掲載日 | 2023.10.25
更新日 | 2023.10.25

「防腐剤フリー」「パラベンフリー」の本当の意味・メリットを徹底解説

掲載日 | 2023.10.25
更新日 | 2023.10.25
化粧品でよく見かける、「防腐剤フリー」や「パラベンフリー」の表示。

その言葉だけ見ると、「防腐剤もパラベンも肌に良いものではないので、入れずにフリーにした」という印象を与えます。

しかし実際はどうなのでしょうか?

化粧品の広告では、製品をよく見せることが目的。そのため本当の意味が見て取れないこともあります。

今回はフラットな視点で、防腐剤について考えてみましょう。

パラベンフリーとは?【パラベンは防腐剤の中の1種】

「パラベンフリー」と書いてあるとなんだか肌に優しそう。
でも実際パラベンがどんな成分なのか、実はあまりご存じない方も多いのではないでしょうか。

まず「パラベン」とは防腐剤の中の1種で、化粧品業界の中で古くから使用されており、歴史があります。そしてパラベンとひとことに言っても、その中でも種類があるのです。

例えばメチルパラベン・エチルパラベンは主に水系(化粧水など)に用いられます。プロピルパラベンは油溶性基材(クリームなど)向けに。
それぞれ働きや相性のよい基材が異なります。

パラベンは防腐剤の一種なので、「パラベンフリー」=防腐剤が全く入っていない、というわけではないのですね。

防腐剤フリーとは?【防腐剤にも色々な種類がある】

防腐剤とは、「ポジティブリスト」に収載されており、配合上限が規制されているものになります。

ポジティブリストとは、化粧品基準で定められている防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素の中で、化粧品への配合が可能な成分とその配合制限量をまとめたリストのこと。

一方、「ネガティブリスト」といって化粧品に配合不可なものをまとめたリストもあります。

つまり「防腐剤フリー」とは、このポジティブリストに収載された成分は使用されていない、ということになるのです。

ポジティブリスト・ネガティブリストとは

それではポジティブリスト・ネガティブリストとは、何のためにあるのでしょうか。

簡単に言いますとポジティブリストは、「これらの成分は多量に配合すると肌に悪影響がある可能性が高くなるため、上限を決めました」というリスト。

対してネガティブリストは、「化粧品として連用するのには肌や人体に悪影響があるので、配合を禁止します」というリストです。

なぜポジティブリスト/ネガティブリストがあるのか?

化粧品の歴史は、とても古く飛鳥時代からとも言われています。一般の方にも使われるようになったのは江戸時代頃からだとか。

その当時は肌を白くするのに、白粉を使っていました。ただその白粉には、大量生産しやすく、伸びが良い鉛が配合されていたそうです。

鉛は有毒です。化粧品の歴史は、人体に塗布するものであるが故に、そういった負の側面と戦ってきたものである事も事実なのです。

そこで、配合してはいけない成分・配合しても良いが量は規制すべき成分が長い年月を掛けてまとまったものが、これらのリストになります。

ポジティブリストって必要?何のため?

配合してはいけないネガティブリストがあるのは十分理解出来ますが、では配合制限があるポジティブリストってなんでしょう。

「たくさん入れると悪影響と分かっているなら、少しも入れなければ良いのでは?」と思われると思います。

そのポジティブリストに載っているのが、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素です。
これらは化粧品の品質を保つためや、日焼け止め効果、メイクアップ効果のために重要な役割がある成分。

つまり「化粧品として入れるメリット、使う必要・需要があるけど、大量にいれては良くない(主に刺激等がある)ので、上限を決めます」というリストになるのです。

防腐剤フリーとは【防腐剤フリー化粧品って腐るの?】

ここまでの流れで、「パラベンフリー」は「防腐剤の中の1種のパラベンを使っていない」という意味なので、「つまり他の防腐剤を使っているのかな?」と思われたと思います。

それでは「防腐剤フリー」は、「何も防腐剤が入っていないということだから、腐るのか?」と不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。

化粧品が腐ってしまうと、防腐剤の刺激がどうという以前の問題になります。「腐る」という言葉の定義自体、人体に害のある菌が大量発生している状態を示しますので、菌が人体に害のある副生成物を作った状態に変わっている可能性が高いです。

その状態になってしまうと、どんな製品であっても使う価値はないでしょう。

それでは実際の「防腐剤フリー」の化粧品は、腐らないためにどうしているか?パターンは下記の3つです。

1.防腐剤として登録されていない(ポジティブリストに載っていない)が、抗菌作用がある原料を入れる

もっとも多いのがこのパターンです。

化粧品原料では防腐剤として登録されていない(ポジティブリストには収載されていない)が、抗菌作用がある原料がいくつかあります。その場合、防腐剤ではないので、薬機法上も抗菌効果等を表記する事も出来ません。

