生理前のつらい頭痛を予防したい!頭痛には酪酸産生菌が関係?
特に、ホルモンの変動が大きく影響しており、エストロゲンの減少が主なトリガーとなっていることが多いです。
また、腸内環境が体の調子を左右することも科学的に認められており、健康な腸が頭痛を和らげる鍵となることもあります。
この記事では、生理前の頭痛の原因、効果的な和らげ方、そして腸内環境が頭痛にどのように影響するかについて詳しく解説していきます。
生理前に頭痛に悩まされている方に向けて、具体的な改善策と予防法を提案していきたいと思います。
2種類ある頭痛
頭痛には2種類あり、片頭痛と緊張型頭痛があります。それぞれ痛みの感じ方や特徴が変わってきます。
片頭痛
片頭痛は、一方的な激しい痛みが特徴で、しばしば吐き気や光に対する過敏などの症状を伴います。
女性ホルモンのエストロゲンが減少することにより、脳の血管が拡張し、炎症反応が生じることで片頭痛が引き起こされると考えられています。
生理周期におけるエストロゲンの急激な変動は、片頭痛を誘発する一因になり得るため、生理前に頻繁に発生することがあります。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭全体に圧迫感や重さを感じるタイプの頭痛です。
このタイプの頭痛は、肩や首の筋肉の緊張が原因で起こることが多く、ストレスや不安、睡眠不足などが引き金となって現れることがあります。
緊張型頭痛は通常、軽度から中等度の痛みが持続し、日常生活に支障をきたすほどではないことも多いですが、慢性化すると生活の質を大きく低下させる原因にもなります。
生理前は頭痛が起きやすい
生理に起きる頭痛は、生理前症候群(PMS)の一環として捉えられることが多く、多くの女性がこの時期に不快な頭痛を経験します。
生理前の頭痛が起こりやすい主な理由は、ホルモンの変動にあります。特に、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが重要な役割を担っています。
これらのホルモンは、生理周期に沿って変動し、生理直前にはエストロゲンのレベルが急激に下がることが一般的です。この急な変動が、脳の血管に影響を与え、炎症を引き起こすことが片頭痛のトリガーとなり得ます。
セロトニンの役割
また、セロトニンという神経伝達物質も頭痛の発生に関与しています。
セロトニンは心地よい感覚や気分の安定に寄与する物質で、このレベルが低下すると頭痛が引き起こされやすくなります。
生理前にはセロトニンの生産が減少するため、これが頭痛を引き起こす要因となることもあります。
生活習慣とストレス
生活習慣やストレスも、生理前に頭痛が発生しやすくなる要因として無視できません。
不規則な睡眠、不健康な食生活、過度のストレスは、ホルモンバランスをさらに不安定にし、頭痛を引き起こす可能性を高めます。
このように、生理前には体内の複数の変化が組み合わさって頭痛が引き起こされることが多いのです。
生理前頭痛の特徴
生理前の頭痛は、月経周期の変化に密接に関連しており、特に生理の1週間前から始まり、生理が始まるとともに徐々に改善されることが一般的です。
この時期、女性の体はエストロゲンとプロゲステロンというホルモンの急激な減少を経験し、これが頭痛を引き起こす主な原因となります。
生理前に発生する頭痛は、その種類によって痛みの特性が異なります。
片頭痛は頭の片側に集中する激しい脈打つような痛みが特徴で、しばしば視覚や聴覚の過敏さ、吐き気や嘔吐といった症状が伴います。
一方で緊張型頭痛は、頭全体に広がる圧迫感や重苦しさを感じることが多く、首や肩の筋肉の緊張が原因であることが多いです。
これらの頭痛は、数時間から数日にわたって続くことがあり、痛みの程度や持続時間は個人差が大きいです。また、日常生活に支障をきたすほどの影響を与えることもあります。
このような生理前の頭痛の理解を深めることで、症状の予防や軽減策を効果的に選ぶことが可能になります。次の段落では、これらの症状を和らげるための具体的な対策について詳しく説明していきます。
女性は片頭痛持ちが多い
片頭痛は、女性にとって非常に一般的な症状の一つであり、その発生率は男性に比べて約3倍高いとされています。
この違いは主にホルモンの影響によるもので、特にエストロゲンが関与しています。
