この記事では、美肌菌の働きや性質、そして食べ物や生活習慣との関係について解説していきます。 美肌菌についてまだ良く知らないという方でも、美肌菌を理解した上で日常に取り入れていただきやすい内容をご紹介します。
美肌菌とは・その働きと食べ物の関係
私たちの皮膚表面に棲んでいるとされる「美肌菌」と「食べ物」。特定の食べ物で美肌菌が増えるといったデータは現時点で明確ではありませんが、美肌のためにも腸内環境は整えていきたいところ。
また、食べ物は皮脂バランスにも影響し、肌の悪玉菌は過剰な皮脂をエサにして増える一面があります。結果的には食べ物が美肌菌に影響する可能性は、おおいにあると言えるのではないでしょうか。 まずは美肌菌を含む皮膚常在菌について解説していきます。
美肌菌とは
顔の皮膚表面には、約20種類の皮膚常在菌が棲んでいると考えられています。そのなかで肌にとって良い働きをし、美肌に貢献してくれる善玉菌である「表皮ブドウ球菌」が主に「美肌菌」と呼ばれています。 そのほか、日和見菌と呼ばれる菌たちもいます。
表皮ブドウ球菌(善玉菌)
いわゆる「美肌菌」。皮膚表面の皮脂や汗を分解し、保湿成分「グリセリン」と抗菌成分「脂肪酸」を生成する働きがあるとされています。
この保湿成分によって保たれる皮膚のバリア機能によって、肌は日々晒される外的刺激から守られているのです。
また、表皮ブドウ球菌が生成する抗菌成分は、殺菌作用を持つタンパク質「抗菌ペプチド」を作り出し、肌を弱酸性に保つ働きも。これにより、肌トラブルを引き起こす原因となる悪玉菌の増殖を抑える働きもあると考えられています。
アクネ菌(日和見菌)
肌フローラのバランスに左右され、その環境次第では善玉菌的にも悪玉菌的にも働くとされる日和見菌。アクネ菌もこの一つです。
善玉菌優位の時には悪さはせず、善玉菌同様に肌のバリア機能を保ったり悪玉菌の増殖を抑える働きをすると考えられています。 悪玉菌優位になると皮脂汚れで毛穴が詰まりやすくなり、アクネ菌が炎症を引き起こすタンパク物質「CAMP因子」を作り出すことでニキビの発症に繋がるとされています。
広くニキビの要因として良くないイメージを持たれがちなアクネ菌ですが、大切なのは肌フローラのバランスであることがわかりますね。
美肌のために知っておきたい悪玉菌
肌のトラブルを引き起こす原因とされる悪玉菌は、できれば過剰には増やしたくないもの。悪玉菌の性質や特徴を理解して、増殖させない環境を作っていきたいですね。
黄色ブドウ球菌(悪玉菌)
増えすぎることで様々な皮膚トラブルの発症や悪化を引き起こすとされる黄色ブドウ球菌も、悪玉菌の一つです。
間違ったケアやストレスなどが原因で常在菌のバランスが崩れることにより、異常増殖を起こすことがあるとされています。異常増殖した黄色ブドウ球菌と肌トラブルとの関連性を指摘した研究結果も報告されています(※1)。
悪玉菌を増殖させないための常在菌バランスをキープすることが、美肌づくりの鍵になると言えるでしょう。
美肌菌のための食べ物3つ
美肌のためには皮脂バランスを正常に保ったり、健康な皮膚が作られるための栄養素が必須です。 皮脂バランスの乱れなどは美肌菌のような皮膚常在菌にも影響すると考えられるため、食べ物でお肌を整えていく方法を考えてみましょう。 美肌菌観点で意識したい食べ物を紹介します。
1.低GI食品
GI値とは、食後の血糖値の上昇を指す指標です。この値が高い高GI食品は、食後の血糖値を急激に上昇させることがわかっています。 急激な血糖値の上昇は血液中のインスリンを大量に分泌させ、男性ホルモンを活発にすることによって皮脂分泌や毛穴の詰まりを誘発することがあるとされています。
実際に、ニキビに悩む人に高血糖の食事が多かったという研究報告もあります(※2)。 過剰に分泌された皮脂は悪玉菌のエサになりやすく、悪玉菌優位になると美肌菌が増えやすい環境とは言えませんね。
白砂糖や白米、パン、麺類などの炭水化物は高GI値食品になります。なるべくこれらを避け、低GI食品で代用すると良いでしょう。
