つわりがある妊娠初期、食べ物選びのコツを現役助産師が紹介!
たくさんの妊婦さんが経験するつわり。今回は、つわりの時期を乗り切るためのコツや、つわりが落ち着いた後の栄養やポイントなどを現役助産婦ライター・増田がご紹介していきます。
つわりで食べ物選びが難しい…気になる妊娠初期の赤ちゃんへの栄養
妊娠5〜6週ごろから出てくるつわり。その症状は人それぞれです。日によって症状も軽い時と強い時があったり、1日の中で変動があることもしばしば。
つわりによる吐き気などで、食欲がなく食べられない…といったこともあるのではないでしょうか?
バランスの良い食事が何日も摂れていないとなると、お腹の赤ちゃんに必要な栄養が届いているのか気になるところ。
しかし、赤ちゃんの栄養源となる胎盤が出来上がるのは妊娠16週頃です。そのため、この時期の赤ちゃんは、お母さんから送られてくる栄養がなくても成長することができるのです。
なので一時的につわりで食欲が落ちていても、そこまで心配することはありません。主治医や担当の助産師に相談しながら様子を見ていってくださいね。
妊娠初期のつわりはなぜ起こる?栄養不足にならない?
妊娠によって起こる悪心・嘔吐などの消化器症状を中心とするつわり。原因ははっきりとは分かっていませんが、妊娠に伴うホルモンや代謝の変化、そして精神的な変化などが関係していると考えられています。
妊婦さんの半数以上が経験する症状で、生理的なものなので大きな心配はいりません。胎盤が出来上がる12〜16週頃に自然に軽くなっていくでしょう。食事に関しても、この時期は「食べたいときに、食べたいものを、食べられるだけ」が基本です。
つわりがある時におすすめの食べ物と食べ方&豆知識!
いつもは楽しい食事が苦痛。でもそんなつわりの症状は、赤ちゃんが育っているサインでもあります。ここからは、つわりの期間を元気に乗り切るためのコツをご紹介します!
1.いつも飲み物や軽食を携帯しておく
1日の中でも、症状に変動があることが多いつわり。朝、昼、夜、症状が強く出る時間帯は人それぞれです。
空腹になると症状が悪化することが多いため、バッグの中やベッドサイドなどに、手軽に飲めたり食べることができるものを準備しておくのがおすすめ。また、急に吐き気が出てしまった時のため、空のペットボトルや消臭効果のあるエチケット袋も一緒に携帯しておくと便利です。
2.1日3食という考えを捨てる
つわりがある時の食事は「食べたいときに、食べたいものを、食べられるだけ」が基本です。
「規則正しく3食摂らなければ!」と思う気持ちが、精神的な負担やストレスになってしまうこともあります。リラックスして、普段食べないようなものでも好きなタイミングで食べたいと思うものを摂りましょう。
つわりはあくまで妊娠初期の一時的なもの。普段と食事のペースが変わっても心配しすぎないでくださいね。
3.水分は味のついたものが摂りやすい
つわりの時期は、基本的には無理して食べたり飲んだりする必要はありません。
しかし、体重減少や脱水が著しい場合は、入院が必要になることも。固形のものを食べることが難しい場合でも、少量の水分を摂ることができていると安心です。
酸味や甘味などの味がついていたり炭酸だと飲めることもあるため、試してみましょう。白砂糖の摂り過ぎは良くないので、ノンカフェインのお茶や無糖の炭酸水、フルーツウォーターなどがよいかもしれませんね。
4.果物なら不思議と食べられることも
食事は摂れなくても、果物なら食べられるという方もいらっしゃいます。果物は水分量が多いため、脱水予防という点でも有用です。
重症のつわりで入院される方も、食欲が出てきたらまずは果物から試したりします。人によって「これなら大丈夫」というものが違うため、色々試してみるのがおすすめです。
5.主食は工夫して食べよう
身体のエネルギー源となる炭水化物。炭水化物は、調理法や形態、温度、食感を変えるだけで食べられることもあります。
ご飯であれば、おにぎり、おかゆなどに変えてみたり、麺であれば温かいものや冷たいものなどを試してみるのがおすすめです。味付けや匂いは少ないものの方が、食べやすいと感じる方が多い印象です。
6.知っておきたい「つわりに効くツボ」
妊婦さんの中には鍼灸で症状が緩和される方もいらっしゃいます。実際に印堂や内関などのツボ刺激がつわりの症状に有効であるというデータも。(※1)
印堂
眉間の中央にあるツボ。ストレスや緊張緩和の効果が期待できる。
内関
手のひらを上に向けたとき手首のしわから指3本分肘側にあるツボ。精神を落ち着けて自律神経を整える作用がある。
