「乾燥肌、敏感肌は隠れアトピー!?」 アトピー性皮膚炎について全力でまとめてみた!
「とにかく痒い!」
「治ったと思ったのに、気づけば繰り返す…」
今回はニキビと並ぶメジャーな肌トラブル、アトピー性皮膚炎について!
ただ、アトピーと聞くと、なんとなく子どもの頃になる疾患というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
たしかに「アトピー性皮膚炎」という診断を受ける方は、成人になるにつれ減少していきます。
ただ、大人になればアトピーと無縁になるかと言われれば、まったくそんなことはありませんでした。アトピー性皮膚炎は子ども大人関係なく多くの方を悩ます疾患だったのです。
どう言うことか順を追って、説明いたします。
実は私、今KINSで皮膚細菌の研究を進めているということもあり、皮膚科の先生方とコミュニケーションを取る機会が頻繁にあるんですね。
そして、その先生方と議論をする中で“ある意外な事実”がみえて来たのです。
それは、皮膚科を受診する患者さんでもっとも多い乾燥肌や敏感肌の症状はアトピーと診断されてはいないものの、隠れアトピーの疑いがある、ということ!
さらに日本アトピー協会によると、見方によって日本人の3人に1人はアトピー性皮膚炎にかかりやすい体質を持っていると言われています。
そこで、症状の重さにかかわらずそれだけ多くの方がアトピーに悩んでいるのであれば、何かできることはないかと思い、この記事の執筆に至りました。
と言うことで、今回のテーマは『アトピー性皮膚炎』!全力でまとめていきます!!
毎度のことながら本記事も分量が少し多くなっています。
一度読んで全てをマスターするのも難しいと思いますので、ぜひハートマークを押して、何度でも読めるようにしてくださいね。
それでは本編に参りましょう!
アトピーが治りにくいのは”3つの要素”が複雑に絡み合っているから!
まずは、アトピー性皮膚炎とは何かの基本情報から!
既にご存知の方も多いかとは思いますが、アトピー性皮膚炎とは、痒みをともなった湿疹からなる疾患。
そして、その最大の特徴は何度も繰り返すということ!
症状がおさまったかと思えば、また湿疹が再発…というループを繰り返すことが多い疾患です。
アトピー性皮膚炎とはかれこれ数年、もしくはそれ以上にわたる長い付き合い…という方も多いのかもしれませんね。
それでは、なぜアトピー性皮膚炎はここまで治りにくく、再発を繰り返すのでしょうか?
原因は、とにかく様々な要因が絡まり合って発症するという点にありました。
アトピー性皮膚炎にしてもその他の疾患にしても、この様々な要因が絡まり合って発症している疾患は本当に厄介。一時的に強い薬を使用して、表に現れた症状(湿疹、痒みなど)を抑えたとしても、根本的な部分や別の要因が解決していないと、何度も再発を繰り返してしまうのです。
特にアトピー性皮膚炎は、体の内外の状態、つまり外部環境、生まれつきの体質などなど…本当に多くの要素が絡まり合って発症しています。
ただ、その複雑に絡まり合った要因を紐解いていくと、大きく分けて3つの要素にまとまっていくことが分かってきました。
それがこちらです!
①遺伝的要因
②免疫機能の乱れ
③皮膚バリア機能の悪化
アトピー性皮膚炎はこの3つの要素がフルで揃ったときに発症することがわかっています。
なんだか難しそう…と思う方も多いかもしれません。
ただ、どうかご安心を!一つひとつ分かりやすく解説していきます!
①遺伝的要因
まずひとつ目は遺伝的要因。
要するに生まれた時からアトピー性皮膚炎になりやすい人と、そうではない人がいるということです!
この遺伝的にアトピーになりやすい体質のことを「アトピー素因」と言います。
具体的には、本人または家族が、アレルギー性疾患(アトピー、食物アレルギー、ぜんそく、結膜炎など)を持っていること、または免疫物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていることを指します。
今現在、アトピーに悩んでいるという方。
もしかすると、ご両親やお子さんもアレルギー症状を持っている方も多いのではないでしょうか?
