妊婦さんの便秘解消法!
パンパンなお腹をラクにする方法を助産師が解説
中には、放っておくと1週間くらい出ませんなんて強者も。確かに、妊娠中は便秘になりやすい要因はあります。
しかし、妊婦さんみんなが便秘かと言われると、決してそんなことはありません。今回は、妊娠すると便秘で悩む方が多い理由と、その解消法を現役助産師が解説します。
あなたの便秘の原因は?妊婦さんの便秘事情
「妊婦さんの便秘」と言っても、原因は様々。妊娠週数や生活習慣など色々なことが関係しています。
さて、あなたの便秘は何が原因でしょう?代表的な原因を解説します。
1.妊娠中に分泌されるホルモンが腸の動きを緩やかにする
妊娠が成立すると、「プロゲステロン」というホルモンによる影響で腸の動きが緩やかになります。そのせいで便秘につながる可能性も。
プロゲステロンは排卵後に分泌が増えるホルモンです。生理前に便秘になる人も、このホルモンの影響を受けている可能性があります。妊娠初期の妊婦さんたちの中にも「妊娠して便秘が悪化しました」なんて声が多々。
2.つわりの時期は容量不足で便秘になる
妊娠して、多くの方が悩まされるのが「つわり」。つわりの症状は人によって様々ですが、嘔気、嘔吐、食事や水分が摂れないというものが代表的です。
体内に送られる食事や水分の量が減ると、もちろん腸に送られる内容物が減ってしまいます。その結果として、便秘にもなりやすいのです。
3.妊娠による生活習慣の変化も便秘を引き起こす
妊娠すると、生活スタイルを見直そうとする方も少なくありません。生活習慣が変わり、活動量や運動量が減って筋肉が落ちたり、循環が悪くなって腸の活動が低下してしまうと、便秘にもなりかねないでしょう。
妊娠中も適度な運動は大切ですね。
4.子宮が大きくなり腸が圧迫される
胎児が成長する子宮は、膀胱と直腸の間にあります。なんと、お産を迎える頃には、容積が2000〜2500倍に。
子宮が大きくなると、腸を圧迫してしまいます。また、子宮が大きくなり身体の重心が変わると、正しい姿勢を保てなくなることも。結果として、内臓の位置のズレや圧迫が起こり、便秘につながることもあるのです。
妊娠の時期別|妊婦さんの便秘の原因
ただでさえ辛い便秘ですが、妊娠中ともなればなおのこと。何かと不安が多い妊娠中の便秘は、お腹の赤ちゃんのことも心配になってしまいますよね。
妊娠中の便秘は、妊娠の時期によっても症状や原因はさまざまです。
妊娠前のようにいきんでも大丈夫なのか、流産しないかなど、不安に思うこともあると思います。
ここからは、妊娠初期・中期・後期それぞれにおける便秘の原因について詳しく探りながら、妊娠中の「いきみ」についても解説していきます。
妊娠初期の便秘の原因
妊娠初期には、プロゲステロンと呼ばれるホルモンが上昇します。
このホルモンは、妊娠の準備をしたりお腹の赤ちゃんの成長をサポートするために必要なホルモンなのですが、時に腸が便を排出する「ぜん動運動」を鈍らせて便秘の原因となる可能性もあるのです。
また、プロゲステロンが体内に水分を溜め込もうとする働きによって、便中の水分が減少して便が硬くなり、便秘しやすくなるとも考えられています。
妊娠初期は特に、慣れない身体の変化によるストレスや不安も多いもの。こうした、自律神経を乱すストレスも便秘の原因になり得ます。
さらに、妊娠初期は特につわりの症状が重い人もいるため、食事や水分が思うように摂れないために便の量自体が減って便意を感じにくくなることも便秘の原因の一つです。
妊娠中期の便秘の原因
妊娠が進んでくる中期は子宮が徐々に大きくなり、子宮周りの直腸や大腸などの臓器にも圧力がかかることがあります。
この圧力が腸の動きを妨げ、便秘を引き起こす可能性があるのです。
また、ホルモンも引き続きプロゲステロンの値が高いままであるため、腸の動きが鈍くなり、便秘が続きやすい傾向にあります。
つわりの症状が中期以降も続くことがあるため、水分量と食事量の不足による「容量不足」が原因の便秘もまだ起こりやすい時期です。
お腹の赤ちゃんの成長と共に体重も増えて、動きにくさも手伝って運動不足になりがちな中期以降は、さらに便秘がちに。
妊娠後期の便秘の原因
妊娠後期には子宮がますます大きくなり、周囲の臓器への圧力も増えます。この圧力によって便が腸で滞りやすくなり、排便が困難になって便秘の症状が悪化することもあります。
