「運動」が腸活に効く!腸内細菌を育てる方法
最近の研究により、腸内環境と運動の関係性が明らかになってきています。
運動を取り入れることで、もっと効果的な菌ケアを始めてみませんか?KINS LABOと一緒に、運動と菌ケアの関係について学んでみましょう。
適度な運動が健やかな腸内細菌を作る
気持ちが良いと感じる程度の運動は体にリラックス感を与えて、自律神経にも良い影響を与えます。
腸は自律神経に支配されている臓器。
そのため腸にとっても自律神経を整えてくれる運動は、とても大切なことなのです。
しかし、逆にアスリートのように運動により強いストレスや緊張を伴う人では、下痢や腹痛などのお腹のトラブルを抱えることも多くあるようです。
これはストレスが自律神経に影響を与え、その結果、腸の働きにも影響してしまうからでしょう。
運動と腸内環境は一見関係がないように見えて、実は私たちにさまざまな影響を与えているのです。
アスリートの腸内細菌は多様性がある?
運動と腸内細菌は自律神経で繋がっているだけではなく、非常に複雑な仕組みでお互いに影響し合っています。
例えば、「運動が腸内細菌に与える影響について」次のような研究があります。
2014年にアイルランドで行われた研究報告によると、エリートラグビー選手とそうではない一般の健常人について、腸内細菌の多様性に違いがあることがわかりました。(※1)
その研究でわかったことは、
・アスリートの腸内環境は普通の人よりも、「善玉菌」の割合が高くなっていた
ということでした。
一般的に腸内細菌は多様なほうが良く、善玉菌が多い環境のほうがトラブルが起こりにくいと考えられています。
つまり、普通の生活を送っている人と比べて運動をライフワークとしている人の方が、腸内細菌に多様性があり良いバランスが保てていると言えるのです。
アスリートは痩せ菌が多い?
同じ研究で注目すべき点として、ラグビー選手ではバクテロイデス門の菌が少ないことも分かりました。
「痩せ菌」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
このバクテロイデス門は「痩せ菌」とも呼ばれ、痩せやすい体質の人に多いと言われている菌なのです。
さらに2型糖尿病肥満や肥満を抑制する作用があるといわれる「アッカーマンシア・ムシニフィラ」という腸内細菌が、ラグビー選手には多いことも判明しました。
菌バランスは実は、ダイエットや生活習慣病にも深く関わってくるのかもしれませんね。
アスリートにおける菌の多様性と食事の関係
では、運動は腸内細菌に対してどのように影響し、多様性をもたらしてくれるのでしょうか?
ヒトの腸内細菌と運動の関係はまだまだ研究段階で、未解明な部分も多いです。
しかしアスリートの場合は強度の高い運動に加え、アスリート特有の食事調整によるカロリー摂取やタンパク質摂取、食物繊維や炭水化物の摂取量などが、腸内環境に関わっているのではないかと考えられています。
確かにアスリートと一般の人では、食事の内容が大きくことなりますよね。
とくに「糖質」「食物繊維」 の摂取量を調整しているアスリートが多いですが、これらの栄養素は菌バランスにも深く関わっているのです。
ある研究によれば、食物繊維を1日あたり25g以上と非常に多く摂取しているアスリートは、腸内細菌の多様性において良い結果が得られていたのです。(※2)
また、運動の種類とその食事内容によっても、腸内細菌の多様性に違いがあることも研究で明らかになっているよう。
例えば低炭水化物・低食物繊維の食事を摂ることが多い持久系アスリートでは、「高タンパク食」の食事が腸内細菌バランスに悪影響をもたらす可能性が示唆されています。
さらに、プロテインなどの「高蛋白・低炭水化物」の食事を摂ることが多い筋力系アスリート(ボディビルダーなど)では、「短鎖脂肪酸産生細菌の減少」などのデメリットも指摘されているのです。
短鎖脂肪酸は乳酸菌やビフィズス菌の作り出す、良い成分。
その短鎖脂肪酸を作り出す生産菌が減ってしまう可能性があるのですね。
運動には便秘改善の効果も
便秘やお腹のハリなどに悩んでいるという方にとっても、運動はとても大切です。
例えばヒトにおける研究で、軽い運動によって食物の消化管の通過時間が短くなるという報告があります。
「毎日1日1万歩以上の歩行を2週間」続けた人の消化管通過時間を比較したところ、小腸における通過時間はあまり変わりませんでしたが、大腸の通過時間は8時間も短縮されたのだそうです。
大腸の通過時間が短くなるということはつまり、「運動により便の滞留を防げる」ということが考えられますね。
あれこれと便秘対策を行っているけれど、なかなか改善しない…という方は、もしかしたら運動が切り札になってくれるかもしれません。
運動パフォーマンスと腸も関係している?