その理由は、あなたとご家族がもともとアレルギーになりやすい素因を持っていたからだったのです。
実際に、両親のどちらかがアトピー性皮膚炎または何らかのアレルギー性疾患を持っている場合、生まれてくる子供はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高まるというデータがでています。
さらに、アトピー患者さんはアトピー性皮膚炎以外にも何かしらのアレルギー(食物アレルギーや花粉症など)も併発しやすいということもわかっています。
ただ、この要因は先天的なものであり、遺伝子情報を変えない限り、解決は難しいものです。
「じゃあもうアトピーは生まれつきのもので、どうしようもないの?」
もちろん、そんなことはありません!残りの2つの原因は、日々の生活習慣によって、ある程度コントロールが可能なものです。
そのため、残りの2つの要因をしっかりとケアする。それがアトピー改善のポイントとなります。それでは、その原因とは何か見ていきましょう!
②免疫機能の乱れ
アトピー発症に関わる2つ目の要因は体の内側、免疫の話です。
免疫機能とは、本来であれば外部から侵入した異物から私たちを守ってくれるためのものです。
ただ、この免疫もバランスが大切。
アトピー患者さんはこの免疫が過剰に働いてしまうが故に、炎症が起きてしまうのです。
そして、今回カギを握っているのがヘルパーT細胞。
ヘルパーT細胞は、体内に入ってきた外敵侵入を周りの免疫細胞たちに伝え、的確に侵入した異物を排除できるように免疫を司る指揮官のような存在です。
ヘルパーT細胞は外敵(抗原)によってTh1細胞とTh2細胞に分かれます。
この2つの細胞はお互いに役割が異なり、分化するからこそ様々な外敵から身を守れるようになっています。
例えばTh1細胞は、細菌やウイルスなどの異物に対して反応します。
敵を退治するために、同じく免疫細胞の一つであるB細胞へ「どんな敵なのか」を知らせ、抗体を作るよう指示を出します。
一方、Th2細胞は、ダニや花粉などのアレルゲンに反応します。
B細胞を活性化させて、今度はIgE抗体をつくります。
そして正常な免疫機能であれば、この2つの細胞はお互いに抑制しあい、バランスがとれるようになっています。
しかし、バランスが崩れTh2細胞が過剰になることで、本来は害をなさないはずのアレルゲン(アレルギーの元になる物質)に対しても過剰に反応して、痒みや湿疹といった症状が起きてしまうのです。
実際に、アトピー湿疹部位ではTh2細胞が頻繁に検出されるそうです。
そして、免疫機能の乱れは体内のある器官が原因で起こっていることもわかっています。
その器官とヘルパーT細胞の整え方については、この記事の後半で解説いたします!
③皮膚バリア機能の悪化
最後、3つ目のアトピーの発症に関わる要因は皮膚のバリア機能の低下です。
皮膚は外部と常に接する器官です。
それ故に、異物の侵入を防いだり、水分を保持するためのバリア機能が備わっていたりします。
しかしアトピーの患者さんは、このバリア機能が壊れやすいのです。
お肌の角質細胞の間を埋めている角質細胞間脂質や水分を保つ天然保湿因子が減ってしまっています。
その結果、角層にスキマができ、外からさまざまな刺激やアレルゲンが侵入しやすい状態に。アレルゲンが皮膚から侵入すると、それを攻撃してカラダの外へ追い出そうとする免疫細胞が感知して、免疫反応と同時に炎症を起こす物質を放出します。
そして、炎症が起きることでアトピー性皮膚炎の発症へとつながるのです。
と言うことで、①遺伝的要因、②免疫機能の乱れ、③皮膚バリア機能の悪化がアトピー性皮膚炎の発症を引き起こす三大要素となります。
もちろん、ダニや花粉など外的な要因(アレルゲン)やストレスも複雑に絡まって、アトピーの症状は変化します。ただ、ベースにはこの3つがあることをご理解いただければ幸いです。
そして、先ほども述べましたが①の遺伝的要因は、正直すぐにどうこうできる話ではありません。
だからこそ、アトピーの改善には、免疫機能を整えることと皮膚のバリア機能を高めることが大切になるのです。
痒みの原因は「汗が漏れている」から?
アトピー患者さんをもっと苦しめている症状といえば、痒みでしょう。
この症状がまあつらい!!
痒いのに掻きむしれば症状が悪化することに。時には、痒みが原因で寝れないなんてことも……。
皆さまは、アトピー性皮膚炎の症状がどうしてここまで痒みを引き起こすのか考えたことはありますか?