また、貧血のリスクが高まる妊娠後期には、かかりつけ医から鉄分のサプリメントが処方されたり、意欲的に鉄分を補うよう指示があることも。
しかし、鉄分のサプリメントなどによる過剰な鉄分補給は消化器系に影響を与え、腸の運動を遅らせるため、便秘が起こりやすくなることもあるのです。
さらに妊娠後期には、多くの妊婦さんが妊娠初期と比べて食の好みや食生活そのものが変化しやすい時期。
妊娠後期には、お腹の赤ちゃんの成長に伴う食事量の増加や、妊婦さん自身の食欲や好みの変化があります。これによって、食物の消化や腸の動きが変化し、便秘のリスクも高まります。
妊娠後期はこれまで以上に体重の増加や子宮が広がることによる腰・腿の痛みなどが起こり、ますます運動不足になりがちです。
運動不足は腸の動きを鈍らせるだけでなく、便を押し出す際に使う腹筋も弱らせるため、さらに便秘になりやすくなってしまうのです。
パンパンなお腹を解消!8つの妊婦さん向け便秘対策
色々な理由で妊婦さんは便秘になりやすいということが分かりましたね。ここからは、簡単な妊婦さんの便秘解消法について8つご紹介していきます。
1.まずはしっかり「咀嚼」する
とても簡単で今すぐ取り入れられること、それは「よく噛む」ということです。
咀嚼をしっかりすることで唾液や消化酵素の分泌が良くなり、腸の動きが活性化されます。(※1)
便秘の妊婦さんに「しっかり噛んで食事を摂っていますか?」と聞くと、あまり意識して噛んでいないと言われる方が多い印象が。まずはしっかりよく噛んで、食事に時間をかけてみましょう。
2.水分は少量をこまめに摂る
便秘になると、水分をたくさんとるように意識される方も少なくないはず。しかし、妊婦さんの場合、ホルモンの影響で身体に水分を溜め込みやすくなります。
そのため、一度にたくさんの水分をとると、腸に送られずに浮腫みとなってしまうことも。水分は、喉が渇く前にこまめにとるようにするのがおすすめです。
妊娠中の便秘におすすめの飲み物
水または白湯
便秘症状を和らげるためには、まずは水分摂取が効果的です。手軽に飲める水も良いですが、特に身体を冷やしたくない妊娠中は、白湯やぬるま湯がおすすめ。
腸の動きが促進され、便秘症状の改善に効果的です。ただし、一度に飲みすぎると浮腫の原因にもなるため、少量ずつをこまめに飲むよう、水分量を調整しましょう。
プロバイオティクス入りのドリンク
プロバイオティクスとは、腸内環境にいい働きをする善玉菌のことで、ビフィズス菌や乳酸菌がこれにあたります。
このプロバイオティクスが入ったヨーグルトドリンクや乳酸菌飲料などは、腸内の善玉菌のバランスを整えて消化を助け、便秘の緩和が期待できます。
野菜ジュース
野菜ジュースは食物繊維や水分を豊富に含んでおり、便秘症状の緩和に効果的です。特におすすめなのは、緑黄色野菜を含んだ野菜ジュース。ただし、砂糖が使用されていないものでも、野菜ジュースの原材料である野菜や果物に糖が入っているため、飲み過ぎには注意が必要です。
温かいお茶
温かい飲み物は、腸の動きを促進し、便秘を緩和するのに効果的。特にカモミール、ミント、レモングラス、ルイボスなどのハーブティーや温かいお茶にはリラックス効果があり、ストレスや緊張からくる便秘を緩和することが期待できます。ただし、過剰なカフェイン摂取やハーブの種類によってはお腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性もあるため、十分に注意し、場合によってはかかりつけ医に相談しながら飲むようにしましょう。
3.入浴や下着選びで冷え対策をする
絶対に冷えて欲しくない妊婦さん!便秘においても、冷えは大敵です。
血液循環が悪いと、腸の動きも弱くなってしまいます。入浴や半身浴などで身体を温めたり、身に着ける下着の素材や形も気をつけたいところ。締め付けの少ない、自然素材のものがおすすめです。
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4.骨盤を立てて正しい姿勢を心がける
妊婦さんはお腹が大きくなるため、反り腰になりやすくなります。反り腰になると、大腸が正常に機能しなくなり便秘になる可能性が。
