辛い肌荒れをなおす!「バリア機能の低下」を防ぐ方法
肌荒れのない肌に整えていくためには、正しい知識とケアが必要です。
この記事では、肌荒れの原因を掘り下げ、あなたの肌を健やかに保つための実用的なアドバイスをご紹介します。肌荒れに悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。
肌荒れの症状
肌荒れは一言で言い表せるものではありません。多種多様な症状があり、それぞれが私たちの生活の質に影響を及ぼすことがあります。最も一般的な肌荒れの症状を紹介します。
肌荒れが起きるメカニズム
痒みや赤みを伴う不快な肌荒れは、どうして起きるのでしょうか。その原因を探ってみましょう。
ターンオーバーの乱れ
肌のターンオーバーは、古い角質が自然に剥がれ落ち新しい肌細胞が生まれるプロセスです。このサイクルが理想的に機能している時、肌は滑らかで健康的な状態を保ちます。しかし、ストレス、不規則な生活、不適切なスキンケアなどによりターンオーバーが乱れると、肌表面の古い角質層が適切に剥がれ落ちず、古い角質が溜まり、毛穴をふさいで肌荒れを引き起こします。
また、角質層の正常な機能は、外部からの刺激や異物の侵入を防ぐバリアとして働きます。ターンオーバーの乱れによって角質層が厚くなり、その構造に隙間が生じると、本来なら肌の外側でブロックされるはずの刺激物質やアレルゲン、花粉などが、容易に肌の内部に侵入することが可能となります。
刺激物質やアレルゲンが角質層の隙間から侵入すると、肌内部で炎症反応を引き起こし、赤み、かゆみ、湿疹などの肌荒れの症状を引き起こす可能性があります
美肌菌の減少
お肌に存在する美肌菌とは、肌の健康を支える善玉菌の一種で、肌のバランスやバリア機能を維持する上で重要な役割を果たしています。これらの善玉菌は、肌の健康を保つための様々な有益な物質を生成します。
美肌菌が充分に存在する健康な肌では、美肌菌が生産する脂肪酸やグリセリンなどの成分が、肌の表面を覆う保護膜として機能します。この保護膜は、肌の水分を保持し、外部からの有害な刺激物質やアレルゲンの侵入を防ぐ重要な役割を果たします。
しかし、美肌菌のバランスが崩れ、その数が減少すると、この保護膜を形成する脂肪酸やグリセリンの生成が低下します。結果として、肌のバリア機能が弱まり、保湿力が低下します。肌のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に対する肌の防御力が弱くなり、刺激物質やアレルゲンが肌内部に侵入しやすくなります。
刺激物質が侵入すると、肌内部で免疫反応が起こり、炎症、かゆみ、赤みなどの肌荒れの症状を引き起こすことがあります。
肌荒れが起きる原因
次に、具体的に肌荒れの原因となりやすいことをご紹介します。
紫外線によるダメージ
紫外線は、肌に様々なダメージを与える要因の一つです。紫外線に長時間さらされることで、肌細胞はDNAの損傷を受け、肌の老化が加速します。また、紫外線は肌の表面だけでなく、深い層にまで影響を及ぼし、肌のバリア機能の低下を引き起こす可能性があります。
肌のバリア機能が低下すると、肌が乾燥し、小さな亀裂や隙間が生じやすくなり、これが外部からの刺激物質の侵入を容易にします。
花粉は、これらの小さな隙間を通じて肌内部に侵入しやすくなります。肌内部に侵入した花粉は、免疫系の反応を引き起こし、炎症を促進します。
さらに、紫外線によるダメージは、肌の抗酸化防御機能を低下させ、肌の老化を加速させることが知られています。肌の老化は、肌の弾力性や修復能力の低下を意味し、結果として、肌荒れのリスクが高まります。
睡眠不足
睡眠は、私たちの健康にとって欠かせない要素であり、特に肌の健康において重要な役割を果たします。睡眠中には、身体のさまざまな回復プロセスが行われ、その中でも肌のターンオーバー、つまり古い肌細胞が新しい細胞に置き換わるプロセスが活発になります。このプロセスは、肌の若々しさを保ち、肌トラブルを防ぐために不可欠です。
睡眠不足に陥ると、このターンオーバーのプロセスが乱れ、古い角質層が肌表面に蓄積し、肌の質感が荒れたり、くすんだりする原因となります。また、角質層が均一でなくなると、肌のバリア機能が低下し、外部からの刺激に対する抵抗力が弱まります。