実は、この痒みには「汗が漏れている」ことが関わってきています。
「汗が漏れる?ってどういうこと??」って感じですよね。
私もこの論文をはじめて見たときは頭に「?」がたくさんで浮かんだのを覚えています(笑)
皆さまもご存知のとおり、汗とは本来であれば表皮から体外に排出されるものです。しかし、アトピーの患者さんの皮膚は、汗が詰まり体外に出にくい状態になっていることが近年の研究によって明らかになってきました。
そして、排出されず行き場の失った汗は表皮の下にある真皮層へと漏れ出します。結果、漏れた汗が原因で炎症が引き起こされ、痒みが促進されるのです。
アトピーの痒みに汗が関わっていたなんて意外ですよね…!
さらに、アトピー患者さんの皮膚では、汗が詰まって体外に出ていきづらいため、汗の分泌が少なくなっています。汗とは、体温調整や皮膚の保護という役割を担ってるもの。
そのため汗の分泌量が少ないと、皮膚が乾燥しやすく、さらにバリア機能が低下して別の病原体に感染するリスクが高まるなんてことも。アトピー性皮膚炎でお肌がカサカサするのも、この汗が詰まっていることに原因があるのかもしれません。
ちなみにですが、ある論文内では汗漏れを改善するためには、足を温水につけることが効果的であるということが述べられていました。足を温めることで、自然と発汗が促され、汗漏れの改善が期待できるようです。
また、アトピー患者さんの汗は、漏れているだけではなく組成も通常と異なります。汗の成分を分析した研究では「グルコース」の量が健康な肌の汗と比較して多くなっていることが示されていました。
「グルコース」が増えると、これまた不都合なことが。
汗中のグルコースはお肌に住む細菌のバランスを崩してしまうことが明らかになっているのです。
そもそも、私たちのお肌には無数の菌が住んでいて、彼らの状態によってお肌の状態も大きく影響を受けることが分かっています。
それでは次の章では、アトピー患者さんのお肌では、菌の状態がどのようになっているのかについてみていきましょう!
アトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌
私たちの身体には、約1,000種もの菌が日々暮らしています。そして、もちろん肌にも。肌に住む菌はアトピー性皮膚炎とも深く関わっています。
お肌に住む細菌は、アクネ菌や表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムなどなどなど…。様々な菌が住んでおり、この多様性があるほど健康な肌であると言われています。
一方、アトピー患者さんのお肌は細菌の多様性が低くなり気味。
そして、“ある菌”が異常に増殖していることがわかっています。
その菌というのが「黄色ブドウ球菌」。
この菌が本当に悪さをしてしまう悪玉菌の代表格です。体内に入れば食中毒や肺炎や髄膜炎などを引き起こします。
そして、皮膚で増殖すればアトピーの症状を悪化させる原因にも。
黄色ブドウ球菌は皮膚上で様々な物質を作り出します。その一つひとつが炎症性の物質を作り出したり、バリア機能を破壊したり、角質を溶かしたり…。
もうやめてくれ!!と言わんばかりの悪さをしでかします。
それでは、なぜアトピー患者さんの皮膚では、黄色ブドウ球菌が増殖しやすくなっているのでしょうか?
その理由は、皮膚上に存在する「フィラグリン」というタンパク質が関わってきていました。フィラグリンは、肌のバリア機能を保つのに重要な成分。
ただアトピー患者さんは、このフィラグリンの遺伝子変異が起き、減少・消失しているケースがあるのです。
そしてフィラグリンが欠乏すると、黄色ブドウ球菌が定着しやすい環境になり、増殖を招いてしまうことがわかっています。
ただ、遺伝的にフィラグリンが欠乏しているのであれば、もう黄色ブドウ球菌の魔の手から逃げれないのか?というと、そんなことはありません。同じく皮膚に住む菌には、黄色ブドウ球菌の活動を抑え込んでくれる菌も存在しています!
それが表皮ブドウ球菌です!!
黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌。
非常に名前が似ている2種類の菌ですが、まったくの別物!
黄色ブドウ球菌は悪さをしてしまう菌なのに対し、表皮ブドウ球菌は別名「美肌菌」とも呼ばれる、美しい肌を作るために必要不可欠な存在。
お肌に潤いをもたらしてくれたり、バリア機能を強めてくれたりと、黄色ブドウ球菌とは真逆の働きをしてくれます!
そして、表皮ブドウ球菌の作り出す成分の一つ、「抗菌ペプチド」が黄色ブドウ球菌を退治し、肌の菌の状態を適切に保ってくれることがわかっているのです。
ちなみにですが、お肌に住む表皮ブドウ球菌の数の多さやバランスは、KINS
BOXに付属のスキンテストで計測することができます。もし、まだスキンテストをしたことがないという方は、自分のお肌に住む菌の状態を知る機会ですので、ぜひ一度お試しください!
