

「老化時計」とは?

「老化時計」とは、1年に1歳ずつ歳を重ねる「暦」としての老化ペースとは別に、食事や運動などの生活習慣や環境によって認知機能や身体機能、さらには見た目にも表れる生物学的な老化のペースのことです。

つまり、「老化時計」=1年歳をとる際、実際にその人がどれくらい老化するかの度合い

このように考えることができます。

老化ペースの違い

「老化時計」によって見る老化の度合いは、針の進む速度によって人それぞれ。
針がハイペースでぐるぐると回っている人は、たった3年で生物学的に7歳分も老化し、逆にスローペースでゆるやかに進んでいる人は10年経っても4歳分の老化で済むということが研究で明らかになっています。

したがって「老化時計」で見た際、1年にたった0.4歳しか老化しない人もいれば、1年で2.44歳も老化してしまう人がおり、そこには最大で6倍もの差が生じてしまうのです。

ダニーデン研究

ニュージーランドのダニーデン市で1972年〜1973年に生まれた1037人の参加者を対象とし、20年間に渡って彼らの健康状態を4回測定しました。
その多種多様な測定に基づき、それぞれの参加者に「生物学的な年齢」を割り当てた研究です。
この研究によって、人が老化するペースには個々でバラつきがあることが判明しました。
ほとんどの参加者が1年に1歳程度老化しているのに対して、実年齢よりも3歳以上老化している人や、反対に実年齢以上の若さをキープしている人がいることも分かりました。

ダニーデン研究の内容

同じ年に生まれた1037人の参加者を対象とし、腎臓・肝臓・肺・代謝・免疫系の機能や歯の健康・コレステロール・心肺の状態・肺機能などについて20年間で4回の測定を行いました。

その結果、老化ペースが早い人では実年齢が30代であるにも関わらず、生物学的年齢が50代を超える人もいました。
そういった人は、そうでない人と比べて見た目の老化も顕著であり、身体機能や認知機能などにも低下の兆候が見られたのです。

反対に、実年齢以上の若さを維持している人もいることから、「老化時計」を遅らせて健康寿命を延ばすための大きな一歩になる新発見として大いに注目されている研究です。

ダニーデン研究の参加者

この研究の参加者は、20年間にわたって4回の研究測定に協力する必要がありましたが、20年の間に4回全ての計測に継続して参加した人の確率は94%にも及びました。

この壮大な研究が、縦断的研究として過去にないほど高い精度と多くの情報量を持って行われたことが分かります。

たった8週間で3歳も若返る?「老化を防ぐ習慣・食事」
老化時計を逆回転させる8週間プログラム

ダニーデン研究によって、老化時計による老化ペースには個人差があることが分かりました。
さらに、老化を防ぐ習慣(ライフスタイル)と食事を続けることで、たった8週間で3歳の若返りが可能になるという夢のようなプログラムが、臨床実験を行ったアメリカの研究チームによって発表されました。

ここからは、老化ペースを遅くし、さらに老化時計を逆回転させて健康寿命を延ばすための8週間プログラムについて詳しくご説明します。

アメリカの研究チームによる臨床実験

50歳から72歳の健康な成人男性43名をランダムにAとBの2グループに分け、Aグループには8週間のライフスタイル・食事プログラムを受けてもらい、Bグループは特にプログラムを受けずに過ごすというシンプルな実験を行いました。

その結果、8週間のプログラムを受けたAグループは、何もしなかったBグループと比べて生物学的年齢が3歳以上若くなっていることが分かりました。

それでは、さっそくその8週間プログラムの具体的な内容について見ていきましょう。

8週間プログラム①7時間以上の睡眠

1つ目は、毎晩最低7時間の睡眠を取るというものです。
これはとてもシンプルで続けやすい習慣と言えるでしょう。良質な睡眠は私たちの健康とは切り離せない大切なもの。
睡眠環境を整えて、7時間以上の睡眠を目指したいものです。

8週間プログラム②12時間ファスティング

2つ目は、12時間ファスティングです。
ファスティングとは一定の期間、食べ物を断つこと(断食)を指し、
このプログラムでは12時間の断食を推奨しています。

例えば、朝ごはんを午前7時に食べたら、その日の夜ご飯は午後7時(19時)までに終わらせ、それ以降は翌日の朝7時まで断食するというもの。

朝食以降の12時間は食事の時間や内容に制限はないため、ファスティングと聞いてハードルが高いと感じる方でも、この12時間ファスティングならチャレンジしやすいのではないでしょうか。