さらに、睡眠不足はストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを上昇させることが知られています。コルチゾールの過剰な分泌は、肌の油分バランスを崩し、アクネ菌の増加や肌の炎症を引き起こす可能性があります。これもまた、刺激に対する肌の脆弱性を高める一因となります。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスは、肌の健康と直接的に関連しています。特に、エストロゲンやプロゲステロン、テストステロンといった性ホルモンのバランスが重要であり、これらが乱れると肌のコンディションに多くの問題が生じる可能性があります。
ホルモンバランスが乱れると、まず肌のターンオーバーに影響を及ぼすことがあります。適切なターンオーバーが保たれないと、肌の自然なバリア機能も弱まり、外部からの刺激物質への抵抗力が低下します。
また、ホルモンバランスの乱れは、肌の油分の産生にも大きく影響します。例えば、アンドロゲン(男性ホルモン)のレベルが高まると、皮脂腺が過剰に活動し、皮脂の過剰な分泌を引き起こすことがあります。これにより、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビやその他の肌トラブルの原因となります。
肌の油分バランスが崩れると、肌の表面が不均一になり、小さな隙間が生じやすくなります。これにより、花粉などの外部刺激物が肌内部に侵入しやすくなり、炎症やアレルギー反応などの肌荒れを引き起こすリスクが高まります。
エアコンや空気の乾燥
エアコンや空気の乾燥は、お肌の健康に大きな影響を与える要因の一つです。
肌が乾燥すると、その潤いを保つための天然保湿因子や皮脂膜が減少し、肌細胞同士の結合が弱まります。肌細胞同士の結合が弱まると、肌の表面に微細な隙間や亀裂が生じやすくなります。これらの隙間は、通常、健康な肌のバリア機能によってブロックされるべき外部からの刺激物質やアレルゲンが侵入する入り口となり得ます。
花粉の季節には、空気中に花粉が多く含まれており、これらの微細な隙間から肌内部に侵入しやすくなります。花粉が肌内部に侵入すると、肌の免疫系がこれを異物と認識し、炎症反応を引き起こします。この炎症反応が、赤み、かゆみ、腫れなどの肌荒れの症状を引き起こすことになります。
間違ったクレンジングや洗顔
毎日のクレンジングや洗顔も、少し間違えると花粉による肌荒れを引き起こしてしまいます。
特に、クレンジングや洗顔に含まれる界面活性剤は、お肌の汚れを落とすのに必要な成分ですが、種類によっては洗浄力が強く、お肌に必要な皮脂や美肌菌も洗い流してしまいます。
合成界面活性剤に注意
界面活性剤は、水と油のように普通では混ざり合わないものを乳化させ、汚れを浮かび上がらせて洗い流すことを可能にする化学物質です。
合成界面活性剤は化学的に合成され、洗浄力や脱脂力が非常に強いという特性があります。これは、油性の汚れを効果的に取り除きたい場合には有利ですが、肌の必要な油分までも取り除いてしまう可能性があるため、肌の乾燥やバリア機能の低下を引き起こすリスクがあります。特に敏感肌や乾燥肌の人にとっては、肌トラブルの原因となることがあります。
一方、天然由来の界面活性剤は、植物や動物由来の原料から作られます。ココナッツオイルやオリーブオイル、砂糖などが原料として使われることが多いです。これらの界面活性剤は、合成界面活性剤に比べて洗浄力や脱脂力は穏やかですが、肌への刺激が少ないという利点があります。そのため、肌を優しく洗い上げることができ、肌の自然な潤いを保ちやすいです。
合成界面活性剤についてはこちらで詳しく説明しています。今お使いのクレンジングや洗顔に、合成界面活性剤が使用されている場合は一度見直してみるのもおすすめです。
顔ダニ/h3>
顔ダニ、特にデモデックスダニは、人の皮膚に自然に存在する微小な生物です。通常は肌の健康に直接害を及ぼすことは少なく、人と共生する形で生活しています。しかし、その数が異常に増えたり、特定の条件下で肌への影響を与えることがあります。
顔ダニの過剰な増殖は、肌のバリア機能を低下させることがあります。ダニは皮脂を栄養源としており、その活動が活発になると皮脂の過剰な消費や肌の微小な損傷を引き起こすことがあります。肌のバリア機能が低下すると、通常肌が防御してくれるはずの外部からの刺激物質、この場合は花粉などが肌内部に侵入しやすくなります。
また、顔ダニは肌の中で細菌を運ぶことがあり、それが肌の炎症を引き起こす原因となることもあります。このような炎症は、花粉による肌の敏感化と相まって、さらに肌トラブルを悪化させる可能性があります。