エストロゲンは血管の調節に重要な役割を果たすため、そのレベルが変動する生理周期の各段階で、片頭痛が引き起こされやすくなります。
生理周期中、特にエストロゲンのレベルが急激に下がる時期に、多くの女性が片頭痛を経験します。
このホルモンの急な減少は、脳の血管に影響を与え、片頭痛の一般的なトリガーである血管の拡張を引き起こすことがあります。
また、妊娠や閉経期といった女性の生活の他のフェーズでも、ホルモンの変動は片頭痛の発症に影響を及ぼすことがあります。
さらに、セロトニンという神経伝達物質も片頭痛の発生に深く関わっています。
セロトニンの不足は、片頭痛を引き起こす可能性があり、女性はセロトニンのレベルが低下しやすい傾向にあると考えられています。
この低下は、特に生理前に顕著で、これがまた頭痛のリスクを高める要因となっています。
片頭痛と腸内環境の関係
腸内環境と脳の健康は、“腸脳軸”と呼ばれる密接な関係によってつながっています。
この腸脳軸は、腸と脳が互いに影響を与え合う神経系のネットワークを指し、特にセロトニンの生成において重要な役割を果たします。
セロトニンはしばしば「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質で、その約90%が腸で生成されると言われています。
腸内環境の健康が損なわれると、腸内細菌のバランスが崩れ、炎症やその他の代謝産物がセロトニンの合成を阻害する可能性があります。
このセロトニンの合成不足は、脳へのセロトニン供給を減少させ、片頭痛の発症に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、不健康な腸内環境は、ストレス反応を増加させることが示されており、これも片頭痛のリスクを高める要因となり得ます。
酪酸産生菌と片頭痛の関係
酪酸産生菌は、腸内細菌の一種で、酪酸を生成することで知られています。
酪酸は短鎖脂肪酸の一つで、腸内の健康を支える重要な物質です。
この酪酸は、腸のバリア機能を強化し、腸内のpHバランスを維持する役割を果たします。腸のバリア機能がしっかりしていると、有害な物質が血流に漏れ出るのを防ぎ、全身の炎症を抑えることができます。
酪酸産生菌の数が不足すると、腸内での酪酸の生成が減少します。
酪酸の濃度が低下すると、腸のバリア機能が弱まり、有害な物質が腸壁を通過しやすくなります。
このように腸壁を超えて血液に入った有害物質は、体内の炎症を引き起こし、それが片頭痛のトリガーとなることがあります。
特に、炎症性物質が血液を介して脳に影響を与えることで、頭痛が誘発される可能性が高まります。
腸内細菌と片頭痛の研究
ウクライナのとある研究では、片頭痛罹患者112名に対して腸内環境を調べたところ、片頭痛がある人ほど腸内細菌が少ないことが分かりました。(※1)
また、中国のとある研究では、片頭痛がある人ほど腸内の酪酸産生菌が少なく、炎症の悪化に関連のある腸内細菌のうち7種が多いことが分かりました。(※1)
これらの研究からも分かるように、腸内細菌と片頭痛には関係性があることが分かっています。
薬に頼らない!生理前頭痛のセルフケア
生理前の頭痛に対処するためには、腸内環境の改善が非常に重要です。
腸内環境が整うことで、体内のエストロゲンなどのホルモンの正常な代謝が促され、PMSの症状が和らぎやすくなります。
また、PMS関係なく、片頭痛を改善するためにも、腸内環境を整えることが大切です。
腸内環境を整える方法
腸内環境を整えるためには、食生活の見直しが第一歩です。
KINS LABO的おすすめの腸内環境を整え方は、
①腸にいい菌を取り入れる
②腸の菌を育てる
③腸の菌を邪魔しない
の3ステップで進めていく方法です。
①腸にいい菌を取り入れる
腸内環境を整える最初のステップは、腸にいい菌を積極的に取り入れることです。腸内フローラは数多くの微生物で構成されており、そのバランスが健康全体に影響を与えます。
特に乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌などの有益な菌は、腸内環境の改善に役立ちます。
乳酸菌は、ヨーグルトや発酵乳、キムチなどの発酵食品に多く含まれています。これらの菌は腸内で有害な細菌の増殖を抑え、腸の健康を支える重要な役割を果たします。乳酸菌はまた、腸の動きを活発にし便通を促進する効果も期待できます。
