ダイエットと腸内細菌編【後編】ヤセ菌・デブ菌とは?ダイエットにおすすめのヨーグルトもご紹介
今回【後編】は、話題のヤセ菌・デブ菌について解説していきます。また、ヤセ菌を増やすのにおすすめな、スーパーなどで手軽に買えるヨーグルトやサプリメントもご紹介します。
ヤセ菌・デブ菌とは?
ヤセ菌・デブ菌はこのうちの「日和見菌」に当たり、腸内環境が「善玉菌」優位になるとヤセ菌となって痩せやすい体質になり、「悪玉菌」優位になるとデブ菌となって太りやすい体質になると考えられています。
ダイエットと腸内細菌の関係ーラットの腸内細菌移植実験
その結果、同じエサを与えて同じカロリーを摂取していたにも関わらず、デブ菌を移植したラットはヤセ菌を移植したラットよりも肥満になりやすいという結果が報告されたのです。
さらに、今度はそれぞれのラットの腸内細菌(ヤセ菌・デブ菌)を交換して移植したところ、デブ菌を移植したラットの方が太りやすくなるという結果になりました。
この研究から、同じものを食べていても、腸内細菌によって太りやすさに差が生じる可能性があることが分かったのです。
欧米人と日本人のヤセ菌の違い
欧米人に多いヤセ菌ーアッカーマンシア菌
アッカーマンシア菌(アッカーマンシア・ムシニフィラ)は腸内に生息する菌の一種で、血糖値を下げる働きが期待されています。
肥満の人の腸内には少なく、肥満でない人の腸内には多く生息していることから、アッカーマンシア菌(アッカーマンシア・ムシニフィラ)は糖尿病や肥満との関係性も指摘されている善玉菌なのです。
日本人に多いヤセ菌ーブラウディア菌
ブラウディア菌は腸内細菌の一種で、体内で脂肪の貯蓄を抑えたり、炎症を抑えたりする働きの酢酸を作り出すとされている善玉菌です。
また、このブラウディア菌は、欧米人に比べて日本人の腸内に多く生息していることも分かっています。
研究チームによると、肥満のマウスにブラウディア菌を与えたところ、体脂肪と体重いずれにも減少が見られたことが報告されました。
この結果から、ブラウディア菌には脂肪の貯蓄を抑制し、肥満を防止する効果がある「ヤセ菌」である可能性が明らかになったのです。
ダイエットへの近道?ヤセ菌を増やすには
知っておきたい「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」
プロバイオティクスとは、ヨーグルトのようにビフィズス菌や乳酸菌など、善玉菌そのものを摂取することを指します。
プレバイオティクスとは、食物繊維やオリゴ糖など、善玉菌のエサとなるものを摂取することを指します。
したがって、プロバイオティクス食材とプレバイオティクス食材どちらも摂取することは、結果的にヤセ菌を増やすことに繋がると考えられています。
母乳とヤセ菌の関係
母乳とヒトミルクオリゴ糖(HMO)
母乳で育ち、そのヒトミルクオリゴ糖によって乳児期から腸内に多くのビフィズス菌が存在している人にはヤセ菌が多く生息しているというデータが発表されました。
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)とは、ヒトの母乳に含まれるオリゴ糖の総称です。
このヒトミルクオリゴ糖がビフィズス菌のエサとなり、ビフィズス菌を腸内に増やし定着させるプレバイオティクスになると考えられています。
もちろんこれはあくまで統計上のデータであり、遺伝や環境などによっても変わってくるものです。
母乳で育っていないから、または母乳で育てていないからといって不安になる必要はありません。
このデータで分かることは、ヤセ菌が増えやすい環境を作るために、ビフィズス菌などの善玉菌やそれを増やすためのプレバイオティクスを積極的に摂っていくことが大切であるということです。
ダイエットに効果的なプロバイオティクスの例
実際にスーパーやインターネットで手軽に購入することができる、ダイエットに効果的なプロバイオティクス商品をご紹介します。
ヨーグルト・サプリメント|メグミルク
「ガセリ菌SP(SBT2055)株」
スーパーで購入できるおすすめの商品として今回ご紹介するのは、メグミルクの「ガセリ菌SP株」を使用した商品です。
このガセリ菌SP株(正式名称はラクトバチルスガセリSBT2055株)は、プロバイオティクス乳酸菌の一種です。
悪玉菌の増殖を抑えて腸内環境を善玉菌優位に整えることで、内臓脂肪を低減させる健康効果が期待されています。
ヨーグルトであれば加熱調理などの必要もなく、朝食やおやつとして手軽にプラスできるので実践しやすいのではないでしょうか。
サプリメント|ラクトバチルスクルヴァタスHY7601株+ラクトバチルスプランタラムKY1032株
ラクトバチルスプランタラムKY1032株は植物性由来の乳酸菌で、キムチや漬物などの発酵食品にも含まれています。
からだの免疫力を高め、便秘や肌荒れを改善する効果が期待されています。
また、ラクトバチルスクルヴァタスHY7601株とラクトバチルスプランタラムKY1032株を12週間摂取したところ、腹囲や体重の減少効果が認められたことが韓国の研究で発表されました。
これらの菌を摂取できるサプリメントはインターネットで購入することができます。
