脳腸相関とは?機嫌の良い“腸と脳”の作り方
「最近イライラとすることが多くて…」
「なんだか鬱々してしまう…」
「ついつい、ストレスが溜まると食べ過ぎてしまって…」
揺らぎやすいマインド、それによってさらに負のループに陥ってしまう…ということは誰しも経験があるのではないでしょうか。そんな気分の浮き沈みを改善するカギは「腸内環境」にあったのです。
今回は、皆さんが日々抱えるメンタルの波を「腸」でコントロールする方法について、お話ししましょう。
腸内環境を整えるとメンタルが整う仕組み
みなさんもきっと、一度は耳にしたことのある「GABA」と「セロトニン」。
これらは約60種類以上あるとされる神経伝達物質の一種。俗に言う、「脳内ホルモン」として、日々私たちの心と体をコントロールしています。(脳内ホルモンとは医学的な名称ではありませんが、神経伝達物質の総称として一般的に使われています。)
これらは実は私たちのメンタルの状態に深く関わっているだけでなく、腸の働きとも相関関係にあるのです。
リラックスを助けるGABA
「GABA」には興奮した神経を鎮めたり、心身をリラックスさせる働きがあるとされています。
実は、近年、乳酸菌を摂取することで、「腸」にあるGABA受容体が刺激を受け、その刺激が「脳」と「腸」をつなぐ中枢神経を伝って「脳」に届き、脳内での「GABA」の生産を促すことが分かりました。
つまり腸のはたらきや腸内環境と、GABAの生産量が関係しているということですね。そして結果的に、私たちのマインドにも影響していると考えられます。
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニン
全体の約90%が腸で作られているとされる「セロトニン」。「セロトニン」には、不安定な気分を安定させ、心を穏やかにする役割を担っているほか、睡眠の質を高める働きがあるとされています
腸で「セロトニン」を合成するときに必要不可欠となる、ビタミンB6をはじめとしたビタミンB群やビタミンKは、「腸内細菌」によって作られているのです。
つまり…
ます菌をカラダにいれて菌を育てることで、「腸」をより良い「環境」へと整えることができます。そしてさらには心のバランスを左右する、「神経伝達物質(セロトニン)」の数を増やす効果が期待できるということ。
それが私たちを、ストレスに負けない「しなやかな心とカラダ」へと導いてくれる力となるのです。
では、実際にストレスが私たちの腸内環境にどういった影響を与えるのかも、考えていきましょう。
ストレスは腸内細菌にダメージを与える
腸は、「第二の脳」であるといわれています。
日常生活の中の、ちょっとした心配事や不安、そして緊張感…。
もしかしたら、季節の移り変わりや環境の変化などでも、心のバランスに浮き沈みを感じることがあるかもしれません。
そういった、あらゆるストレスなどの影響で自律神経が乱れてしまうと、優位になるのは「交感神経」です。
ところが、腸の蠕動(ぜんどう)運動を支配しているのは「副交感神経」とされています。
そのため、心に負荷を感じることで、自分自身でも気づかないうちに「交感神経」が優位となると、腸の動きが鈍くなり、便秘や下痢などのあらゆる腸内トラブルを引き起こしてしまう事実も。
さらには、バランスを崩した腸内環境下では「悪玉菌」が増えてしまう可能性が高く、肌荒れや免疫力の低下をも引き起こし、マイナスがさらなるマイナスを呼び起こすこととなってしまうのです。
実際に、ストレスを受け続けることで腸内の分泌物のバランスが変わり、結果的に悪玉菌が優位になりやすい環境になってしまう…といったデータもあるのです。
メンタルを腸内環境からコントロールしていくには
それでは実際に、どのようにストレスに負けない腸内環境にしていけばよいのでしょうか?
まずは、基本となるのは以下の2点です。
菌ケアで腸内環境を整える
まず基本的に腸内環境を整え、はたらきをよくすることが大切。そのためには善玉菌・悪玉菌・日和見菌といった腸内フローラバランスをよくしていくことが最初のステップです。
・善玉菌を直接カラダに摂り入れる(プロバイオティクス)
・善玉菌を育ててくれるモノを摂取する(プレバイオティクス)
これらは具体的には、発酵食品を取り入れたりして良い菌を体に取り入れ、さらに食事バランスに気を付けその菌を育てていくことを指します。善玉菌のエサとなってくれる、水溶性食物繊維などの栄養をしっかり摂っていくことも大切です。
良い菌を増やしていくことで、善玉菌自体が悪玉菌を抑えてくれ腸内フローラのバランスが整っていくのです。
腸内環境を整えるために食べるものについて、詳しくはこちら▼
「幸せホルモン」をつくれる生活習慣を
「GABA」や「セロトニン」を増やす効果が期待できる食材というのもあります。それらを積極的に摂ることを心掛けてみてください。
「GABA」は、発芽玄米、キムチ、納豆、じゃがいも、きのこ、トマトなどから摂ることができます。
そして、「セロトニン」は、トリプトファンという物質から合成されます。
トリプトファンが豊富に含まれている食品は、大豆類や、乳製品、ピーナッツやバナナなど。
さらに、トリプトファンから「セロトニン」を合成するときには、ビタミンB6が必須となります。
ビタミンB6を豊富に含むのは、鰹やマグロの赤身、鮭、サバ、サンマなどの魚類、玄米や小麦胚芽、胡麻やニンニクなどです。
そして、毎日の朝食は、必ず食べるようにすること。また、ゆっくり噛んで食べることにより「セロトニン」の分泌を増やす効果が期待できます。
日中には、太陽光の下で軽い運動を心掛けることも「セロトニン」の活動を促すことになります。ストレッチやヨガ、ウォーキングなど、毎日30分でも体を動かす習慣を作ってみてくださいね。
みなさんが、明日は今日よりも伸びやかなこころで、晴々とした一日を送ることができますように。
【参考文献】
1) Proc Natl Acad Sci USA. 2011 Sep 20:108(38)
2) 藤田紘一郎:『心身健康科学』8巻2号,2012年9月,69-73
3)Gut Microbiota Regulation of Tryptophan Metabolism in Health and Disease
Julien Planchais Harry Sokol Show footnotes
記事の監修
岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。
INSTAGRAM : @yutaka411985 , @yourkins_official
X : @yutaka_shimo