8週間プログラム③運動30分を週5回

3つ目は、30分以上の有酸素運動を週5回継続するというものです。
わざわざジムに通ったり激しい運動をする必要はなく、30分ウォーキングをする程度でも運動不足を解消することはできます。

日頃身体を動かす機会のない方も、軽いウォーキングからはじめてみると良いでしょう。

8週間プログラム④1日2回 × 20分 腹式呼吸

4つ目は、20分間の腹式呼吸を1日2回行うというものです。
これは、横隔膜を動かすことによって自律神経のバランスを整えてストレスを軽減し、メンタルを調整することを目的としています。

例えば、朝20分と夜寝る前に20分など、リラックスしながら腹式呼吸するタイミングを1日の中に取り入れてみてください。

8週間プログラム⑤プランタラム菌を摂取

5つ目は、「プランタラム菌」を取り入れるというものです。
「プランタラム菌」とは植物性乳酸菌の一種で、漬物やキムチ、ピクルスなど身近な食品に含まれています。
腸内環境に良い働きをする善玉菌を増やし、育てる物質をプレバイオティクスと呼びますが、このプログラムではプランタラム菌を含むプレバイオティクスが入った食品を積極的に摂ることを勧めています。
食品から摂取することが難しい場合は、サプリメントで補うのも良いでしょう。

8週間プログラム⑥徹底した食事プログラム

6つ目は、徹底した食事プログラムです。

・1週間でレバーを3個摂取
・1週間でオーガニックの卵を5〜10個摂取(放し飼いでオメガ3が豊富なものが好ましい)
・1日に濃い葉物野菜(ケールやほうれん草など)を2カップ
・1日にアブラナ科の野菜(ブロッコリーやカリフラワー、キャベツなど)を2カップ
・1日にカラフルな野菜(ビーツ、かぼちゃのタネ、ひまわりのタネ、ベリーなど)3カップ
・1日にスパイス(ローズマリー、ターメリック、ニンニクなど)を摂取
・緑茶や烏龍茶を摂取
・1日170gの放牧牛(放物線のホルモン剤を使用していない)を摂取
・なるべく糖質を摂らない
・果物を摂る
・ココナッツ油(MCTオイルもおすすめ)、オリーブオイル、亜麻仁油、
かぼちゃの種子油。この4つの油をバランスよく摂取する
・乳製品を摂らない

老化時計を逆回転
さらに取り入れやすい下川式アドバイス

アメリカの研究チームによる老化時計逆回転プログラム。たった8週間で3歳若返るためなら容易いと感じる方、なかなかハードルが高いと感じる方それぞれいらっしゃることでしょう。

一見難しいようにも感じる8週間プログラムの内容ですが、実はある共通点があります。
それは、全て腸内環境に良い菌ケア(※)を心がけているという点です。

ここからは、アメリカの研究チームが発表したこの素晴らしいプログラムを踏まえ、より日本人向けに取り入れやすくした内容をご紹介します。

糖質制限について

日本人は欧米人に比べて、腸内細菌の中に炭水化物を分解できる菌が非常に多い性質があります。
そのため、欧米のように厳しい糖質制限をするのではなく、白米を発芽玄米や雑穀米などに代えるなどの工夫をしながら無理なく続けることが大切です。

全粒粉を摂取する

日頃から白いパンを食べている方は、「全粒粉」のパンに代えることをお勧めします。
「全粒粉」は小麦の粒を丸ごと挽いて粉にした褐色の粉ですが、この褐色の「殻」の部分には食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなる重要な成分なので、意識して摂りたい栄養素の一つです。

豆類、ナッツを摂取する

豆は私たち日本人にとって馴染みのある食材ですね。
豆には細胞の成長・増殖に欠かせない物質であるポリアミンが豊富なことでも知られています。
とりわけ納豆は発酵食品でもあり、腸内で善玉菌を増やすのに最適な食べ物と言えます。