アウターケアのポイントはとにかく弱酸性!
ここまでアトピー性皮膚炎の方の体内、そして皮膚で起こっていることについて語ってきました。次は、菌ケア的アトピーのケア方法についてのお話をしましょう!
ただ、その前に少しアトピー性皮膚炎の一般的な治療についての話からさせてください。
もしあなたがアトピーを治そうと思い、皮膚科に訪れたとします。実は、その際の治療法はほぼ決まっています。おそらくステロイド外用薬や保湿剤(ヘパリン類似物質やワセリンなど)が処方されるでしょう。
ステロイド外用薬は皮膚に塗って炎症を抑える薬で第一選択薬となっており、かゆみや赤み、炎症を優れた効き目で強力に抑えます。
アトピー性皮膚炎の主な症状は湿疹と乾燥。そのため、抗炎症と保湿に特化した、主にこの2つの薬が標準的なアトピー治療薬として用いられています。
ただ正直な話、抗炎症と保湿だけではアトピーの根本治療として少し不十分な部分もあるのです。
と言うのも、少し思い出して欲しいのですが、アトピーというのは遺伝的要因、免疫機能の乱れ、皮膚バリア機能の乱れが合わさって発症する疾患でした。
そのため、炎症を抑えるという治療法は、表層に現れた症状を押さえ込む手法で根本的な解決には繋がりにくいと言えます。
大火事に水を撒いて一度鎮火させたとしても、小さな火がずっと燻っているような状態。つまり、いつ再び大火事が起きてもおかしくはないのです。
このことが関連して、多くのケースでは、標準的な治療だけでは、かゆみや炎症を繰り返してしまい、慢性的になってしまうのです。
さらに、ステロイドは副作用も気をつけたいところ。
皮膚の萎縮や酒さ様皮膚炎、血管拡張(主に顔面)などがあり、長期にわたる過度な使用は様々な不調につながってしまいます。
もちろんステロイド外用剤は適切な使用では副作用が起きることは少ないです。長期に渡って大量に使い続けない限り、全身的な副作用が出ることも稀です。
ただ、皆さまにステロイドを使用する際に一つ、どうしても気をつけて欲しいことがあります。それは自己判断により薬を使用するということ。
過去に別の症状で処方された薬を使用したり、症状が治ったからと予定より早めに使用を止めたり減らしたり、といった行為は絶対に避けるようにしてください!
かえってリバウンドの原因となったり、症状の慢性化を引き起こしてしまうということも考えられます。
もちろん、アトピー性皮膚炎のケアにおいて炎症を抑えるということ、保湿をするということが非常に重要なのは間違いありません。そこで、もし今ステロイド剤を処方されているという方は、まずはそのお薬を指示通り使うということを心がけてください。
それを踏まえた上で、それではいよいよ菌ケア的アトピーのアウターケアの話に移ります。
ここまで述べてきた通り、アトピーケアにおいて現在使用されている手法の課題点は炎症と保湿に特化した結果、根本的な原因へのアプローチが手薄になっているという点にありました。
そこで今回は、外側からのアプローチで、どうにか乱れた肌のバリア機能を修復する術はないかと、全力で探してまいりました!
そして皮膚のバリア機能増強に必要不可欠な、ある要素を見つけ出しました。
それが肌の「pH」です!
pHとは酸性度合いを表す指標。
pH7を中性とし、それよりも数字が小さければ酸性。大きければアルカリ性を示します。小学校か中学校の理科で習いましたよね。
健康な肌といいのはpHは4.1〜5.8と「弱酸性」に保たれています。
この「弱酸性」というのが本当に大切!!
しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚のpHがアルカリ性側に傾いているということがある研究により明らかになっていました。
そして、お肌のpHの上昇は、アトピー症状にとって本当にヤバいことだらけ。具体的にどのようなことが起こるかというと、こちらになります…!
①抗菌防御の低下
②Th2細胞の活性化
③痒みの増加
④皮膚バリア機能の低下
もう見るからに大変なことになってそうですが、どうやばいのか一つひとつ解説していきます。
①抗菌防御の低下
まず1つ目、お肌がアルカリ性に傾くと皮膚上の悪玉菌が元気になります。
健康な肌の弱酸性というのは悪玉菌にとっては生息しにくい環境。
先ほど登場した黄色ブドウ球菌も、酸性の環境下ではなかなか成長をすることができません。しかしアルカリ性に傾いてしまえば、一気に増殖。
アトピー性皮膚炎の症状悪化をもたらしてしまうのです。
②Th1細胞とTh2細胞のバランスが崩れる
pHが上昇すると起こることの2つ目は、Th1細胞とTh2細胞のバランスの悪化。
皆さま、Th1細胞とTh2細胞については覚えていますでしょうか?
