掲載日 | 2024.04.08
更新日 | 2024.04.08

腸内環境の乱れが不眠を招く?腸活の意外な効果とは

掲載日 | 2024.04.08
更新日 | 2024.04.08
近年、「腸活」という言葉を耳にする機会が増えています。健康な腸内環境を保つことは、便秘の改善や免疫力向上だけでなく、驚くべきことに睡眠の質にも深く関わっているのです。

多くの人が悩む不眠問題は、ストレスや生活習慣が原因とされがちですが、最近の研究では腸内環境の乱れも大きな影響を与えていることが明らかになりました。
この記事では、腸活を通じて不眠を改善する方法について詳しく解説していきます。腸と睡眠の意外な関係に迫り、質の高い睡眠への道を探りましょう。

睡眠のメカニズム

睡眠のメカニズム

私たちの生活に欠かせない睡眠。この静かな時間が私たちの体と心にどのように影響を与えているのか、考えたことはありますか?睡眠は単に休息する時間以上のものです。睡眠中には、体は一日の疲れを回復し、心は情報を整理して記憶を定着させるための重要な作業を行っています。しかし、この不可欠なプロセスが妨げられると、私たちの身体や精神状態にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

睡眠のサイクルは、軽いレム睡眠から深いノンレム睡眠、そしてレム睡眠というフェーズを経て進行します。各フェーズは体と心の回復に欠かせない独自の役割を果たしています。例えば、深い睡眠中には体の修復と成長が促進され、レム睡眠中には学習した情報の整理や精神的な回復が行われます。これらのサイクルが適切に機能しないと、疲労感、集中力の低下、免疫系の弱体化など、日中のパフォーマンスに影響を及ぼします。

では、不眠が私たちの睡眠サイクルにどのように影響を与えるのか、そしてその背後にある原因は何なのか。さらに、私たちの腸内環境が睡眠の質にどのように影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

不眠になるとどのような症状が出る?

不眠になるとどのような症状が出る?

不眠に悩まされていると、その影響は夜だけに留まりません。十分な休息を取れないことで、私たちの身体と心にさまざまな不快な症状が現れ始めます。

疲労感と倦怠感
不眠の最も明白な影響は、日中の持続的な疲労感です。これは単に体が休息を必要としているサインであり、エネルギーの不足を示しています。

集中力の低下
睡眠不足は注意力と集中力の減少を引き起こします。これにより、仕事や学業、日常のタスクにおけるパフォーマンスが著しく低下する可能性があります。

記憶力の低下
不眠は記憶の固定化プロセスにも影響を及ぼし、新しい情報の学習や過去の記憶の呼び起こしに困難を生じさせることがあります。

情緒の不安定
睡眠不足は、イライラや不安、抑うつといった情緒的な問題を引き起こすことが知られています。これにより、人間関係にも影響が出ることがあります。

免疫機能の低下
長期間にわたる睡眠不足は、体の免疫システムを弱め、風邪や他の病気にかかりやすくなることがあります。

これらの症状は、単に不快であるだけでなく、生活の質を大きく低下させる可能性があります。睡眠は私たちの健康と幸福にとって基本的な要素であり、不眠に対処することは、身体的、精神的な健康を保つために非常に重要です。

不眠が起きる原因

不眠が起きる原因

不眠は多くの人が直面する問題で、その背後にはさまざまな要因が存在します。睡眠の質と量を妨げるこれらの要因を理解することは、不眠の解決策を見つける上で重要です。一般的な原因は以下のとおりです:

ストレス
日常生活の圧力、仕事の締め切り、人間関係の問題など、精神的なストレスは不眠の最も一般的な原因の一つです。ストレスは心を過度に活性化させ、リラックスして眠りにつくことを困難にします。

不規則な生活習慣
不規則な睡眠スケジュール、夜遅くまでのスクリーンタイム、不健康な食生活、運動不足など、日常生活の習慣が睡眠の質に大きく影響します。

精神的な健康状態
不安障害やうつ病などの精神的な健康問題は、しばしば睡眠障害を引き起こす原因となります。これらの状態は、心の落ち着かなさや悩みをもたらし、安眠を妨げることがあります。