ひげ剃り
ひげ剃りは、男性の日常的なグルーミングの一部ですが、肌に微細な損傷を与えることがあります。特に、刃が肌に直接触れることで生じる摩擦や圧力は、肌表面の細胞にストレスをかけ、小さな傷や炎症を引き起こす可能性があります。これにより、肌の自然な保護層であるバリア機能が一時的に低下することがあります。
肌のバリア機能が低下すると、肌荒れが起きやすくなってしまいます。
顔の部位別、肌荒れの原因
顔の肌荒れは様々な要因によって引き起こされ、その原因は顔の部位によって異なることがあります。以下に、顔の主要な部位別に肌荒れが起きる一般的な原因を紹介します。
額
額の肌荒れは、ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの乱れ、または不健康な食生活による内臓の不調が反映されることがあります。また、髪の毛に使う製品が肌に触れることで肌荒れを引き起こすこともあります。
目の周り
目の周りの皮膚は非常に薄くデリケートなため、アレルギー反応や乾燥、メイクの摩擦などにより肌荒れが起きやすい部位です。
頬
頬の肌荒れは、ホルモンの変動、不適切なスキンケア製品の使用、または外部環境の影響(紫外線、寒暖差など)によって引き起こされることがあります。
鼻
鼻は脂腺が多く、皮脂の分泌が活発なため、毛穴が詰まりやすく、黒ずみやニキビができやすい部位です。
口周り
口周りの肌荒れは、ホルモンの影響を受けやすく、また食べ物や飲み物、リップ製品などの刺激物によって引き起こされることがあります。また、口唇ヘルペスなどの皮膚疾患が原因である場合もあります。
顎とあご
顎やあごの部位は、特にホルモンバランスの乱れが原因で肌荒れが起きやすいとされています。特に月経周期に関連した肌荒れが見られることがあります。
肌荒れを改善する方法
それでは具体的に、肌荒れを改善していく方法をご紹介します。
日焼け止めをきちんと塗る
紫外線によってお肌がダメージを受けると、肌のバリア機能が低下し、肌荒れを引き起こしやすくしてしまいます。
面倒でも、毎日日焼け止めを塗ることが大切です。外出する30分前には塗るようにし、数時間ごとに塗り直すことが推奨されます。
日焼け止めの選び方
日焼け止めのSPF(Sun Protection Factor)値は、紫外線B波(UVB)から肌を守る能力を示しています。SPF値が高いほど、理論的には肌をUVBから守る効果が長持ちします。しかし、SPF値の高い日焼け止めが必ずしも全ての人に適しているわけではありません。特に敏感肌の人や肌荒れが気になる人にとっては、SPF値の高い日焼け止めが肌に負担をかけることがあります。
日常生活での使用であればSPF15~30の範囲で十分な場合が多く、敏感肌や肌荒れが気になる人は、この範囲のSPF値を持つ肌に優しい日焼け止めを選ぶことがおすすめです。ただし、長時間の屋外活動や強い日差しの下では、SPF値がやや高めの製品を選び、適切に塗り直すことが重要です。
また、紫外線をカットするのには紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2種類がありますが、紫外線吸収剤を多く含む日焼け止めは、肌荒れの原因になることがあります。
紫外線散乱剤(例:酸化亜鉛や二酸化チタン)を主成分とする日焼け止めを選ぶことで、お肌への負担を減らすことができます。
睡眠の質を整える
睡眠は身体と心の健康にとって非常に重要であり、特にお肌の健康において大きな役割を果たします。睡眠中には肌の細胞が再生し、日中に受けたダメージの修復が行われるため、睡眠不足は肌のターンオーバーを乱し、結果的に肌荒れの原因になり得ます。質の良い睡眠を確保することは、肌荒れを防ぎ、美しい肌を維持するために重要です。
睡眠の質を上げる寝る前の行動
リラックスする時間を設ける: 寝る前にリラックスする時間を持つことで、心身ともにリラックス状態になり、睡眠の質が向上します。入浴、読書、軽いストレッチ、深呼吸など、リラックスできる活動を行いましょう。
また。スマートフォンやコンピューター、テレビの画面から発せられるブルーライトは、睡眠の質を低下させる原因となります。寝る1時間前にはこれらのデバイスの使用を避けるようにしましょう。
さらに、寝る数時間前にカフェインやアルコールを摂取することは、睡眠の質を悪化させる可能性があります。特に夜遅くのカフェインの摂取は避けましょう。
美肌菌を育てる