ヨーグルトや発酵食品が体質に合わない方は、サプリメントで取り入れてみるのも良いでしょう。
サプリメント|サッカロミセスブラウディ+ SOD
サッカロミセスブラウディは、ライチやマンゴスチンなど、フルーツの皮に由来するプロバイオティクス酵母菌の一種です。
胃酸に強く、生きたまま腸に届くことで腸内細菌のバランスを整えて病原菌などから腸を保護する働きをします。
SOD(スーパーオキシドジムスターゼ)は、細胞内に発生した活性酸素を除去する酵素で、身体の酸化を防ぐ働きをします。
この2つのプロバイオティクスが合わさったサプリメントを2ヶ月間、1日2回摂取したところ、3kg弱の減量に成功したことがイタリアのダブルブラインドテストにおける研究で明らかにされました。
この結果は、厳しい食事制限や激しい運動がなくても、菌の持つチカラがダイエットに良い効果をもたらすことを証明したと言えるのではないでしょうか。
ヤセ菌を増やすことで健やかな美しさを手に入れて
極端な食事制限や激しい運動といった無理を続けていると、知らず知らずのうちにストレスや疲れが溜まりがちに。
ダイエットで大切なのは、単に痩せて見た目が細くなることではなく、生命力が溢れるようなヘルシーさを手に入れることではないでしょうか。
KINS LABでは無理なく楽しく、からだの内側からの健康を土台にした美しさを手に入れていただくために、ファクトベースの情報をご提供できるよう取り組んでいます。
腸が喜ぶインナーケアで、心身ともに軽やかな毎日をお過ごしください。
ダイエットと腸内細菌編【前編】はこちらから
「菌をケアすることが当たり前の世の中にしたい!」
YouTubeでも、菌と美と健康の話をお届けしています。
菌ケアの専門家「下川先生」の菌ケア大学チャンネルはこちら▼
【前編】痩せるホルモン「GLP-1」を腸で作る方法/「脳腸相関」 脳と腸の意外な関係
【後編】痩せ菌・デブ菌とは?スーパーで買えるダイエットにおすすめのヨーグルトを紹介
【参考文献】
摂取カロリーと太りやすさの違い Ridaura VK, et al. Gut microbiota from twins discordantfor obesity modulate metabolism in mice. Science. 2013Sep 6;341(6150):1241214. doi: 10.1126/science.1241214.
ブラウティア菌のマウス投与による体重、体脂肪減 Hosomi K, et al. Oraladministration of Blautia wexleraeameliorates obesity and type 2diabetes via metabolic remodelingof the gut microbiota. NatCommun. 2022 Aug 18;13(1):4477.doi: 10.1038/s41467-022-32015-7.
乳児期の授乳期間と体重増加の軌跡 Carling SJ, et al. Breastfeedingduration and weight gain trajectoryin infancy. Pediatrics. 2015Jan;135(1):111-9. doi:10.1542/peds.2014-1392.
ガセリ菌SBT2055株 12週間 内臓脂肪-8.5% 浮辺 健. 乳酸菌と体脂肪低減作用(ガセリ菌SP株の例を中心に).乳業技術.2020;70(R2):75-85.
ラクトバチルスクルヴァタス ラクトバチルスプランタラム 12週間 体重-0.93kg 腹囲-1.31cm Mo SJ, et al. Effects ofLactobacillus curvatus HY7601 andLactobacillus plantarum KY1032 onOverweight and the GutMicrobiota in Humans:Randomized, Double-Blinded,Placebo-Controlled Clinical Trial.Nutrients. 2022 Jun15;14(12):2484. doi:10.3390/nu14122484.
サッカロミセスブラウディ+SOD 8週間 体重-2.73kg Rondanelli M, et al. Effects of 60-DaySaccharomyces boulardii andSuperoxide DismutaseSupplementation on BodyComposition, Hunger Sensation,Pro/Antioxidant Ratio,Inflammation and Hormonal Lipo-MetabolicBiomarkers in ObeseAdults: A Double-Blind, Placebo-ControlledTrial. Nutrients. 2021 Jul23;13(8):2512. doi:10.3390/nu13082512.
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
X : @yutaka_shimo