物理的な健康問題
痛み、喘息、アレルギー、内分泌異常など、さまざまな健康上の問題が夜間の不快感を引き起こし、睡眠を妨げることがあります。

環境要因
騒音、不快な寝具、部屋の温度など、睡眠環境が適切でない場合、質の高い睡眠を得ることが難しくなります。
カフェインやアルコールの摂取: 夜間にカフェインやアルコールを摂取すると、眠りを妨げる原因となることがあります。これらの物質は、睡眠のリズムや質に影響を与えることが知られています。

これらの要因が相互に作用し、不眠を引き起こすことがあります。しかし、生活習慣の変更やストレス管理の技術を学ぶことで、多くの場合、不眠の症状を改善することができます。また、腸内環境が睡眠に及ぼす影響についても理解することで、不眠に対するより総合的なアプローチが可能となります。次のセクションでは、腸内フローラと睡眠の質との間に存在する驚くべき関連性について探ります。

腸内環境と睡眠の関係

腸内環境と睡眠の関係

私たちの腸内には、健康やウェルビーイングに直接影響を与える何兆もの微生物が生息しています。この腸内フローラ、またはマイクロバイオームと呼ばれる複雑な生態系は、消化や免疫システムの機能だけでなく、意外にも睡眠の質にも大きな影響を及ぼしています。最近の研究では、腸内環境と睡眠の間に深い関係があることが示されており、この発見は不眠症の治療法に新たな光を当てています。

腸と脳の深い関係「脳腸関係」

私たちの体には、腸と脳が密接に会話をしているような仕組みがあります。この不思議な関係を「脳腸関係」と呼び、まるで遠く離れた親友同士が手紙をやりとりしているように、お互いにメッセージを送り合っています。腸は私たちの「第二の脳」とも呼ばれることがあり、その理由はここにあります。

腸から脳への手紙

私たちが食べるものは、腸内の数兆もの微生物によって分解されます。これらの微生物は、私たちが元気に過ごすために必要な栄養素を作り出すだけでなく、腸から脳へ「手紙」を送ることもできます。この「手紙」には、私たちがどのように感じ、振る舞うかに影響を与える重要な情報が含まれています。特に、気持ちを落ち着かせたり、安心感を得たりするのに役立つメッセージがあり、これが睡眠の質にも大きな影響を与えます。

睡眠への影響

良い睡眠を取るためには、脳がリラックスし、一日のストレスから解放される必要があります。ここで腸内の微生物が重要な役割を果たします。健康な腸内環境は、リラックスを助ける「手紙」を脳に送り、良質な睡眠を促します。逆に、腸内環境が乱れると、脳への「手紙」の内容も乱れ、不安感やストレスを感じやすくなり、結果として睡眠の質が下がることになります。

腸活で良質な睡眠へ

腸内環境を整えること、つまり「腸活」は、腸から脳へ送る「手紙」の質を高めることにつながります。バランスの良い食事、発酵食品の摂取、適度な運動はすべて、健康な腸内フローラを育て、良質な睡眠へと導くサポートをしてくれます。脳と腸が良好な関係を築いていると、心身ともに健康で、毎日を元気に過ごすことができるのです。

腸内環境が良くない人が増加中

腸内環境が良くない人が増加中

最近の研究によると、腸内環境の乱れが増加している人々が増加しています。この現象は、現代社会におけるさまざまな要因に起因すると考えられています。特に、食生活の変化、高強度の甘味料や加工食品の消費の増加、特定の制限的なダイエットの採用などが、腸内フローラのバランスを崩し、ディスバイオシス(腸内環境の乱れ)を引き起こしています​(※1)(※2)。また、生活習慣の変化、ストレスの増加、運動不足なども、腸内フローラの多様性の低下や健康に不可欠な微生物の減少に寄与している可能性があります​(※3)​。

これらの要因により、腸内環境の健康を守ることが難しくなり、結果として、腸内環境が乱れる人が増加しています。

理想の「便」とは

では、自身の腸内環境が整っているかどうかは、どのように判断したらいいのでしょうか。目安の1つとして、便の状態や回数を参考にするのがおすすめです。

理想の便の回数

理想的な便の回数や状態には個人差がありますが、一般的なガイドラインがいくつかあります。健康な便の頻度は、1日に数回から1週間に数回の範囲が一般的です。この範囲外の頻度でも、それがあなたにとって「快適な状態」であれば心配する必要はありません。