代用におすすめの低GI食品
・はちみつ
・メープルシロップ
・玄米
2.グルテンフリー食品
グルテンとは、小麦粉に水を加えて捏ねることでできるタンパク質のことを指します。 食材に粘り気やもっちりとした弾力を与えて美味しくする特徴がある一方、このグルテンが腸壁を傷つけて肌荒れの原因となる「リーキーガット症候群」などの不調を引き起こすことがわかっています。
高GI値食品同様に、腸内環境が悪くなることで、肌荒れしやすい環境を助長しかねないと考えられます。 ピザやパスタ、ラーメンなどの一般的に小麦粉が使われる食品を、グルテンフリー食品で代用することをおすすめします。
代用におすすめのグルテンフリー食品
・米粉
・そば粉
・大豆粉
最近はグルテンフリーのパスタなども売られています。
3.発酵食品
腸内環境を整えてからだの内側から美肌を目指すには、発酵食品などで善玉菌そのものを摂取することも効率的と言えるでしょう。 腸内の環境は肌はもちろん、体の様々な機関に影響を与えると考えられているからです。
美肌のためには美肌菌だけでなく、腸内にいる菌たちも意識したいポイントなのです。
腸内環境の乱れが結果的に肌荒れにつながるとも考えられているので、「腸活」は美肌を目指す方ならぜひ実践していきましょう。 特に発酵食品は、私たち日本人が毎日の生活の中で手軽に取り入れられるおすすめの食品です。
手軽に摂れるおすすめの発酵食品
・納豆
・ぬか漬け
・キムチ
・塩麴
・甘酒
美肌菌を増やすための生活習慣2つ
食事以外でも、美肌菌の棲みやすい環境を整えるためにできる日常のちょっとした習慣をご紹介します。
1.適度な運動で汗をかく習慣
美肌菌にとって、汗は最高のご馳走と言えます。美肌菌は汗や皮脂をエサにして増え、保湿成分と抗菌成分を作り出す性質があるとされているからです。
軽いストレッチやヨガを就寝前に行い、肌に少し汗をかいた状態で寝ると美肌菌を増やすことに繋がるとも考えられています(※3)。激しい運動をする必要はないので、できる範囲で無理なく続けてみてくださいね。
美肌菌を増やす方法について詳しくはこちら▼
2.洗いすぎない習慣
肌表面の厚さわずか2mmの角質層に棲む美肌菌は、デリケート。一日に何度も洗顔をしたり、擦り洗いをすることによって流れ落ちてしまうことも考えられます。
せっかく肌に棲みついてくれている常在菌の美肌菌を減らさないためにも、過度な洗顔や摩擦は避けたほうが良いでしょう。 また、使用する洗顔料なども、肌に優しくなるべく刺激の少ないものを選ぶことをおすすめします。
美肌菌と洗顔方法の関係について詳しくはこちら▼
内側・外側両方からのアプローチで美肌菌を育てよう
毎日の食生活で身体の内側から美肌を目指すために意識して摂りたい食べ物と、生活習慣についてお伝えしました。
難しい知識やわざわざ何かを新たに購入したりする必要はなく、健康的でバランスのとれた日々の生活こそが、美肌への架け橋となってくれると言えるでしょう。 健康を意識した規則正しい生活を送っていたら、健やかで美しい肌が手に入っていた。そんな嬉しい連鎖が、皆様に訪れますように。
参考文献:
(※1)鈴木修一ほか「乳児期の黄色ブドウ球菌の皮膚定着とアトピー性皮膚炎の発症」 日本アレルギー学会誌. 2009. 23巻 1号 p56-61
(※2)Noor Hasnani Ismail 1 , Zahara Abdul Manaf, Noor Zalmy Azizan, “High glycemic load diet, milk and ice cream consumption are related to acne vulgaris in Malaysian young adults: a case control study” 2012 Aug 16,PMID: 22898209
(※3)書籍「化粧品やめたら美肌菌がふえた!」著・出来尾格