ここまでのお話は運動が腸内環境に与える良い影響についてでしたが、今度は逆に腸内環境が運動に与える影響について深堀していきます。
運動パフォーマンスと腸内環境
運動→腸内環境というベクトルとは逆に、腸内環境を整える→運動パフォーマンス向上にも繋がるのではという研究も進められています。
最近ではスポーツ選手のコンディショニングにおいても、腸内環境が非常にホットな話題になっているようです。
マウスを使った研究では腸内環境と、運動能力、疲労、筋肉量などとの関連性について調べられています。
乳酸菌が乳酸を酪酸に変える経路で、運動中のエネルギー生産を促す物質が増えるためと報告している研究結果も。
ヒトにおける研究結果はまだ未解明の部分も多いようですが、腸内環境と運動の関係はこれからさらに明らかになってくるのではないでしょうか。
運動の目安は75分?適度な運動がカギ
運動が腸内細菌を整える上でとても意味があることが分かったところで、具体的にどのくらいの運動を行えば良いのでしょう?
菌ケアの効果を高める運動のポイントと注意点についても紹介します。
菌ケア効果を高めるための運動は、
- 適度な時間
- 適度な強度
であることがポイントです。オーバーワークとなるような運動は逆に負担となってしまうこともあるからです。
しかし「適度な運動」と言っても、どれくらいが「適度」となるのでしょうか。
WHO(世界保健機関)によると健康を保つための運動として、汗をかく運動であれば週に75分、ウォーキングであれば週に150分が適切とされています。
また、運動というと少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、日常生活に溶け込むような形で取り入れると無理なく続けられます。
例えば、ウォーキングは腸内細菌に良い効果を与えることが分かっています。
米コロラド大学の研究報告によれば、人生の早い段階でウォーキングなどの運動習慣を取り入れると、腸内フローラの健康的な状態をより維持することができるそう。(※3)
その後の人生おいても脳を長く健全に保ち、代謝的活性を促進する可能性があると考えられています。
ウォーキングは腸内環境はもちろん、生活習慣病の予防やダイエット、美容にも良いのでぜひチャレンジしてみてください。
1日あたり20分から30分程度を目安に、呼吸を意識しながらリラックスして行うことがポイントです。
今回は運動と腸内細菌についてお話してきました。
運動は腸に良いということが、もっと具体的に理解できたのではないでしょうか?
肥満防止や健康のためにも、運動を取り入れることは非常に有効な菌ケアのアプローチの一つです。
食事や生活習慣による菌ケアも大切ですが、運動も取り入れて菌ケア効果をさらに高めていきたいですね。
ここで大切なことはストレスにならない程度に運動を取り入れることです。
ご自身のペースで、少しずつ取り入れていきましょう。
参考文献】:
・(※1)「The Irish rugby team has exceptional guts: Exercise and diet impact gut microbial diversity」
Teagasc
・(※2)「The Effect of Athletes’ Probiotic Intake May Depend on Protein and Dietary Fiber Intake」
Joy Son, Lae-Guen Jang, Byung-Yong Kim, Sunghee Lee, and Hyon Park
・(※3)「Early-life exercise alters gut microbes, promotes healthy brain and metabolism」
University of Colorado at Boulder
・「Exercise Modifies the Gut Microbiota with Positive Health Effects」
Vincenzo Monda, Ines Villano, Antonietta Messina, Anna Valenzano, Teresa Esposito, Fiorenzo Moscatelli, Andrea Viggiano, Giuseppe Cibelli, Sergio Chieffi, Marcellino Monda, Giovanni Messina
・「Lactobacillus plantarum TWK10 Supplementation Improves Exercise Performance and Increases Muscle Mass in Mice」
Yi-Ming Chen, Li Wei, Yen-Shuo Chiu, Yi-Ju Hsu, Tsung-Yu Tsai, Ming-Fu Wang, Chi-Chang Huang
・「Early-life exercise may promote lasting brain and metabolic health through gut bacterial metabolites」
Agnieszka Mika, Monika Fleshner
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
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