腸内環境の改善でうつ病が緩和?腸活で幸せホルモンを増やす方法
「腸活」という言葉を聞いたことはありますか?腸内環境を整えることで全身の健康を促進するこの概念は、特にうつ病やメンタルヘルスの問題に悩む人々にとって、革新的な解決策を提供しています。
腸と脳は予想以上に密接に関連しており、腸内環境の改善がうつ病の症状を軽減することにつながる可能性があるのです。
この記事では、腸活を通じてメンタルヘルスをサポートする方法について深掘りし、あなたの日常生活に簡単に取り入れられる実践的なアドバイスを提供します。
うつ病とは
うつ病は、世界中で多くの人々が経験する精神的な疾患の一つで、慢性的な悲しみ、無力感、興味や喜びの喪失などの特徴があります。
この状態は単なる一時的な悲しみや通常の生活の変動を超え、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
うつ病の影響を受ける人々は、エネルギーの低下、睡眠の問題、食欲の変化、集中困難、自己価値の低下など、さまざまな症状に悩まされることがあります。最も深刻な場合には、自殺念慮や自殺行為に至ることもあり、これはうつ病の最も悲しい側面の一つです。
うつ病は、個人の心理的な健康だけでなく、身体的な健康にも影響を及ぼします。そのため、心身の健康を一体として考えるアプローチが重要であり、多くの専門家が腸内環境とメンタルヘルスの関係に着目しています。うつ病に対する理解を深めることは、治療法の選択や日々の生活での対処方法を考える上で不可欠です。
うつ病になる原因
うつ病に至る原因は多岐にわたり、身体的な要因と環境的な要因に大別することができます。これらの要因は互いに影響を及ぼし合い、個人の精神状態に深刻な影響を与える可能性があります。
身体的な要因
うつ病はしばしば、脳内のセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質のバランスの崩れと関連しています。これらの化学物質は、気分や感情を調節する重要な役割を果たしており、その不均衡がうつ病の症状を引き起こす可能性があります。
うつ病は家族内で発生することが多いことから、遺伝的素因も重要な役割を担っていると考えられます。特定の遺伝子がうつ病のリスクを高める可能性があり、家族歴がある人はうつ病になりやすいことが示されています。
他にも、ホルモンバランスの変化もうつ病のリスクを高める可能性があります。出産後のホルモン変動や更年期、甲状腺疾患などがうつ病の原因となることがあります。
環境的な要因
職場のストレス、家庭内の緊張、お金な悩みなど、長期間にわたるストレスが多い環境は、うつ病を引き起こす主要な要因の一つです。
また、過去のトラウマや親しい人の死、失業などの悲しい出来事は、うつ病の発症に大きく寄与します。
不規則な生活習慣、不健康な食事、運動不足なども、うつ病のリスクを高めることが知られています。
幸せホルモン「セロトニン」が大きく関係
うつ病の原因は多岐にわたりますが、セロトニンという神経伝達物質が大きく関わっているとされています。セロトニンは、脳内で「幸せホルモン」や「気分を安定させるホルモン」としても知られており、気分、感情、睡眠、食欲など多くの脳の機能を調整しています。そのため、セロトニンの不均衡は気分の低下、不安感の増大、睡眠障害や食欲不振など、うつ病の典型的な症状に直結することがあります。
脳内でセロトニンが神経細胞間で情報を伝達した後、通常は発信元の神経細胞によって再取り込まれます。うつ病の治療に使われる一般的な薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)は、このプロセスをブロックすることによって、脳内のセロトニンの量を増やし、結果として気分を改善します。
統合失調症、パーキンソン病にも関係が
セロトニン不足は、うつ病だけでなく他の神経精神疾患にも関係していることが研究で分かってきました。
例えば統合失調症では、セロトニンの働きを遮断する作用のある抗精神病薬を投与することで、統合失調症の陰性症状が改善することが見られました。(※1)
パーキンソン病では、ドーパミンというホルモン以外にもセロトニンが減少することが分かっています。セロトニンが減少することで、イライラしたらり気分が落ち込みやすくなります。ドーパミン治療でもなかなか気分が優れない時は、セロトニンをを増やす治療を行うことで、症状が緩和しやすくなります。
どちらもセロトニン不足が主要な原因ではありませんが、症状の一部に寄与している可能性があります。
自閉症にも関係がある?
