便秘薬は何を選んだらいい?症状別おすすめの便秘薬や注意点もご紹介
便秘は誰にでも起こり得る問題であり、その症状や原因は個人によって異なります。
そのため、適切な便秘薬を選ぶには、症状や生活習慣に合わせた選択が重要です。
この記事では、便秘薬の種類や症状別の選び方、そして便秘薬に頼らずに腸の健康を保つ方法について解説していきます。自身の健康と腸の状態を理解し、最適な解決策を見つけていきましょう。
便秘薬の種類
便秘薬にはさまざまな種類があり、それぞれの効果や使い方が異なります。便秘の症状や原因に合わせて適切な便秘薬を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な便秘薬の種類を詳しく見ていきましょう。
刺激性便秘薬
刺激性便秘薬は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を刺激して排便を促進するタイプの便秘薬です。主に腸の動きが鈍くなっている方や、即効性が求められるケースで使用されます。しかし、長期使用は腸に負担をかける可能性があります。
刺激性便秘薬には、以下のようなものが代表的な刺激性便秘薬には以下のような薬があります。
センナ
センナの葉や実を使用した薬で、腸の蠕動運動を刺激します。
ビサコジル
大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を引き起こします。
非刺激性便秘薬
非刺激性便秘薬は、刺激性便秘薬とは異なり、腸を刺激せずに自然な排便を促すタイプの便秘薬です。このカテゴリーにはさらに2つの種類があります。
浸潤性下剤
浸潤性下剤は、腸の内容物に水分を吸収させて柔らかくすることで排便を容易にする薬です。便を軟化させることで排出をスムーズにするため、慢性便秘に悩む方や硬い便が原因で排便が困難な方に適しています。
代表的な浸潤性下剤には以下のような薬があります。
酸化マグネシウム
水分を腸内に引き寄せて便を柔らかくする効果があります。
ミネラルオイル
腸の内容物に油膜を形成し、便を柔らかくして排出をスムーズにします。
膨張性下剤
膨張性下剤は、食物繊維のように水分を吸収して膨張し、腸内の内容物の量を増やすことで蠕動運動を促進し排便を助けます。自然な排便リズムを取り戻すために、長期間使用しても比較的安全とされています。
代表的な膨張性下剤には以下のような薬があります。
プランタゴオバタ(サイリウム)
水分を吸収してゲル状に膨らみ、腸の蠕動運動を刺激します。
メチルセルロース
植物由来の成分で、水分を吸収して膨張し、腸内の内容物を増やす作用があります。
漢方、ハーブ
薬に頼らず、自然由来の成分で便秘の改善を目指す方法として、漢方薬やハーブが挙げられます。漢方薬やハーブは長い歴史を持ち、症状を緩やかに緩和することが期待されています。以下に、便秘改善に役立つ代表的な漢方とハーブをご紹介します。
漢方
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
大黄(だいおう)と甘草(かんぞう)を含む漢方薬で、腸の蠕動運動を促進し排便をサポートします。大黄は、刺激性の下剤として効果があり、甘草は腸の炎症を抑えます。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
防風(ぼうふう)、黄芩(おうごん)などの生薬を含む処方で、便秘に伴うむくみや肌荒れの改善にも役立ちます。代謝を高め、体内の余分な水分を排出します。
ハーブ
フェンネル
フェンネルは、消化促進やガス抜き効果があり、便秘による腹部の不快感を軽減します。フェンネルティーとして飲むことが多いです。
センナリーフ
センナリーフは、刺激性のあるハーブで、腸の蠕動運動を活発にして排便を促します。ただし、長期間の使用は避け、適度に利用することが望ましいです。
ペパーミント
ペパーミントは、消化器の機能を整え、腸のガスを減らす効果があります。特に過敏性腸症候群による便秘に対して効果が期待されています。
便秘薬はどれを選ぶのがいい?