そのため表記としては、防腐効果があるものは何も入っていないように見えるのです。

ただし防腐剤として登録されていないからと言って、無刺激という訳ではありません。菌を殺す力があるのですから量が多ければ、多少の影響はあると考えて良いでしょう。

こういった成分についてはパッチテストや細胞毒性試験などで原料の配合上限等を設定し、むしろ規制されていないからこそ注意深くメーカー側では確認が重要となります。
どの成分が抗菌効果を促しているかや肌への影響がどうかなど、きちんと検証できているかに企業のスタンスが現れる点でしょう。

2.そもそも水が含まれていないので、腐らない。(オイル、ミネラル系のパウダーなど)

化粧品の種類によっては、防腐効果のあるもの自体が全く入っていない場合もあります。

菌が生きるのにはそもそも水が必要ですので、水がまったく含まれていない製品であれば、菌がそこで増えることはありません。(パウダー類の場合は、肌につけたパフで菌が発生することがあるので注意が必要ですが。)

3.菌が入らないような滅菌ルームで生産し、1度で使いきれる量の小分けボトルに入れる

小さなボトルで1回使い切り分ごとに分かれている商品も、見たことがあるのではないでしょうか。
減菌ルームで生産され、開封後にすぐ使用されるのであれば腐る心配がありません。ただ開封前であっても使用期限はあるので注意が必要です。

また、小分けにする分コストが上がりやすい事、1回ずつの個包装となるのでエコではないといったデメリットもあるので好みは分かれますね。

防腐剤は「ないほうがいい」のか?

防腐剤がすべて悪かというと、そうとは言い切れない部分はあります。品質を守るために必要なものという一面もあるためです。

菌の観点から言うなら、肌にはそもそもたくさんの常在菌がおり、化粧品をつけることで少なからず影響を受けると考えられています。防腐剤や抗菌効果があるものを塗布することで、肌の細菌叢が影響を受ける可能性はあると考えて良いでしょう。

全て避けましょうというものではないですが、肌への影響は知ったうえで自分に合ったものを探していくことが大切です。

防腐剤は化粧品を何の菌から守る?保存効力試験

そもそも化粧品に防腐剤を入れることで、何の菌から化粧品を守っているのでしょうか。

日本薬局方(JP)、United States Pharmacopoeia(USP)、European Pharmacopoeia(EP)、中国薬局方(PPRC)、ISO 11930などで各種設定がされておりますが、化粧品の保存効力試験では、通常、下記の5菌種を主として確認しています。

【細菌】

Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Escherichia coli(大腸菌)、

Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)

【酵母】

Candida albicans(カンジダ菌)

【カビ】

Aspergillus niger(クロコウジカビ)

これらの細菌達が化粧品の中で増殖するのを防ぐために入れているのが、防腐剤です。

これらの細菌達は、肌の常在菌の分類としても悪玉菌と言えるカテゴリーで、異常に増えないように注意したい菌種達となります。

また防腐剤と一括りに言っても、この菌を減らすのは得意だけれど、この菌は減らせないという得意不得意があります。
さらに化粧品のベースによっても、効果が出る出ないが変わってくるのです。
どんな防腐剤でも、入ってさえいれば何の菌でも減らしてくれる…、というわけではないのですね。

正しい情報を知り誠実な化粧品メーカーを見極めること

ここまでの背景をふまえてメーカーは、出来る限り以下の点に注意して防腐剤を選ぶことになります。

  • 肌に刺激が起きにくい(細胞毒性が低い)
  • 主に悪玉菌の増殖を減らし、善玉菌は減らさない

理想的な防腐剤がないかを探索し、製品によっては防腐剤以外の部分の配合で効果を補うことも。(pH調整や、刺激を緩和する成分、善玉菌を応援する成分の配合検討など)

その部分にどれだけ検査や検討を行っているかは、化粧品メーカーのスタンスの見せどころとも言えるでしょう。

防腐剤のホントのところを知っていると、成分がどのような意図で使われているのかイメージがつきやすくなりますね。

消費者の皆さんは「化粧品と肌と菌の切っても切れない関係」を総合的に見て、言葉だけには振り回されず、時には自分のお肌でジャッジして…。ご自身のお肌に合う商品を、選んでいっていただければと思っています。

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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