ASD(自閉スペクトラム症)患者の中には、セロトニンの代謝や受容体の機能に異常が見られるケースがあり、これがASDの一部の行動的特徴や症状に影響を及ぼしていると考えられています。
マウスモデルを用いた実験では、ASDに類似した行動特性を示すマウスにセロトニンまたはセロトニンシステムを活性化する薬剤を投与することで、社会性の向上や反復的な行動の減少など、ASD様の症状が緩和されることが報告されています。これらの結果は、セロトニンシステムがASDの症状の発現において重要な役割を果たしている可能性を示唆しています。
しかし、これらの研究結果を人間に直接適用するには、さらなる検証が必要です。マウスモデルでの実験は有用な洞察を提供しますが、人間のASDと完全には異なる可能性があります。また、セロトニン不足がすべてのASD患者に当てはまるわけではないため、個々の患者に対する治療法の選択には慎重さが求められます。
うつ病と腸内環境の関係
うつ病と腸内環境の関係についての研究は、まだ発展途上の分野ですが、近年注目を集めています。
腸内環境とは、私たちの消化管内に生息する微生物群のことを指し、この微生物群は「腸内フローラ」または「マイクロバイオータ」とも呼ばれます。腸内フローラは、栄養素の吸収、免疫系の調節、さらにはセロトニンなどの神経伝達物質の産生に至るまで、私たちの健康に幅広い影響を与えています。
うつ病患者における腸内環境の乱れとセロトニン不足との関係については、以下のようなメカニズムが考えられます。
セロトニンの合成
セロトニンは脳内だけでなく、腸内でも合成されます。実際、体内のセロトニンの大部分は腸内で生産されています。腸内フローラのバランスが崩れると、腸内でのセロトニンの合成が低下する可能性があり、これが脳のセロトニンレベルに間接的に影響を及ぼし、気分の落ち込みを引き起こす可能性があります。
炎症の役割
腸内フローラの不均衡は、体内の炎症を引き起こすことがあります。炎症性サイトカインの増加は、脳機能に悪影響を及ぼし、セロトニンの代謝に影響を与える可能性があります。
ストレス応答
腸内フローラの乱れは、ストレスホルモンのレベルを変化させることがあります。ストレスホルモンの異常は、脳のセロトニンシステムに悪影響を及ぼし、結果として気分の低下を引き起こす可能性があります。
このように、腸内フローラの乱れがうつ病の発症や悪化に関与する可能性がありますが、この関係は複雑であり、現在も多くの研究が行われています。
うつ病の人に過敏性腸症候群で悩む人が多い
うつ病と過敏性腸症候群(IBS)の間には顕著な関係があることが分かっています。(※2)
一部の調査では、精神疾患がない人の過敏性腸症候群の発症率は1割だったのに対し、うつ病の人の発症率は3割だったそうです。
うつ病の人の腸内は、軽い炎症が起きていることが多く、それによって腸の感覚が過敏になり、腹痛などを引き起こすと考えられています。身体の中で炎症が起きると、気分的に落ち込んだり、だるさや、やる気のなさが起きやすくなってしまいます。
実際、うつ病の人の腸内は、ビフィズス菌などの善玉菌が少なく、海外では抗うつ薬とプロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌を用いた発酵食品など)を併用すると、併用していない場合よりもうつ症状が改善したという報告もあります。
腸内環境を改善する方法
気分の落ち込みやだるさにも関わってくる腸内環境。では、腸内環境を改善していくには、どうしたらいいのでしょうか。
KINS LABO的おすすめ腸活方法
KINS LABO的おすすめの腸活方法をご紹介します。
腸活のやり方の基本は3つ。
2.菌を育てる (善玉菌のエサとなる食べ物を食べる)
3.菌の邪魔をしない (悪玉菌を増やすような食べ物や習慣を避ける)
このやり方をベースにすることで、腸内環境を改善していくことができます。
菌を取り入れる
腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つの種類の菌がいます。日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のどちらとしても機能する菌で、善玉菌が多いと善玉菌のように機能し、悪玉菌が多いと悪玉菌のように機能します。
そのため、腸内の善玉菌を増やすことが、腸内環境を整えるうえで欠かせません。
善玉菌を増やすには、まずは腸内にいる菌と同じ菌である、乳酸菌やビフィズス菌を摂ることが大切です。
日本人に合う発酵食品