症状によって最適な便秘薬を選ぶことで、効率的に便秘を解消できます。ここでは、症状別のおすすめの便秘薬をご紹介します。
頑固な便秘を解消したいなら
頑固な便秘が続いている場合、まずは蓋をしている硬い便を排出することが重要です。その後の便通がスムーズになるため、腸を刺激するタイプの便秘薬を一度使用することがおすすめです。刺激性便秘薬は腸の蠕動運動を活発にし、排便を促進するため、頑固な便秘に効果的です。
代表的な刺激性便秘薬には以下のものがあります。
ビサコジル
ただし、刺激性便秘薬の長期間の使用は、腸の働きを弱める可能性があるため、慎重に使用することが大切です。ある程度便が出たら、別の便秘薬に変えたり、腸内環境を整えて便秘を解消していく方向にシフトするのがおすすめです。
腹痛が心配なら
刺激性便秘薬は、腸の蠕動運動を活発にすることで排便を促す一方、腸への刺激が強いため、腹痛やけいれんを伴うことがあります。もし腹痛が心配な場合や、以前に刺激性便秘薬で腹痛を経験したことがある方には、非刺激性便秘薬の使用がおすすめです。
非刺激性便秘薬は、腸を直接刺激せずに自然な排便を促します。代表的な非刺激性便秘薬には、以下のものがあります。
プランタゴオバタ(サイリウム)
メチルセルロース
非刺激性便秘薬を選ぶ際は、自分の症状や生活スタイルに合ったものを選びましょう。併せて、食物繊維や水分摂取、運動などの生活習慣改善も行うと、より自然で健康的な排便が期待できます。
できるだけ自然に出したいなら
便秘薬の依存や癖になることを心配する場合、できるだけ自然に排便を促す方法を選びたいものです。そうした方には、非刺激性便秘薬、漢方薬、ハーブの利用がおすすめです。これらは刺激性便秘薬に比べて腸に与える影響が緩やかで、癖になりにくいのが特徴です。
プランタゴオバタ(サイリウム)
メチルセルロース
大黄甘草湯
防風通聖散
ペパーミント
これらの方法は刺激性便秘薬に比べて緩やかな作用があります。
ペパーミントティーを毎日取り入れたり、食物繊維などをしっかり摂ることで、自然な排便をサポートする効果が高まります。
旅行に持っていくなら
旅行中は普段とは異なる環境や食事、移動の多さから、便秘になりやすいものです。そんなときにすぐに効果が期待でき、腹痛が起きにくい便秘薬を選ぶことが重要です。
座薬は肛門から直接挿入するため、効果が比較的早く現れます。硬い便が蓋をして排便が困難になっている場合、座薬を使うと便をすぐに出すことができるため、旅行中の急な便秘には便利です。大体、口から飲む便秘薬は効果が出るまでに6~8時間程度かかることが多いですが、座薬であれば、10分~30分で効果が出ることが多いです。
ホテルにいる間に出すことができるので、旅行中にも便利です。
また、便が硬くなりやすい方は、便の水分量を増やす浸潤性下剤である酸化マグネシウムもおすすめです。
子どもや妊婦さんでも安心して使えるなら
子どもや妊婦さんの場合、便秘薬の選択は慎重になります。特に妊婦さんは薬剤の影響を受けやすいため、刺激が少なく、癖になりにくいものが理想的です。そんな場合には、酸化マグネシウムが適しています。
妊婦さんは、自己判断で市販の便秘薬を使うのは避け、まずは医師に相談しましょう。酸化マグネシウムは、産婦人科で処方されることも多く、医師の指導のもとで使用できます。普段の食事で食物繊維や水分を十分に摂ることに加え、適度な運動も腸の働きを整える助けになります。
便秘薬の使いすぎには注意
便秘薬は症状の改善に役立ちますが、使いすぎると逆効果になることがあります。特に刺激性のある便秘薬は、長期間使用すると腸への負担が増えるため、注意が必要です。以下に便秘薬の過剰使用によるリスクを説明します。
癖になりやすい
刺激性便秘薬は、腸の蠕動運動を強制的に刺激するため、長期間使用すると腸が自らの動きを忘れてしまい、便秘薬なしでは排便が難しくなることがあります。これが癖になるという状態です。