便の回数が多くても、お腹が詰まるような感じがしたり、お腹が張るような不快感があれば、腸内環境が整っていない可能性もあります。

理想の便の状態

便の状態に関しては、便は長くてソーセージのような形が理想的です。固すぎる便や完全に液体の便は、それぞれ便秘や下痢を示す可能性があります。

便の色は、健康な場合はたいていオレンジ茶色や黄茶色です。ただし、食べ物によっては便の色が変わることがあります。

便をする際には、無理に押し出す必要がなく、比較的短時間で済むのが理想です。便通が非常に長い時間を要する、または出し切れていない感じがする場合は、便秘の兆候である可能性があります。

女性に便秘の人が多い理由

女性に便秘の人が多い理由

女性が便秘になりやすい理由は、いくつかの要因によるものです。一つの理由は、女性のコロン(大腸)が男性より平均で10センチメートル長いという解剖学的な差異があります。これにより、女性の消化管を食べ物や廃棄物が移動する時間が長くなり、便秘が起きやすくなる可能性があります​(※4)​。

また、ホルモンの変動も大きな役割を果たしています。特に、女性の生涯にわたって経験する月経、妊娠、閉経などの時期におけるエストロゲンやプロゲステロンの変動は、便秘に影響を与えることがあります。これらのホルモンの変動は、消化管の動きを遅くし、便秘を引き起こすことが示唆されています​。

さらに、女性が便秘になりやすいという研究結果もあり、その比率は男性の2倍以上とも報告されています​(※5)。ただし、これらの理由は完全には解明されておらず、研究は進行中です。

いい睡眠が便秘を解消する

いい睡眠が便秘を解消する

良質な睡眠を取ることで、私たちの体はストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げることができます。コルチゾールは必要な時には身体を守る役割を持ちますが、長期間にわたって高いレベルで存在すると、腸内の微生物バランスを乱し、有害な細菌が増える原因となり得ます。睡眠によってストレスレベルが減少すると、このような負の影響を抑え、腸内環境を健康に保つことができます。

また、睡眠は私たちの脳にも大きな影響を与えます。特に、幸せホルモンとして知られるセロトニンの生成に関係しています。このホルモンの大部分は腸で作られ、適切な睡眠によってその生成が促されます。セロトニンはその後、睡眠を誘導するメラトニンへと変換されるため、睡眠と腸内環境は密接に関連しているのです。

このように、良質な睡眠は腸内環境を整える効果を持っています。睡眠と腸の健康は、お互いを支え合う重要な関係にあると言えるでしょう。

不眠を解消する!腸活のやり方

不眠を解消する!腸活のやり方

腸内細菌の世界は善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌という3つの主要なグループから成り立っています。健康な腸内環境を維持するためには、このバランスが非常に重要です。

善玉菌は私たちの消化を助け、免疫機能を支えるなど、腸の健康に必要不可欠な役割を担っています。一方で、悪玉菌が過剰になると腸内環境を損ない、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。日和見菌は腸内環境に応じて善玉菌または悪玉菌のように振る舞い、このデリケートなバランスを左右します。

したがって、善玉菌を増やし、悪玉菌を制御することで、腸内環境の健康を保つことが腸活の基本です。

では、不眠を解消するために、KINS LABO的おすすめの腸活方法をご紹介します。

腸活のやり方の基本は3つ。

1.菌を取り入れる (善玉菌を含むものを食べる)
2.菌を育てる (善玉菌のエサとなる食べ物を食べる)
3.菌の邪魔をしない (悪玉菌を増やすような食べ物や習慣を避ける)

このやり方をベースに日々の生活を送ることで、腸活が自然と身についていきます。

腸にいい菌を取り入れる

腸にいい菌を取り入れる

まずは腸にいいと言われている菌を取り入れましょう。乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌が代表的な菌です。

日本人に合うのは発酵食品

納豆や味噌などの発酵食品は、日本人の腸活に特におすすめです。これらの食品が日本人におすすめな理由は、長い歴史を通じて日本の食文化に根ざしてきたからです。

これらの発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸内フローラを整える効果があるとされています。特に、日本人の腸内環境には、日本特有の食生活や遺伝的背景から、これらの発酵食品から得られる微生物がうまく適応している可能性があります。

納豆、味噌、醤油、ぬか漬けなどの、昔からある発酵食品を、日々の食事に取り入れてみましょう。

ヨーグルトは植物性がおすすめ

ヨーグルトを取り入れる場合は、乳糖不耐症というものを考慮する必要があります。

乳糖不耐症とは、乳製品に含まれる乳糖を分解するための酵素、ラクターゼの活動が低いために乳糖を消化しきれず、摂取後に腹痛やガス、下痢などの症状を引き起こす状態を指します。