また、ヨーロッパでの研究でも、ナッツ、マメ類などを多く摂る地中海食中心の生活を1年間実践した人は、生物学的年齢が1歳以上若返ったことが分かっています。

摂取を控えた方が良い食べ物

ここまでは、摂取すると良い食べ物をお伝えしてきましたが、反対に控えたほうが良い食べ物もあります。

加工肉

加工肉には「飽和脂肪酸」や「食品添加物」「塩分」などが多く含まれており、これらを摂りすぎると肥満やその他の疾病リスクを高める恐れがあるとされています。
カロリーも高いものが多いため、なるべく摂取を減らすよう意識すると良いでしょう。

白砂糖

カロリーも気になる白砂糖ですが、同じくらい気をつけたいのが「GI値」です。
「GI値」とは、食後の血糖値の上昇を示す指標を言い、白砂糖はこの血糖値を一気に上昇させてしまう「高GI食品」の一つ。
急激な血糖値の上昇は、血液中に大量のインスリンを分泌させます。その結果、イライラを引き起こしたり過剰な皮脂分泌によるニキビなどの肌荒れにも繋がることが分かっています。
また、悪玉菌のエサになることで腸内環境を悪玉菌優位にしてしまうこともあり得ます。

白砂糖の代わりに、低GI食品である甜菜糖や蜂蜜、アガベシロップで代用することをおすすめします。

白い炭水化物

精米された白いご飯や白いパンなども、高GI食品です。
白いお米の代わりに玄米や雑穀米にしたり、炊飯の際キヌアを一緒に炊くのもおすすめです。
また、白いパンの代わりに全粒粉にするなど、なるべく茶色い炭水化物を選ぶと良いでしょう。
これらには、善玉菌のエサとなる食物繊維はもちろん、ビタミンやミネラルといった消化・代謝を助ける大事な栄養素が豊富に含まれています。

老化時計の逆回転
早ければ早いほど寿命が伸びる?

ここまで解説してきた老化時計逆回転プログラムですが、実は始めるのが早ければ早いほど、「老化時計」を遅らせて健康寿命を延ばすのに効果的であることも分かっています。

アメリカの研究では、この「老化時計」の逆回転を意識したライフスタイルを20歳からスタートした人は、そうでない人と比べて男性で13年、女性で10年も寿命が延びることが示唆されています。

今この記事を読んでくださっている方が例え60代であっても、今日が1番若いのですから、
始めるのに遅すぎるということはありません。
8週間プログラムを全て実践するのが難しいという方は、手始めに今日の献立から腸内環境を意識した菌ケア(※)メニューを加えてみる、など始めやすいものからチャレンジしてみてください。

老化時計を意識した菌ケア生活で、健やかな毎日を

ニュージーランドやアメリカの研究によって、人には暦の老化とは別に生物学的な老化を示す「老化時計」があることが明らかになりました。

そしてその「老化時計」は、ライフスタイルや食事などを腸内環境に良い習慣へと改善することで針の歩みを遅くしたり逆回転させることも可能であることが分かりました。

この伝説の研究とも言える素晴らしい発見を、“どこか遠い国の自分とは無関係なこと”にせず、ぜひ自分事として日々の生活に取り入れながら健康に役立てていただきたいと思います。

菌ケア(※)を意識したライフスタイルの積み重ねで、健やかな毎日を手に入れましょう。

(※)菌ケアとは、健康と美しさの維持のために菌と生きるライフスタイルのこと

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菌ケアの専門家「下川先生」の菌ケア大学チャンネルはこちら▼

【参考文献】
ダニーデン研究 Elliott ML, et al. Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy. Nat Aging. 2021 Mar;1(3):295-308. doi: 10.1038/s43587-021-00044-4.

老化時計逆回転 Fitzgerald KN, et al. Potential reversal of epigenetic age using a diet and lifestyle intervention: a pilot randomized clinical trial. Aging (Albany NY). 2021 Apr 12;13(7):9419-9432. doi: 10.18632/aging.202913.

​​8週間プログラム、年齢の逆転の可能性 Fitzgerald KN, et al. Potential reversal of epigenetic age usinga diet and lifestyle intervention: a pilot randomized clinicaltrial. Aging (Albany NY). 2021 Apr 12;13(7):9419-9432. doi:10.18632/aging.202913.

平均余命に及ぼす影響 Fadnes LT, et al. Estimating impact of food choices on lifeexpectancy: A modeling study. PLoS Med. 2022 Feb8;19(2):e1003889. doi: 10.1371/journal.pmed.1003889.

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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