効き目が弱くなる
慣れによって薬の効果が弱く感じるようになり、次第に使用量を増やさなければならなくなります。結果的に薬の依存度が増し、症状の悪化につながる可能性があります。
大腸がんのリスク増加
一部の研究では、長期にわたる刺激性便秘薬の使用が、大腸がんのリスクを増加させる可能性が示唆されています。これは、腸への継続的な刺激が炎症や腸内環境の悪化を引き起こすためと考えられています。
これらのリスクを避けるため、便秘薬の使用は一時的な症状改善にとどめ、長期的な解決には生活習慣の見直しが不可欠です。食物繊維の摂取量を増やしたり、十分な水分を摂ったり、適度な運動を取り入れることで、腸内の自然なリズムを取り戻すことが期待できます。
便秘を根本的に治すなら腸活がおすすめ
便秘薬は一時的な症状改善には役立ちますが、根本的な解決には腸活が重要です。腸活を行うことで自然な排便が促され、健康的な腸内環境が保たれます。
腸内環境を整えると便秘が解消される理由
腸内環境が整うと、善玉菌の活動が活発になり、その結果、腸の動きが改善されます。善玉菌が腸内で酸を生成することで、酸が腸の粘膜を適度に刺激し、腸の蠕動運動が促されます。これにより、腸が自然に動き、便がスムーズに排出されるようになります。
腸内の善玉菌にはさまざまな種類がありますが、特に次の3つを増やすことが便秘の改善に効果的です。
酪酸菌
酪酸菌は酪酸という短鎖脂肪酸を生成し、腸内の酸性度を適度に保つことで悪玉菌の増殖を抑えます。また、腸の蠕動運動を促進し、便の排出をスムーズにします。
乳酸菌
乳酸菌は乳酸を生成し、腸内環境を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑え、腸の動きを整えます。腸内フローラ全体のバランスを向上させる働きがあります。
糖化菌
糖化菌は、糖を分解しながら酸を生成するため、腸内環境を整えます。乳酸菌や酪酸菌の活動をサポートする働きもあり、便秘の改善に貢献します。
これらの善玉菌を増やすことで、便秘が自然と解消されやすくなります。
腸にいい菌を取り入れる
腸活の第一ステップとして、腸に良い菌を取り入れることが重要です。善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を摂取することで、腸内環境が整い、自然な排便を促すことができます。ここでは、それぞれの善玉菌を摂取する方法を説明します。
乳酸菌を摂る
乳酸菌は腸内の善玉菌の代表格であり、腸内環境を整えるのに大きな役割を果たします。乳酸菌を多く含む食品を積極的に取り入れると、腸内のバランスを改善し、便秘の解消に役立ちます。
ヨーグルト
乳酸菌が豊富に含まれ、毎日の食事に取り入れやすい代表的な食品です。
乳酸菌飲料
様々な種類の乳酸菌が含まれた飲料で、日常の水分補給として摂取できます。
キムチ、ぬか漬け、味噌
発酵食品には乳酸菌が豊富に含まれています。特に発酵過程で生きたままの菌が含まれるものは、より効果的です。
ビフィズス菌を摂る
ビフィズス菌は主に大腸に多く生息し、腸内の悪玉菌を抑制する働きを持っています。ビフィズス菌の摂取は、腸内環境を整えて消化機能を向上させます。
サプリメント
ビフィズス菌は胃酸に弱いため、腸まで届くよう特殊加工されたサプリメントが効果的です。自分のライフスタイルに合ったものを選びましょう。
発酵食品
ヨーグルトやチーズ、サワークラウトなどの発酵食品には、ビフィズス菌が含まれているものがあります。
乳酸菌やビフィズス菌をバランスよく摂取することで、腸内の善玉菌が増え、腸の動きが活発になり自然な排便を促します。腸活のために、毎日の食事やサプリメントでこれらの菌を積極的に取り入れましょう
腸にいい菌を育てる
腸活の第二ステップは、腸の善玉菌のエサを取り入れ、善玉菌を育てることです。腸内の善玉菌がしっかりと増えることで、腸内環境が整い、自然な排便が促されます。善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維やオリゴ糖を積極的に摂取しましょう。