日本を含む東アジア地域では、伝統的な食文化に乳製品が少ないため、乳糖不耐症の人が多く見られます。このため、通常の乳製品ベースのヨーグルトを消化することが困難な人が多いのです。

そのため、ヨーグルトから乳酸菌やビフィズス菌を摂りたい時は、豆乳やアーモンドミルクなどの植物性ミルクをベースにしたヨーグルトがおすすめです。

腸の菌を育てる

腸の菌を育てる

菌を取り入れたら、取り入れた菌を育てて増やしていきましょう。腸内にいる善玉菌は、自力で増えることができないため、善玉菌が増えるためのエサとなる食品をたくさん摂ることも必要です。

水溶性食物繊維をしっかり摂る

水溶性食物繊維は、水に溶ける食物繊維のことで、主に果物、野菜、豆類、穀物などに含まれています。この種類の食物繊維は、腸内でゲル状に変わり、便の量を増やすとともに、水分を保持することで便の質を改善し、排便を促進します。

さらに、水溶性食物繊維は腸内で発酵されやすく、この過程で善玉菌の栄養源となり、善玉菌の増加を促します。善玉菌が豊富になると、腸内環境が改善され、便秘の解消や免疫力の向上、さらには疾病予防にも繋がるとされています。

オリゴ糖もおすすめ

オリゴ糖もまた、善玉菌のエサとなります。オリゴ糖は短い糖の鎖で構成されており、消化されにくい性質を持っています。そのため、大腸に到達するまで分解されず、そこで善玉菌によって発酵されます。オリゴ糖は特にビフィズス菌などの善玉菌の成長を助け、腸内環境を整える効果があるとされています。

オリゴ糖は玉ねぎやにんにく、バナナなどに自然に含まれているほか、サプリメントとしても摂取できます。

腸の菌を邪魔しない

腸の菌を邪魔しない

腸内の菌を増やすためには、菌の邪魔をしないことも大切です。菌が育つ上で、邪魔になってしまうものを控えましょう。

グルテンの摂りすぎに注意

グルテンは、小麦やライ麦、大麦などに含まれるタンパク質で、パンやパスタ、ケーキなど多くの食品に使われています。一部の人々はグルテンに対して感受性が高く、セリアック病や非セリアックのグルテン感受性を持っている場合があります。

これらの状態では、グルテンの摂取が腸の炎症を引き起こし、腸壁の損傷や栄養素の吸収不良を招くことがあります。また、感受性がない人でも、グルテンの過剰摂取は腸内環境のバランスを乱し、腸内炎症や過敏性腸症候群(IBS)のリスクを高める可能性があります。

動物性脂肪質は控えめに

動物性脂肪の過剰な摂取は、腸内環境に悪影響を及ぼすことが示されています。高脂肪の食事は腸内の炎症を促進し、腸内細菌の組成を変化させることがあります。
これは、特に有害な細菌の増加や善玉菌の減少に繋がることがあり、結果として腸内バランスの乱れや消化不良、免疫系の機能低下を招く可能性があります。また、動物性脂肪が多い食事は心血管疾患や特定のがんのリスクを高めることも知られています。

添加物は出来るだけ控えて

加工食品に多く含まれる添加物も、腸内環境に負の影響を与える可能性があります。一部の保存料、着色料、甘味料などは、腸内の善玉菌を減少させることが研究で示されています。

特に、人工的な甘味料は腸内細菌の代謝に干渉し、インスリン感受性の変化や炎症の増加に繋がることがあります。加工食品に頻繁に使用されるこれらの化学物質は、自然な腸内細菌群のバランスを乱し、腸の健康を損なう可能性があります。


腸活で不眠トラブルを改善しよう

腸活で不眠トラブルを改善しよう

腸活と不眠の関連性を理解し、より良い睡眠への道を探ることは、私たちの日常生活において非常に重要です。腸内環境を整えることは、不眠解消への効果的なアプローチの一つとして注目されています。

この記事では、腸活を通じて睡眠の質を向上させる方法、腸内フローラと睡眠リズムの関係性、そして腸活に役立つ食材や生活習慣について詳しく解説しました。日々の腸活が、心身の健康を支え、質の高い睡眠へと導く第一歩となります。今日からあなたも腸活を始めて、心地よい眠りを取り戻しましょう。

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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