お腹が大きくなってきたら、2〜3センチ程度の低めのヒールの靴や、骨盤を支えるベルトやさらしもおすすめです。壁に寄りかかって立ち、頭、お尻、踵を壁につけて立ってセルフチェックができるので、ぜひお試しを!腰の裏に手のひらがギリギリ入るくらいが正常です。
▼ベルト は以下のようなものが売られていますが、選び方や使い方がわからない方は助産師や医師に相談すると安心です
5.ヨガや操体法で凝りや歪みを改善する
上記のような反り腰がひどくならないためにも、調整のための適度な運動は大切ですね。実は、一般的には妊娠しても大きな運動制限は特にないものです。しかし、安定期に入るまでの時期や、お腹の張りが気になるときはあまり激しい運動はお勧めできません。
足の裏への振動の少ない運動であれば、比較的お腹が張りにくく安心して取り入れることができます。ヨガや骨盤を整える操体法などのストレッチも、便秘対策におすすめです。
妊婦さん向けのクラスなどであれば安心して受けられます。
6.マッサージやツボ押しで腸を刺激する
お腹や腰を痛みを感じない程度に優しくマッサージすると、刺激が大腸に伝わり蠕動運動が促されることもあります。(※2)
お腹を時計回りに「の」の字を描くようにグルグルとマッサージしたり、腰を上下にさするなど、簡単にできるので、ぜひ試してみて下さい。また、便秘に有効なツボも沢山あります。妊婦さんでも比較的圧迫しやすいツボは、神門(しんもん)、湧泉(ゆうせん)、大腸兪(だいちょうゆ)などがあります。(※3)
ご自身でされるのが不安な場合は、無理せず助産師さんに相談してみましょう。
神門(しんもん)
神門(しんもん)は、妊娠中の便秘に効果的なツボの一つ。
神門は、手のひらを上に向けたときに親指と人差し指の骨ができる隙間、つまり親指の付け根の手首部分にあります。
指圧方法としては、神門に適度な力で指を押し当てます。軽くマッサージするような感覚で、数分間、徐々に力を加えて刺激してみましょう。
神門を指圧するときは、時計回りに小さな円を描くように指を動かすのもオススメです。
また、マッサージボールやツボスティックを使用して神門を刺激することも効果的。適度な圧力をかけて、神門の部分を軽くマッサージしてみましょう。
湧泉(ゆうせん)
湧泉は足の裏にあり、足の指を曲げた時に人の字ができるように最もくぼむ部分で、足裏の真ん中から少し上あたりにあります。
湧泉を刺激するには、まず足の裏を見るようにして座ります。両手の親指を重ねてツボに置き、足先に向かって押し上げるように刺激をします。
湧泉は全身の血行の改善、体のだるさ、足の冷え、不眠にも効果があるとされ、万能のツボとも呼ばれている場所。気持ちを落ち着けてくれる効果も期待できるので、ぜひゆったりと呼吸しながらマッサージを行なってみてくださいね。
大腸兪(だいちょうゆ)
大腸兪は、背骨と左右の骨盤のラインが交わるところにあります。 背骨に沿って親指で上から下にたどっていき、骨盤とぶつかる左右のポイントを探すようにするとわかりやすいですよ。
ツボを見つけたら、体の中心に向かって押してみましょう。
とりわけ便秘に効くツボとして知られ、腰痛などにも効果が期待されているツボです。妊娠中は腰痛に悩まされることも多いので、このツボを覚えておくと良いでしょう。
妊娠中の便秘に効果的なツボをご紹介しましたが、妊娠中は体調が変わりやすかったり、痛みの感じ方が変わったりすることもあるナイーブな時期です。ツボを刺激する際にはできるだけ無理のない範囲で優しく行い、痛みや違和感を感じた場合は刺激をやめて医師や助産師さんに相談するようにしてくださいね。
7.食事で腸内環境を整える
長い目でみたときに、やはり要になるのは食生活。つわりの時期を過ぎたら食事内容を見直しましょう。
便秘解消のためには、腸内の菌のバランスを整えることが大切です。(※4)
発酵食品や水溶性食物繊維を意識して摂るようにしましょう。簡単に毎日の生活に簡単に取り入れることができる「ごぼう茶」もお勧め。身体をあたためてくれる働きもあり、母乳の分泌にもよいとされています。
8.サプリメントで腸内環境を整える
妊娠中の便秘改善・予防のためには水分補給と栄養バランスの摂れた食事、そして適度な運動によって腸内環境を整えることが大切です。
しかし体調変化の激しい妊娠中は、つわりや体調不良などでなかなか食生活・生活習慣の改善が難しいこともありますよね。