ビフィズス菌は、腸内で最も豊富な善玉菌の一つで、特に大腸の健康を支えるのに重要です。ビフィズス菌を含む食品には、ヨーグルトや乳酸菌飲料などがあります。ビフィズス菌は腸内での短鎖脂肪酸の生成を助けることで、腸のバリア機能を強化し、炎症を抑制します。
納豆菌は、納豆という日本の伝統的な発酵食品に含まれており、腸内環境を改善する効果があるとされています。納豆菌は他の善玉菌と共生しやすく、腸内での有益な活動を促進します。
▼納豆菌についてはこちら
これらの菌を日常的に摂取することで、腸内フローラのバランスを改善し、腸の健康をサポートすることができます。
②腸の菌を育てる
腸内環境を整えるための次のステップは、腸の菌を育てることです。善玉菌を増やし、その活動を活発にするためには、水溶性食物繊維やオリゴ糖などの栄養素が非常に重要です。
水溶性食物繊維は、その名の通り水に溶ける性質を持っており、腸内でゲル状になって水分を保持します。
これにより、便の体積を増やし、腸の蠕動運動を助け、便通を改善する効果があります。
さらに、水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり、これらの菌の増殖を促進します。水溶性食物繊維は、オートミール、リンゴ、オレンジ、ナッツ、豆類など、多くの食品に含まれています。
オリゴ糖もまた、善玉菌の栄養源として知られています。
オリゴ糖は腸まで消化されずに到達し、そこでビフィズス菌などの善玉菌によって発酵されます。
この発酵プロセスは、腸内環境を酸性に保ち、有害な菌の増殖を抑える効果があります。
オリゴ糖は自然に野菜や果物、全粒穀物に含まれているほか、サプリメントとしても利用できます。
③腸の菌を邪魔しない
腸内環境を整えるための重要なステップとして、腸の善玉菌を邪魔する要因を避けることが挙げられます。
特に、添加物、グルテン、白砂糖の過剰な摂取は、腸内フローラに悪影響を及ぼすことが知られています。
食品添加物、特に防腐剤や人工甘味料などは、腸内の有益な善玉菌を減少させる可能性があります。一部の研究では、ランチペプチド(lantibiotics)と呼ばれる自然防腐剤が、有害菌だけでなく善玉菌にも影響を与えることが示されています。
これにより、腸内のバランスが崩れ、有害な病原菌が増殖する余地が生まれる可能性があります (UChicago Bio Sci Div)。(※2)
グルテンに関しては、セリアック病を持つ人々においては重大な問題で、腸内に炎症を引き起こしたり、腸の粘膜にダメージを与えることがあります。
また、グルテンを多量に摂取する食事は、加工食品や低繊維食が多くなる傾向があるため、間接的に腸内環境に悪影響を与えることがあります (Celiac Disease Foundation)。(※3)
▼グルテンについてはこちら
白砂糖の過剰な摂取は、腸内細菌のバランスを崩し、有益な善玉菌の減少と病原菌の増加を促すことが示されています。これにより、炎症やメタボリックシンドロームなどのリスクが高まるとともに、腸のバリア機能が低下し、慢性的な健康問題を引き起こす原因となることがあります (MDPI) (CUMC)。(※4)(※5)
これらの要因を避けることで、腸内環境を健康に保ち、全身の健康をサポートすることができます。
生理前頭痛の予防方法
ここからは、腸内環境を整えること以外に、生理前の頭痛を予防するためのセルフケア方法をご紹介していきます。
寝不足に注意
十分な睡眠は、生理前の頭痛を予防するために非常に重要です。
睡眠は体のリカバリーとリセットのための時間であり、睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭痛のトリガーになります。
生理前は特に、定時に床に就き、質の高い睡眠を心がけることが推奨されます。
熟睡するためには、寝る前のリラクゼーションタイムを設け、スマホやテレビなどの電子機器の使用を控えるなどが効果的です。
熱いお風呂やサウナは控える
熱いお風呂やサウナは一般にリラクゼーションとして推奨されますが、これらが原因で体温が急激に上昇し、それによって血管が拡張することがあります。
特に生理前はホルモンの変動により体が敏感になっており、このような血管の変動は頭痛を引き起こす可能性があります。