ツボを刺激する際は、深く呼吸することを意識するとより効果的だと言われています。
また、鍼灸院に行かなくても自宅でできる鍼シールやツボ押しバンドなど、ツボ刺激グッズもあります。簡単なので一度試す価値ありですね。
とはいえ初めてだと使い方が難しいこともあるので、鍼灸師さんや助産師さんに相談のうえで、ご自身に合ったものを検討されるとよいでしょう。
7.香りを味方につける「吐き気がある時におすすめのアロマ」
アロマと聞くとリラクゼーションをイメージされる方も多いと思いますが、意外と医療の現場でも活用されています。妊娠中は使用できない精油もあるため注意が必要ですが、上手に使うとつわりによる気持ち悪さの緩和につながる事も。
フレッシュな香りのグレープフルーツや、レモンなどの芳香浴がおすすめです。
▼オーストラリアのアロマブランド『Perfect Potion』は素材にこだわり、天然の良質なエッセンシャルオイルを販売しています。
こんな時は医師に相談しよう
多くの場合は自然に軽快していくつわりですが、稀に重症化する方も。
妊娠前の体重から5パーセント以上の体重減少があり、口から水分を摂ることができない時は「妊娠悪阻」と診断され、治療が必要になります。日常生活がままならないほどの症状があるときには、かかりつけ医に相談しましょう。
つわりがなくなってきたらコレを食べよう!妊娠初期におすすめの食べ物
つわりが落ち着いてきたら「バランス良く」が妊娠初期の食事の基本です。ここからは意識していきたい栄養などをご紹介していきます。
1.葉酸で赤ちゃんの神経管障害を予防
葉酸は、妊娠前から妊娠3ヶ月まで食品からの摂取に加えて、サプリメントにより日当たり0.4mg(1.0mg /日未満)摂取することが推奨されています。(※2)
葉酸の摂取は胎児の神経管閉鎖障害予防で良く知られていますが、早産や胎児発育不全、上位胎盤早期剥離などの産科合併症のリスクを減少させる可能性も報告されているのです。(※3)
食べ物では、海苔、ブロッコリー、えだまめ、ほうれん草、キヌア、きなこ、などに豊富です。妊娠初期は積極的に取り入れていきましょう。
2.豚肉の豊富なビタミンB1・マルチビタミンはつわり対策にも
マルチビタミンはつわりの予防効果があるとされています。ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、葉酸、ミネラルなどを含んだ「妊婦用マルチビタミン」を受精前から服用するのが有効だという報告もあるそう。(※4)
また、このうちのビタミンB1、B6は妊娠悪阻の治療薬としても使用されています。しかし、健康で通常の食事がとれている場合は特にサプリメントなどで補う必要はないとされています。
ビタミンB1を含む食べ物:豚ヒレ肉、豚モモ肉、うなぎ、など
ビタミンB6を含む食べ物:まぐろ赤身、にんにく、鶏むね肉、鮭、焼き海苔 など
3.玄米、そば…「茶色い炭水化物」でエネルギーを摂ろう
妊娠すると、妊娠していない時に比べ必要なエネルギー量が増加します。初期では+50kcal程度ですが、後期になると+450kcal必要にも!(※5)
一方で、脂質の必要量は妊娠全期を通して変わらないため、エネルギーは主食で補うようにしましょう。主食を選ぶ時のポイントは、白く精製されたものでないものを選ぶようにするのがおすすめです。
例えば玄米や蕎麦は、炭水化物以外の栄養素も豊富で妊娠中以外も日常的に摂りたい主食ですね。
4.鉄分で貧血予防しよう
妊娠すると、血液が薄まり貧血になる方が増えます。そのため、妊娠初期から食べ物で鉄分を補うことが大切です。サプリメントなどの使用もできますが、便秘や下痢などの消化器症状が起こることも多いため、できるだけ食事で補っていきましょう。
鉄分を含む食べ物:レバー、牛もも肉、あさり、かつお、ほうれん草、小松菜 など
5.発酵食品と食物繊維で便秘対策をしよう
妊娠すると多くの方が悩まされる便秘。これは妊娠による色々な変化に伴うものです。便秘になるとそれに伴う弊害も出てくるため、予防や対策をしておくことが大切です。
便秘対策としてできることはたくさんありますが、腸内の環境を整えていくのが便秘知らずの体づくりのための一歩です。
腸内環境を整えるためには、善玉菌のバランスを増やすことが大切。発酵食品などで積極的に「菌を取り入れる」ことを意識しましょう。
代表的な発酵食品:納豆、味噌、キムチ、醤油、甘酒、ぬか漬け など
▼妊婦さんの便秘についてはこちらも参照
