【医師監修】美肌菌で乾燥対策・秋冬の肌トラブル予防
肌に厳しい季節だからこそ取り組みたい、美肌菌を育むための生活習慣や食事で取りたい栄養素、スキンケアなどを、美肌菌の命名者である出来尾格先生の監修にてご紹介します。
秋から冬は美肌菌が苦手な季節?
暑い夏が終わり、涼しい秋へ。夏の強い紫外線による肌ダメージや、急激な気温の変化。こうした季節の変わり目に肌が敏感になると感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、気温や湿度が低くなる秋から冬は、私たちの肌にもさまざまな変化が起こります。
季節の変化が美肌菌バランスに与える影響
まず知っておきたいのが、顔の肌表面に存在する皮膚常在菌への影響。
皮膚常在菌の中で、肌に良い影響をもたらす代表的なものが「表皮ブドウ球菌」です。肌を健やかに美しく保つ働きから、「美肌菌」とも呼ばれます。
「美肌菌」についてのキホンはこちら▼
表皮ブドウ球菌は、汗や皮脂を分解して保湿成分を作り出してくれています。
実は、肌が冷えてしまう秋冬は美肌菌が苦手な季節。汗が少なく乾燥して皮脂も少ない肌は、美肌菌にとって働きづらい環境です。美肌菌の活動が弱まることで肌の水分量低下に繋がり、さらなる乾燥へと悪循環を起こしてしまうのです。
また、表皮ブドウ球菌やアクネ菌という皮膚常在菌は、脂肪酸(有機酸)などを分泌して顔の表面を弱酸性に保ってくれる働きがあります。これにより、酸性を嫌う病原菌などが増殖しにくくなっています。美肌菌が働きにくくなる秋冬の肌はアルカリ性に傾きやすくなり、炎症を起こしやすい肌環境になってしまうのです。
美肌菌の働きが低下しがちな季節。涼しくなっても、空調の効いた部屋で薄着で過ごしたり、冷たい飲み物・食べ物をたくさんとったりと、夏の感覚のまま過ごしていませんか?本格的な冬到来の前に、肌ケアを心がけていきましょう。
秋から取り組みたい美肌菌視点での肌対策
季節の変化に負けない肌を目指すために。
肌を守ってくれる美肌菌の数を減らさずに、菌が元気に働ける環境を整えましょう。
まず気温が下がる季節に意識したいのは、体を温めることです。
美肌菌は、少し汗をかいた肌で働きが活発になります。肌の露出が少ない服装に変え、冷えを防ぎましょう。軽い運動で冬でも軽く汗をかく機会を作り、入浴の際は湯船に浸かる習慣をつけて血行を良くすることを心がけます。
美肌菌観点での入浴法
体を温めるといっても、熱いお湯は肌の潤いにとって逆効果。長時間の入浴も、角質層がふやけて弱くなります。人肌より少し温かい37〜39度程度のお湯で、湯船に浸かる時間も15分程度までにしましょう。
入浴後はうっすらと汗をかく程度に少し体を動かしてから眠ることで、汗をエサとする美肌菌が増えやすくなります。
美肌菌視点でのスキンケア習慣
美肌菌は、洗顔やシャワーの水流で簡単に流れていってしまいます。W洗顔を避けるなどして1日の洗顔の回数を減らし、洗顔後は乳液やクリームを塗り水分の蒸発を防ぎましょう。
美肌菌観点でのスキンケアについて詳しくはこちら▼
そして秋冬であっても、外出時や太陽光のある室内では日やけ止めを。夏ほどの強い日差しがないとはいえ、紫外線が肌にもたらす乾燥ダメージに気を付けましょう。
美肌菌は皮脂や汗をエサにして育つので、肌の乾燥は大敵です。
美肌菌観点での食生活
食生活については、肌を作る成分から考えてみましょう。
肌表面の角質層で潤いを保つ働きをしている天然保湿因子や、角質層の下の真皮を構成するコラーゲン。これは主にタンパク質が分解されてできるアミノ酸でできています。つまり、肌のハリや潤いを保つには、タンパク質を積極的にとることが大切になります。
赤身のお肉は良質なタンパク質だけでなく、ビタミンや亜鉛、鉄などのミネラルなどが摂取できます。
ただ赤身肉の摂り過ぎは、腸内の悪玉菌を増やしやすいというデータも。4)
鮭、鮪、タラなどの魚類も良質なタンパク質が摂れ、腸内細菌のエサとなるオメガ3脂肪酸も豊富なのでバランスよく取り入れていきましょう。
美肌のために食べたほうがよいものについて、こちらでも詳しく紹介しています▼
腸内環境を整えることも、巡り巡って肌の状態に影響すると推測されます。