ヘルパーT細胞が分化して作られる免疫細胞でした。
そして、この2つの免疫細胞のバランスが崩れると、アレルゲンに対して過剰反応な免疫反応が起き、アトピーの発症に繋がってしまうのでしたね。
この点にもお肌のpHは関わっていました。
なんと、皮膚のpHの上昇はTh2細胞の増加を招いてしまうのです。
そして免疫機能の乱れを引き起こし、アトピー症状の悪化を招くことが明らかになっています。
③痒みが増す
続いて3つ目。皮膚のpHの上昇は「痒み」の増加にも寄与します。
私が見た論文内ではpHが上昇することで、痒みが増すメカニズムについては解説されていませんでしたが、何らかのサイトカイン(体内物質)の変化により刺激が惹起されていたり、悪玉菌増加による炎症の悪化も関わったりしているのかもしれませんね。
④皮膚バリア機能の低下
最後4つ目、肌のpH上昇はなんとバリア機能にも直接影響を与えます。
この点には、Th2細胞の増加もどうやら関与しているようです。
と言うのも、Th2細胞が増えるとお肌のバリア機能を構成している「セラミド」と「長鎖脂肪酸」が減ります。
すると、お肌のバリア機能自体が弱まってしまうのです。
以上が皮膚上のpHがアルカリ性に傾くことで起こる不調たちでした。
もうpHが上昇するだけで、とんでもないことになることがご理解頂けたのではないかなと思います。
そのため、pHの上昇を食い止め、健康な肌と同じ弱酸性をキープすることがアトピーのアウターケアにおいては非常に重要な要素となります。
そして、この皮膚を弱酸性に保つためにもっとも簡単な方法がそもそも「弱酸」のスキンケアを使用するというもの。
とは言え、今まで化粧水や乳液のpHについてなんて考えたことない!という方がほとんどかと思います。
そういった場合は、ぜひpH試験紙を用いて、お持ちのスキンケアのpHを確かめてみてください。
pH試験紙はamazonなどで、簡単に手に入りますよ。
乳酸菌がアトピーの痒みを緩和する?!
さてさて、外側からのケアの次は内側の話。インナーケアについて今度は見ていきましょう。
私が本記事の一番初めに語ったアトピー性皮膚炎を引き起こす、3つの要因についてはまだ覚えていますか?
①遺伝的要因、②免疫機能の乱れ、③皮膚バリア機能の悪化でした。
そして、インナーケアにおいてはこの中の2つ目「免疫機能の乱れ」が大きく関わってきていました。
実はこの免疫機能の乱れと、密接に関わっているのが「腸」なのです。
と言うのも、腸は免疫細胞のほとんどを持っている「人体最大の免疫器官」といわれています。そのため、腸を整えるということは、ダイレクトに免疫を整えることにつながります。
そもそも、アトピー性皮膚炎の患者さんの腸内細菌は乱れがちです。
ある研究では、アトピー患者さんの腸内細菌はクロストリジウム、クロストリジウムディフィシル、大腸菌、黄色ブドウ球菌の割合が健康な方よりも高いのに対し、ビフィズス菌の割合は減少していることが示されていました。
そこで、アトピー改善のためのインナーケアとして、腸内細菌を整えるということはとても大切。腸内細菌を整えることで、免疫機能の乱れを解消することが期待できます。
そして腸内細菌を整えるための手法といえば、プロバイオティクス(生きた乳酸菌を摂取すること)です!
実際に乳酸菌を摂取することにより、アトピーの症状が緩和したと言う論文は山のように出ています。
しかも!アトピー改善においてプロバイオティクスがチカラを発揮するのは、免疫機能の適正化だけにとどまりません。
乳酸菌をはじめとした有用な菌たちは、腸内環境を整える過程でGABAや短鎖脂肪酸、キヌレン酸というありとあらゆる成分を作り出します。
この成分たちが、様々な方法でアトピー症状の改善にも寄与してくれるということが明らかになっているのです。
例えば、GABAやキヌレン酸は痒みを改善し、短鎖脂肪酸は皮膚の炎症を抑えてくれます。
つまり、プロバイオティクスはアトピー改善において、まさに一石二鳥というわけです!