妊娠初期・つわりの時期に気をつけたい食べ物と習慣
妊娠全期間を通して必要な栄養素もあれば、それとは反対に注意したいものもあります。ここからは気をつけていただきたいことをご紹介していきます。
1.食中毒
妊娠中は消化機能や免疫機能が低下することもあり、いつもなら何ともないものに対しても敏感に反応したり、感染してしまうことがあります。
そのうちの1つがリステリア菌。スモークサーモン、ナチュラルチーズ、生ハムなど、加熱殺菌されていない物を食べることで感染すると言われています。妊娠中はしっかりと加熱処理するようにしましょう。
2.魚介類(水銀)
魚に含まれる水銀が一定量を超えると、胎児に影響があると考えられています。食物連鎖の関係で、大きな魚であればあるほど含まれている水銀の量が多い傾向が。
魚にはたくさんの栄養素が含まれており良質なタンパク源でもあるため、上手に取り入れるようにしましょう。
水銀の注意が特に必要でないもの:キハダ、ビンナガ、メジマグロ、サケ、アジ、サバなど(※6)
厚生労働省のサイトでも、詳しく解説されています。
3.カフェイン
妊娠中はカフェインの代謝が低下すると言われており、日当たり300mg未満にすることが勧められています。(※7)
また、鉄の吸収を妨げてしまうため、飲むタイミングに注意が必要です。食事の前後すぐは避けるようにしましょう。
カフェインレスコーヒーやタンポポコーヒー、ハーブティーなど、代用できるものもあるためぜひお試しを!
▼カフェインを抜く作業工程で薬剤を使っておらず、安心。カフェインレスでもしっかりコーヒーの味がするカフェインレスコーヒーです
▼タンポポの根からできた、やさしい味わいのタンポポコーヒー
▼ラズベリーリーフティーは安産のお茶とも言われています
4.タバコ・お酒
タバコもお酒も赤ちゃんにとって百害あって一利なしです。アルコールは少量でも胎児に低体重や形態異常、脳障害などを引き起こす可能性があります。
タバコも流産、早産、周産期死亡の増加、低出生体重児出産につながると報告されています。(※8)
喫煙や飲酒の習慣がある方は、1日でも早くストップを。習慣になっていると少し辛いですが、赤ちゃんと一緒に健康な身体づくりを頑張りましょうね。
5.赤ちゃんのアレルギー(除去食)
お子さんのアレルギーを気にして、特定の食べ物を全く口にしない「除去食」を試みる方もいらっしゃいます。しかし、妊娠中の除去食が、お子さんのアレルギーの予防になるという因果関係はまだ明確にされていないようです。
最近では、お子さんのアレルギーは腸内環境が関係しており、最初に触れる母体の腸内環境が影響しているとも考えられています。(※9)
そう思うと、妊娠中から腸内環境を整える取り組みをしてみても良さそうですね。
▼腸活のキホンについてはこちら
つわりが落ち着いたら快適に!食べ物は楽しくバランスよく
妊娠初期は、体調が思わしくなく想像していたマタニティーライフと違うと感じている方も少なくないと思います。
しかし、捉え方や過ごし方によっては、この時期を前向きに過ごすことができるかもしれません。今身体に起こっていることを知り、色々なことを試しながら、少しでも快適に過ごしていただけると嬉しいです。
そして、つわりが落ち着いたら母子共に健康的なマタニティーライフを送れるように食事や生活に目を向けていきましょう。
参考文献:
(※1)KAKEN — 研究課題をさがす | つわり症状のある妊婦へのツボ刺激の有効性 (KAKENHI-PROJECT-17659686)
(※2)葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(※3)一般社団法人 日本助産学会 ガイドライン委員会.「エビデンスに基づく助産ガイドライン−妊娠期・分娩期2016.日本助産学会誌 30巻.p20−22
(※4)一般社団法人 日本助産学会 ガイドライン委員会.「エビデンスに基づく助産ガイドライン−妊娠期・分娩期2016.日本助産学会誌 30巻.p24
(※5)ママのための 食事BOOK 発行:株式会社日本総合研究所 監修:岡本正子(管理栄養士) 編集:株式会社赤ちゃんとママ社
(※7)一般社団法人 日本助産学会 ガイドライン委員会.「エビデンスに基づく助産ガイドライン−妊娠期・分娩期2016.日本助産学会誌 30巻.p40−42
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
X : @yutaka_shimo