お肌のバリア機能であるグリセリンや脂肪酸などを生成するために、美肌菌を育てることも重要です。
美肌菌を育てるためには、合成界面活性剤を使用した、洗浄力の強いクレンジングや洗顔を避けることが重要です。
それに加えて、美肌菌を元気にする豆乳発酵成分などを取り入れるのもおすすめです。豆乳発酵成分はお肌にいる美肌菌を元気にしてくれるため、スキンケア用品で取り入れることで、お肌を健やかにし、肌荒れを予防してくれます。
皮脂を洗い流しすぎない
美肌菌は汗や皮脂をエサにしています。このエサがないと、お肌に必要な天然由来の保湿成分を生成することができません。
そのため、洗顔やクレンジングで脱脂力が強いものを使用してしまうと、お肌の保湿成分を作り出すことができなくなってしまいます。特に、鉱物油(ミネラルオイル)をベースにしたクレンジングは、脱脂力が強いので、植物性のオイルをベースにしたクレンジングを使用するようにしましょう。
サプリメントを取り入れる
肌荒れの改善には、適切なスキンケアや生活習慣の見直しが基本となりますが、サプリメントの活用も有効なアプローチの一つです。サプリメントに含まれる特定の栄養素は、肌の健康をサポートし、肌荒れの予防や改善に役立つことがあります。
ビタミンCやビタミンEは強力な抗酸化作用があり、肌細胞の損傷を防ぎ、ダメージの修復をサポートします。
オメガ3脂肪酸は、肌の炎症を抑制し、敏感肌や赤み、ニキビなどの炎症性の肌トラブルを和らげるのに役立ちます。また、肌のバリア機能を強化し、乾燥や外部刺激から肌を守る効果があります。
亜鉛は、肌の修復プロセスに欠かせないミネラルであり、肌の再生を促進し、傷の治癒を早めます。また、亜鉛には抗菌作用もあるため、ニキビの原因となる細菌の増殖を抑える効果も期待できます。
むやみにスキンケアしすぎない
スキンケア製品の中には、有効成分の浸透を助ける目的で合成界面活性剤が使用されていることがあります。界面活性剤は水と油を混ぜ合わせることを可能にし、スキンケア製品が肌になじみやすくなるようにするために重要な役割を果たします。
しかし、これらの成分の過剰な使用は、肌の自然なバリア機能に影響を及ぼし、肌荒れを引き起こすリスクがあります。何種類ものスキンケア製品を重ね塗りしたり、美容液などを重ね塗りすることは、長い目で見ると肌荒れの原因になることがあります。
肌荒れが起きている時は、シンプルなスキンケアにするのがおすすめです。
肌荒れ時には要注意!悪化させやすい習慣
普段はお肌にとっていい効果のあるものも、肌荒れが起きている時は、肌荒れを悪化させてしまう原因になることがあります。
ピーリングやピーリング効果のある洗顔
ピーリングやピーリング効果のある洗顔製品は、肌の表面に蓄積した古い角質を取り除き、新しい肌細胞の露出を促進することで、肌を滑らかにし、輝きを与える効果があります。しかし、ピーリング剤やピーリング効果のある洗顔製品を過度に使用すると、肌のバリア機能に悪影響を及ぼし、肌荒れの原因となることがあります。
特に、毎日の使用や過度な使用で、お肌にとって必要な角質も洗い流してしまい、バリア機能を壊してしまう原因になります。
肌荒れが起きている時は、ピーリングや酵素洗顔など、ピーリング作用のあるものはお休みするのがおすすめです。
レチノール製品の使用
レチノールはビタミンAの一形態であり、スキンケア製品に広く用いられています。その人気の理由は、肌のターンオーバーを促進し、コラーゲンの生成をサポートすることにより、しわの減少、肌の質感の改善、色素沈着の軽減など、多くの肌の問題に対処する効果があるためです。しかし、レチノールのこの強力な作用が、一部の人々にとっては肌荒れを悪化させる原因となることもあります。
肌荒れが起きている時は使用をお休みするか、濃度の低いものにして、様子を見ながら使用するのがおすすめです。
お肌の基礎力をアップして肌荒れを改善しよう
肌荒れは、不規則な生活習慣や間違ったクレンジングなどが原因で起きることがあります。しかし、お肌の美肌菌を育てて、お肌本来が潤う力を取り戻せば、お肌のバリア機能が強くなり、肌荒れが起きにくい肌作りをすることができます。
色々なことに気を付けるのが大変、なかなか改善されない、という方は、まずは美肌菌に着目したスキンケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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