腸内環境と肌状態の関連性は、まだ未解明の部分も多く各国で様々な解析がされているテーマです。今後さらに深い関係が見えてくることもあるかもしれませんね。
もちろん腸内環境は肌だけでなく、お通じなどにも関わりますので日常的に整えることは大切です。ヨーグルトやキムチなどの発酵食品で善玉菌を取り入れたり、海藻、根菜、きのこ類からの水溶性食物繊維も食生活に取り入れましょう。
善玉菌について、以下でさらに詳しく解説します。
美肌菌ケアのための注目成分・アイテム
生活習慣を見直す以外にも、肌に良い成分やアイテムがあれば積極的に取り入れたいですよね。
そこで注目したいのが、ヨーグルトなどに含まれる「乳酸菌」や「ビフィズス菌」。人の腸内にも存在し、善玉菌として病原菌などの感染や増殖を抑える働きをしていると考えられています1)。
この乳酸菌やビフィズス菌を積極的に摂取すると、腸内環境を良くしてくれるだけでなく肌状態も改善できるという研究結果があります2)。
ヨーグルトなどで直接とるだけでなく、ハチミツや大豆などに含まれるオリゴ糖などを摂ることでも腸内にいるビフィズス菌を増やすことが期待できるのです。
ホエイパックで肌にも直接アプローチ
さらに、食べるだけでなく、乳酸菌を肌に直接塗ることでも美肌菌が増えたという研究結果があります。3)
ヨーグルトは、その上澄み液であるホエイにも肌に有用な成分がたっぷり。角質細胞の中に存在する天然保湿因子(NMF= Natural Moisturizing Factor)と同様のアミノ酸が含まれています。
そのため、ホエイをコットンやシートマスクに含ませてパックする、といったスキンケア方法も知られています。
とはいえ、ホエイを用意するのは面倒に感じる方もいるでしょう。
化粧品成分では「乳酸桿菌/豆乳発酵液」という成分も、近年美肌菌を増やすといったデータが見られています。5)
そのような成分が含まれるアイテムを使用するのもいいかもしれません。
乾燥しやすい季節も美肌菌にやさしいケアを
秋から冬にかけての、美肌菌観点での肌対策をご紹介してきました。
肌トラブルが起きやすい季節にも健康で美しい肌を保つには、早いうちからの取り組みが大切です。季節の変わり目にも意識して美肌菌を守り、そして育てる習慣について、日々の生活に取り入れていきましょう。
【参考文献】
- Consecutive Intake of Fermented Milk Containing Bifidobacterium breve Strain Yakult and Galacto-oligosaccharides Benefits Skin Condition in Healthy Adult Women. Kano M et al., Biosci Microbiota Food Health.2013.
- Novel bioactive from Lactobacillus brevis DSM17250 to stimulate the growth of Staphylococcus epidermidis: a pilot study. Benef Microbes.C Holz.et al.,2017 Feb,p121-131.
- Influence of diet on the gut microbiome and implications for human health Rasnik K. Singh, Hsin-Wen Chang, Di Yan, Kristina M. Lee, Derya Ucmak, Kirsten Wong, Michael Abrouk, Benjamin Farahnik, Mio Nakamura, Tian Hao Zhu, Tina Bhutani & Wilson Liao ,Journal of Translational Medicine volume 15, Article number: 73 (2017)
- フレグランスジャーナル2014.5_乳酸菌生産物質の機能性と基礎化粧品への応用 野嶽 勇一,松本 菜季,本多 英俊
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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