掲載日 | 2023.10.01
更新日 | 2023.10.01

リーキーガット症候群が私たちの体に及ぼす症状と、その対処法

掲載日 | 2023.10.01
更新日 | 2023.10.01

近年、にわかに注目を浴びている腸の現象として「リーキーガット症候群」というものがあります。正式には「疾患」として認められていないものの、各種論文に記載があったりと、色々な全身の不調と関連していると考えられているものです。

リーキーガット症候群とは

リーキーガット症候群とは

リーキーガットとは、「漏れる」という意味のリーキー(leaky)と「腸」という意味のガット(gut)の2つの語句が組み合わさった言葉であり、日本語では「腸もれ」と訳されることもあります。

リーキーガット症候群は、ある一定の条件が揃うと腸の細胞と細胞のつながりが緩んでしまい、そこから腸の内容物が文字通り「漏れる」状態のことを指すのです。

有害なものから身体を守っている腸

口から食道、そして胃、腸、肛門は全て繋がっています。その意味では「消化器官」は、血管や筋肉、心臓や脳などの臓器と異なり「外部からの侵入物」に対して直接触れてしまう器官です。
そのため、消化器官には腸内細菌をはじめ様々な菌や毒素、異物が常に存在している状態です(脳や心臓、血管には通常、菌は生息していませんよね)

胃や腸はこうした外部の「体にとってよくないもの」が体の内側に入り込むリスクを防ぎつつ、有益な栄養素だけを取り込んでいます

しかしリーキーガット症候群を起こしていると、細胞と細胞の隙間から腸の中にある「食べ物の細かい成分」「菌」「悪玉菌が出した毒素」が血管の中に漏れ出してしまい、体の中を回ることになります。

当然、本来入り込んではいけないものを取り込んでしまうことになるので、体のあちこちに不調が現れる、と考えられているのです。この状態がリーキーガット症候群です。

リーキーガット症候群で全身に現れる(可能性がある)症状

リーキーガット症候群で全身に現れる(可能性がある)症状

これらは厳密には疾患と認められていませんので、「可能性がある」という表現にしています。ですが、以下に書くことは実際に論文内にも記載があるものです。
世界中では今も、このようなリーキーガット症候群と様々な不調との関係が研究されていることでしょう。

リーキーガット症候群と関連すると考えられる不調

・肌荒れ
・アレルギー
・花粉症
・便秘
・肥満
・生活習慣病
・精神病
・自己免疫疾患(自分の免疫が自分自身を攻撃してしまうもの)

リーキーガット症候群を起こした結果、どこにどんな影響が現れるかは正確にはまだ定義されていません。
漏れ出した毒素や菌が肌で悪さをする(ニキビ、アトピーなど)こともあれば、そのまま脳で悪さをする(鬱やアルツハイマー、気分の低下など)ことも考えられます。

特にアレルギーをはじめとする免疫系への影響は顕著です。
本来あるべきではないものが入り込むことにより、当然それを排除すべく免疫機能が働きます。

リーキーガットの状態が長く続くことは、常に免疫に対してなんらかの刺激が行われていることと同義です。そのため、少しずつ少しずつ、免疫機能に異常が現れます。腸内では「食べ物=栄養」として認識されていたものも、想定外の状態で体内に入り込むと免疫が働き「抗体」が作られます。

すると、次にその食べ物が入ってきた時に過剰に免疫が反応してしまい、アレルギー症状を引き起こす…という可能性が示唆されています。

リーキーガットが起きる原理と対処

リーキーガットが起きる原理と対処

リーキーガットを起こす原因として考えられているものは大きく二つあります。

グルテン(小麦)の慢性的な摂取

本来、腸の細胞と細胞はきっちりと閉じているのですが、これでは栄養素を体内に取り込むことができません。そこで「ゾヌリン」という物質がこの細胞のつながりを「適度に」緩め、栄養を体内に取り込みやすくしています。

しかし、グルテン(小麦)の元となる「グリアジン」というたんぱく質は、腸にたどり着くと「ゾヌリン」の分泌を活性化してしまいます。

慢性的な小麦の摂取により、ゾヌリンの分泌が過剰に活性化してしまうと、徐々に腸の細胞が緩んでいき、最終的には内容物が漏れ出してしまうのです。

腸内細菌バランスの乱れ

腸内細菌のバランスが整っていれば多少小麦を食べたところで、上記のような現象は起きません。

腸内細菌がしっかり生息しており、かつバランスの整っている方の腸内では、腸内細菌が腸内の粘膜の形成を助けます。グリアジンによる刺激から腸を守ったり、細胞の緩みの修復を助けてくれるからです。

しかし、もし腸内細菌のバランスが崩れている状態で慢性的な小麦の摂取があると、リーキーガットを引き起こす可能性が高まります。

こような理由から、例えば感染症やピロリ菌除去のために「抗生物質」を飲んだ後(つまり、体内の菌を大きく殺菌した後)に発症することもあると考えられています。治療で抗生物質を飲んでから体調がなんだか優れない。ピロリ菌除菌をしてから性格が変わった。というケースがあるようです。

腸内細菌のはたらき・基本の腸活法はこちら▼


グルテンフリーと菌ケアで対策を

グルテンフリーと菌ケアで対策を

は原因として挙げた小麦の摂り過ぎと、腸内環境を改善すること。そのために

・グルテンフリー
・菌ケア

の二つを実践することです。
グルテンフリーは小麦に含まれる「グルテン」を避けて生活すること。人によっては慢性的な肌荒れが、2週間程度のグルテンフリー実践でぐっと落ち着くこともあるようです。

グルテンフリーについては、こちらの記事を参考に実践を▼

ただ、現代社会に置いて「小麦を一切食べない」のは、なかなか難しいもの。

そこで「菌ケア」も併せて行うことが重要です。

特にリーキーガットの疑いがある場合は、腸内細菌のバランスが悪くなっている(または、そもそも数が少ない)可能性も、ひとつの側面として考えられるのです。

身近な習慣から見直しを

まずは手軽にできる方法として「善玉菌を生活に取り入れる」こと。
腸内細菌の中でも良い働きをしてくれる「善玉菌」を、発酵食品など普段の食生活からも取り入れていきましょう。

加えて、日々の生活を少しずつ見直すことが必要です。
例えば夜のラーメン。例えば頻繁な飲み会。例えば栄養の偏った食事……。

腸内細菌に悪影響を与える要因を、少しずつ除去することが重要。
これらの食事は悪玉菌を増やしたり、善玉菌にとって良くないとされるためです。

リーキーガットの原因となる生活習慣について知りたい方はこちら▼


菌ケアとグルテンフリー生活で腸にやさしい習慣を

菌ケアとグルテンフリー生活で腸にやさしい習慣を

リーキーガット症候群は全身の不調に関わっているとされていますが、その始まりは腸から。

そして腸内環境のためには、毎日の習慣改善は切っても切り離せません。
毎日の食事を変えていくだけで、リーキーガット症候群の予防策となりえます。ライフスタイルも見直しながら、菌にやさしい習慣を学んでいきましょう。

腸内細菌のはたらき・基本の腸活法はこちら▼

[参考文献]
Chloe Terciolo. (2019.) Beneficial Effects of Saccharomyces boulardii CNCM I-745 on Clinical Disorders Associated With Intestinal Barrier Disruption

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
X : @yutaka_shimo

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