栄養が不足しがちな妊娠中。自分やお腹の赤ちゃんのためには食べないといけないと分かっているのに、身体が受け付けない…そんな悩みは妊婦さんならではかもしれません。
無理にあれもこれも食べて、結局具合が悪くなってしまうようでは、本末転倒ですね。
そんな時は、腸内環境を整える栄養素や乳酸菌などをサプリメントで補うのもおすすめです。
サプリメントであれば、食事から栄養を摂るよりも手軽。効率的に摂りたい栄養をピンポイントで摂ることができてハードルも下がりますね。
腸内環境を整える栄養素はもちろん、葉酸やビタミンDなど、胎児の健康な発育に役立つ栄養素もサプリメントで摂ることができますので、ぜひチェックしてみてください。
9.医師に相談して薬を使う
色々試しても便秘が解消されない時は、医師に相談して薬を処方してもらうこともできます。漢方、緩下剤、下剤など、妊婦さんでも使えるものもあるのです。
しかし、薬剤を使って一時的に便秘が解消されても、根本的な解決にはなりません。セルフケアと合わせて取り入れるようにしましょう。
更なるトラブルに?こんな妊婦さんの便秘は注意が必要
便秘を解消したい理由は、お腹が苦しいという症状だけにとどまりません。実は、便秘が原因でさらに大きな症状が出ることも。ここからは注意したいケースをご紹介します。
1.便秘が原因で痔になることがある
妊婦さんは、妊娠していない時に比べて身体を巡る血液量が増えます。そのため、トイレで同じ姿勢をとったり、いきんだりすると、肛門や直腸の静脈がうっ血しやすくなってしまいます。実際に、便秘が原因で痔になってしまう妊婦さんも少なくありません。
2.便秘が原因でお腹が張りやすくなる
37週未満でお腹が張ったり出血するなど、お産の兆候があることを「切迫早産」といいます。便秘でいきんだからお産が早まるということはありませんが、便秘になるとお腹の張りを感じやすくなり混同してしまうこともあります。
「お腹が張りやすいんです」と受診されて、便秘によるお腹の張りだった…ということも。
3.便秘が原因で出血することも・出血があるときはかかりつけ医に相談を
便が硬いと、排便時に肛門や直腸付近の血管が傷つき出血してしまうことがあります。
出血があったときには、慌てずまず赤ちゃんの胎動と、周期的なお腹の張りや痛みがないかチェックしてみましょう。出血の量が多いときや、持続して出血があるときは、かかりつけ医へ連絡をしてくださいね。
いきんでも大丈夫?赤ちゃんへの影響は?
妊娠中にトイレでいきむと、流産など赤ちゃんへの影響が心配になりますよね。
一般的に、便秘でいきむことが流産の直接的な原因になることはないとされています。しかし、強くいきむとお腹への圧力(腹圧)がかかってしまうため、子宮が収縮して切迫早産のリスクが高まることもあります。また、妊娠後期の場合は、強くいきむことで破水の可能性も。特に切迫早産の方や妊娠後期の方の場合は、強くいきむことや長時間いきむことは避けた方がよいでしょう。
そこまでいかなくとも、強くいきむことを繰り返すと、痔の原因にもなりますので長い時間トイレでいきむことを習慣化しないよう心がけましょう。
便秘が日常化・重症化しないよう、普段からスムーズな排便ができる習慣を目指したいですね。
妊婦さんの便秘はお産や産後にも悪影響!目指せスッキリ快便習慣
様々な理由で便秘になりやすい妊婦さん。しかし、決して便秘になるのが当たり前ではありません。そして、実は便秘はお産の進行の妨げになったり、子宮の戻りにも悪い影響を与える可能性があります。
ぜひ今のうちから生活習慣を見直し、腸内環境を整えて、便秘知らずの快適なマタニティーライフを過ごしましょう!
参考文献:
(※1)食べ物をよく噛むと、なぜおなかにいいの?意外と知らない咀嚼の重要性|BifiXヨーグルトマガジン
(※2)米田 由美子, 岡崎 久美, 飯田 百合子, 土井 二三子, 清水 恵子, 曽根 清美, 深井 喜代子,腹部マッサージが腸音と排便習慣に及ぼす効果
(※3)井澤理恵,耕麻記,松崎由美,飯島さく子,入院妊婦の便秘の現状とつぼ刺激による排便状態の変化-便秘評価尺度を用いて
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
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