水溶性食物繊維を摂る
水溶性食物繊維は、腸内でゲル状になり、善玉菌のエサとして腸内環境を整えます。また、便を柔らかくして排出しやすくするため、便秘解消に役立ちます。
果物や野菜
バナナやりんご、かぼちゃ、ほうれん草など、豊富な種類の野菜や果物に水溶性食物繊維が含まれます。
海藻
わかめやひじき、昆布などの海藻類には水溶性食物繊維が豊富です。
豆類
大豆やインゲン豆などの豆類も、善玉菌のエサとなる食物繊維を含みます。
オリゴ糖を摂る
オリゴ糖は、善玉菌の増殖を促すプレバイオティクスとして知られ、善玉菌のエサとなります。オリゴ糖を積極的に摂ることで腸内の善玉菌が増え、腸活が効果的に進みます。
食品
豆類、野菜、果物、はちみつなど、自然食品の中にもオリゴ糖が含まれています。
サプリメント
オリゴ糖のサプリメントもあり、料理や飲み物に混ぜて摂取することが可能です。
水溶性食物繊維やオリゴ糖を食事に取り入れることで、善玉菌をしっかりと育てることができます。腸内環境を整え、健康的な排便リズムを作るために、これらの栄養素を日常生活で意識的に摂取しましょう。
腸に悪い菌をとらない
腸活の第三ステップは、腸に悪影響を及ぼす要因を控えることです。グルテンや人工甘味料、添加物は腸内の悪玉菌を増やし、腸の健康を損なう原因になることがあります。腸活を進める際は、これらをできるだけ避けることが重要です。
グルテンに要注意
グルテンは小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質で、腸に悪影響を及ぼす可能性があります。
一部の人はグルテンに過敏な反応を示し、腸内で炎症を引き起こします。特にセリアック病や非セリアック性グルテン過敏症の人は、グルテン摂取により腹痛や下痢、便秘などの症状が現れることがあります。
グルテンを含まない食品として、米、とうもろこし、そばなどがあります。また、最近ではグルテンフリーの食品も増えているので、加工食品を選ぶ際はラベルをよく確認しましょう。
グルテンについてはこちらで詳しく解説しています。
人工甘味料や添加物に要注意
人工甘味料や食品添加物は、腸内の善玉菌を減少させる可能性があり、腸の働きに悪影響を与えます。
アスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料は、腸内環境に悪影響を及ぼすことが研究で示されています。これらは加工食品やダイエット飲料に多く含まれるため、できるだけ避けましょう。
また、乳化剤や保存料、合成着色料などの食品添加物も腸内細菌のバランスを崩す要因になる可能性があります。コンビニやファーストフードは出来る範囲で避け、添加物の少ないナチュラルフードを選びましょう。
腸活をして自然な排便を
便秘の改善には便秘薬も役立ちますが、腸活による根本的な対策が最も効果的です。まず、腸に良い乳酸菌やビフィズス菌を取り入れ、腸内環境を整えます。次に、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維やオリゴ糖を摂取し、善玉菌を育てます。そして、腸に悪影響を与えるグルテンや人工甘味料、添加物をできるだけ控えることで、悪玉菌の増殖を防ぎ、健康的な腸内環境を保ちます。
腸活は毎日の食事や生活習慣の積み重ねが大切です。便秘薬を一時的な手段として使用しながら、日々の腸活を続けていけば、自然な排便リズムを取り戻し、健康な腸を手に入れることができます。腸を大切にし、長く続けられる腸活を実践していきましょう。
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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