乳酸菌やビフィズス菌を含む食品には色々ありますが、日本人の体質に合うのは、昔から日本にある漬物や味噌などの発酵食品です。
日本人にとって、漬物や味噌などの伝統的な発酵食品は、長い歴史と共に発展してきた食文化の一部です。これらの食品は、地域に根ざした乳酸菌やビフィズス菌を含み、日本人の腸内フローラに適したプロバイオティクスの源となり得ます。
他にも、納豆、醤油、甘酒などの発酵食品は、日本人の身体にぴったりで、腸内の環境を整えてくれるので、積極的に摂りましょう。
菌を育てる
腸内の善玉菌を増やし、健康な腸内フローラを維持するためには、単に乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌(プロバイオティクス)を摂取するだけでなく、これらの善玉菌を育て、活性化させる食材も重要です。ここで重要な役割を果たすのが、善玉菌のエサとなる「プレバイオティクス」です。特に、水溶性食物繊維は優れたプレバイオティクスとして知られています。
水溶性食物繊維をたっぷり摂る
溶性食物繊維は腸内で発酵しやすく、この過程で発生する短鎖脂肪酸は善玉菌のエネルギー源となります。これにより、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が増え、腸内環境が改善されます。
また、 善玉菌が増えることで、腸内のpH値が低下し、有害な細菌の増殖が抑制されます。これにより、腸内環境が健康な状態に保たれます。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品には、以下のようなものが挙げれらます。
野菜: ゴボウ、アスパラガス、キャベツなど
豆類: 大豆製品、レンズ豆、黒豆など
穀物: オート麦、大麦、玄米など
菌の邪魔をしない
腸内フローラの健康を維持するためには、善玉菌を積極的に育てるだけでなく、これらの菌の活動を妨げないようにすることも重要です。腸内環境を健康に保つには、善玉菌にとっていい環境を提供する一方で、彼らの活動を邪魔する可能性のある要因を避ける必要があります。
砂糖や人工甘味料を控える
過剰な砂糖摂取は、腸内の悪玉菌や酵母の増殖を促進し、腸内環境を乱す可能性があります。これは、腸内での炎症を増加させ、善玉菌の活動を抑制する可能性があります。
また、一部の研究では、人工甘味料が腸内フローラに悪影響を与える可能性が示されています。特に、一部の甘味料は腸内の代謝プロセスを変化させ、腸内環境の不均衡に寄与する可能性があります。
小麦製品、乳製品を控える
ルテンを含む小麦製品は、特にグルテンに対する感受性のある人々において、腸の炎症や透過性を高めることがあります。これは腸内フローラのバランスを崩し、善玉菌の活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、乳製品は、乳糖不耐症や乳製品に対する特定のアレルギーを持つ人々にとって、腸内環境の乱れを引き起こすことがあります。これは、腸内フローラの不均衡につながり、善玉菌の減少に影響を及ぼす可能性があります。
アルコールを控える
適度なアルコール摂取は問題ない場合もありますが、過剰な摂取は腸の粘膜を損傷し、腸内フローラのバランスを崩す可能性があります。特に、アルコールは腸内の有害な細菌の増殖を促進し、善玉菌に対する悪影響を及ぼす可能性があります。
コーヒーを控える
カフェインは適量では刺激的な効果がありますが、過剰な摂取は腸の運動性を過剰に刺激し、腸内フローラのバランスを崩す可能性があります。特に、敏感な人々では腸内環境への影響が顕著に現れることがあります。
腸活を意識してうつ病を改善しよう
腸活を通じてうつ病の症状を緩和する可能性は、近年の研究によって注目されています。健康な腸内環境は、全身の健康にとって重要であり、特に脳の健康と直接的な関連があることが明らかになっています。
善玉菌を増やす食生活、適度な運動、ストレス管理といった腸活の基本的な取り組みは、腸脳軸を通じて気分を高め、うつ症状の軽減に寄与する可能性があります。腸内フローラのバランスを整えることは、心の健康を守るための重要なステップです。腸活に取り組むことで、より豊かで健康的な生活を手に入れることができるかもしれません。
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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