プロバイオティクスは治療と併用で取り入れることも可能ですので、ぜひかかりつけの医師に相談された上でご検討ください。
子どものアトピー性皮膚炎
ここまでは、子供、大人に関わらずアトピー性皮膚炎の全体感についてまとめてきました。
ただ、やはりアトピー性皮膚炎といえば、子どもの患者さんが多いのは事実。しかも、食生活の変化や清潔を好む環境から、その有病率は年々増えています。
今では、なんと世界中で10~20%の乳幼児がアトピー であると言われています。
子どものアトピーというのは、親からしたら本当につらいものです。愛する我が子が苦しむ姿を見るくらいなら自分が変わってあげたいというママ、パパも多いのではないでしょうか?
そこで最後は子どものアトピー性皮膚炎にフォーカスして見ていきましょう。
まず、そもそもですが、なぜ子供がアトピー性皮膚炎を発症しやすいのかという点について。
その理由は、ズバリ免疫機能が十分に育っていないからです。私たちの体には、2種類の免疫が存在しています。
それは、自然免疫と獲得免疫。
自然免疫とは生まれた時から持っている免疫。そして獲得免疫とは、その名の通り生きていくうちに後天的に獲得していく免疫です。
ただ、子どもはまだこの獲得免疫がまだ未発達。そのため、免疫のバランスが大人に比べて揺らぎやすく、アレルギーやアトピー性皮膚炎にかかりやすいのです。
これが大人になるにつれ免疫機能が蓄えられていき、ちょっとのアレルゲンや異物による攻撃では、体調を崩さないようになります。
そのため、子どもの乱れやすい免疫を整えるためにも、乳酸菌をはじめとしたプロバイオティクスの摂取によるインナーケアは非常に重要。
ただ面白いことに、どうやら子どものアトピー改善はどの乳酸菌でも効果が得られるわけではないようなのです。
ある論文では、これまでに世に出された数々の子どもアトピーと乳酸菌の研究結果がまとめられていました。
それを見ると、ラクトバチルス・ラムノーサスおよびおよびラクトバチルス・プランタルムの単菌のみの摂取では、アトピー症状の改善が見られなかったというのです。
一方で、ラクトバチルス・ファーメンタルム、ラクトバチルス・サリバリウス、もしくは複数菌の摂取ではアトピー症状の改善が見られたことが報告されていました。
単菌よりも複数菌の方が、優れた効果を出すという論文は今まで見たことはありましたが、乳酸菌の種類によっても大きく効果が変わってくるなんて興味深いですよね。
同じ乳酸菌と呼ばれる菌の中にも、得意不得意なことがあるようです。
とは言え、今述べた菌の名前をすべて覚えてこれはアトピーに効果を発揮する、しないという風に見分けるのはなかなか大変かと思います。
そこで、とりあえず今回は「複数菌を取り入れること!」このことだけでもぜひ覚えていってください。
さらに、菌ケアにおいては菌を取り入れることと同じくらい、菌を育てることも大切。
水溶性食物繊維やオリゴ糖が豊富に含まれた食材は菌のエサとなり、子どもの腸内細菌を豊かに育ててくれます。
日々の食事に意識して摂り入れるようにしてみてください!
終わりに
いかがだったでしょうか?
今回はアトピー性皮膚炎と菌との関係について、全力でまとめてきました。
内容について、もう一度おさらいしますと、アトピー性皮膚炎は大きく分けて3つの要因が絡み合うことで発症していました。
それは、①遺伝的要因、②免疫機能の乱れ、③皮膚バリア機能の悪化でしたね。このうち、遺伝的要因は改善が難しいもの。
そのため、免疫機能とバリア機能の改善が鍵を握っています。
そしてアトピー性皮膚炎にもやはり「菌」の存在が関わっていました。
主役は黄色ブドウ球菌。黄色ブドウ球菌が悪さをしてしまうことで、湿疹の症状はさらに悪化してしまいます。
ケア方法はアウターケアとインナーケアでそれぞれポイントがありました。
アウターケアは、とにかくpHを下げること。
インナーケアは、プロバイオティクスによって腸内細菌を整えること。
まずは、この2つを意識することからはじめてみてください!
この記事があなたにとって少しでも力になれることを祈っています。
それでは、次の記事でお会いしましょう!!
参考文献
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記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
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