そのため、生理前には温度の穏やかなお風呂を選び、長時間の熱浴は避けることが望ましいです。
軽い運動で血流をよく
定期的な軽い運動は、生理前の頭痛を予防するのに役立ちます。
運動は血流を改善し、ストレスを軽減することができるため、頭痛のリスクを低減します。
特に、ウォーキングやヨガ、ストレッチングなどの軽度の活動は、血管の健康を促進し、全身の血流を向上させるのに適しています。
運動はまた、睡眠の質を向上させる効果もあり、これがさらに生理前の頭痛の予防につながります。
運動プログラムを始める際には、無理をせず、自分の体調に合わせて活動の強度を調整することが重要です。
ツボを押す
東洋医学では、特定のツボを刺激することで頭痛の予防や緩和が期待できるとされています。
生理前の頭痛に効果的なツボとしては、「合谷(ごうこく)」や「風池(ふうち)」などが知られています。
合谷は手の親指と人差し指の骨が合わさる部分にあり、ここを適度に圧することで頭痛の緩和が期待できます。
風池は、首の後ろ、髪の生え際のすぐ下のくぼみに位置し、ここを優しくマッサージすることで頭痛や肩こりが軽減されることがあります。
これらのツボを日常的に刺激することで、生理前の不快な頭痛を予防する手助けになるかもしれません。
身体を冷やすものを控える
生理前の頭痛を予防するためには、体を冷やす食べ物や飲み物の摂取を控えることが効果的です。
体が冷えると血流が悪化し、それが頭痛のトリガーになることがあります。
特に冷たいアイスクリームやソフトドリンク、生の野菜や果物などは摂りすぎないよう注意が必要です。
これらの食品は消化が良くない場合があり、体温を下げる効果があるため、生理前には温かい食べ物や飲み物を選ぶことをお勧めします。
生姜や唐辛子など体を温める効果のある食材を積極的に取り入れることも、体温管理に役立ちます。
ストレスを溜め込みすぎない
ストレスは生理前のホルモンバランスをさらに乱し、頭痛を引き起こす原因となり得ます。
日常生活の中でストレスを管理することは、生理前の頭痛を予防する上で非常に重要です。
リラクゼーションテクニックを学ぶこと、趣味や運動に時間を割くこと、必要ならばプロのカウンセリングを受けることが助けになります。
また、瞑想や深呼吸、ヨガなどは、心と体の緊張をほぐし、ストレスレベルを下げるのに有効です。
定期的にこれらの活動を行うことで、生理前の不快な症状を予防し、全体的なウェルビーイングを高めることができます。
症状を把握して適切なケアを
生理前の頭痛に効果的に対処するためには、まず自分の症状を正確に理解することが重要です。頭痛の種類や症状が生活に大きな影響を与える場合は、専門の医療機関を受診することを検討しましょう。医師による診断とアドバイスは、より具体的で効果的な治療計画を立てる上で不可欠です。
一方で、薬に頼る前にできることも多くあります。日常生活の中でストレス管理を徹底したり、適切な睡眠を確保したりすることで、自然に体のバランスを整えることができます。また、適度な運動や、身体を温める食事、腸内環境を整える食生活など、体内からケアを行う方法も効果的です。
生理前の頭痛を予防し、軽減するためには、これらの方法を組み合わせて日々の生活に取り入れていくことが大切です。自分自身の体をよく理解し、自分に合ったケア方法を見つけて、より快適な生活を目指しましょう。
(※1)頭痛予防の鍵は腸内にも | 腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」
(※2)Common food preservative has unexpected effects on the gut microbiome
(※3)Effect of Gluten Exposure on Gut Microbiome
(※4)Impact of Dietary Sugars on Gut Microbiota and Metabolic Health
(※5)Sugar Disrupts Microbiome, Eliminates Protection Against Obesity and Diabetes
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
X : @yutaka_shimo