掲載日 | 2024.04.10
更新日 | 2024.04.10

認知症を腸活で予防!軽度認知障害で食い止めるためには

掲載日 | 2024.04.10
更新日 | 2024.04.10
近年、健康と長寿の秘訣を探る中で、「腸活」が注目されています。しかし、驚くべきことに、この腸の健康が私たちの脳、特に認知症のリスクにどのように影響を及ぼしているかについての研究も次々と発表されています。

私たちの腸内には、心身の健康に不可欠な腸内細菌が存在し、これらが脳と重要なコミュニケーションを行っています。これを「腸脳軸」と呼びます。これは、腸の健康を改善することが、認知機能の保護や認知症リスクの低減につながる可能性を示唆しています。

この記事では、腸活が認知症予防にどのように役立つのか、また、日常生活で簡単に取り入れられる腸活の方法について掘り下げていきます。

認知症とは

認知症とは

認知症は、記憶、思考、判断力、言語能力などの認知機能が衰え、日常生活に著しい影響を及ぼす一連の症状を指します。この状態は特定の病気や脳の損傷によって引き起こされることが多く、高齢者に特に多く見られますが、必ずしも老化の自然な過程ではありません

認知症の原因は多岐にわたりますが、アルツハイマー病が最も一般的であり、認知症患者の約60%から70%を占めています。その他の原因としては、脳血管障害による血管性認知症、ルイ体病、フロントテンポラル認知症などがあります。これらの病態は脳内の異常なタンパク質の蓄積、血流の障害、神経細胞の損傷などによって認知機能の低下を引き起こします。

認知症の影響は、単に記憶力の低下にとどまらず、日常的な判断力の喪失、感情の変化、社会的スキルの低下など、患者本人だけでなく家族や周囲の人々にも大きな負担をもたらします。早期発見と適切なサポートがあれば、症状の進行を遅らせ、生活の質を高めることが可能です。

認知症の症状

認知症の症状

認知症は徐々に進行する疾患であり、最初は軽微な記憶障害や混乱といった症状から始まります。しかし、病状が進行するにつれ、より深刻な認知機能の低下が現れ、日常生活に大きな支障を来します。以下は、認知症の一般的な症状についてです:

記憶力の低下
特に新しい情報の記憶や近い過去の出来事を思い出すことに困難を感じます。
判断力の喪失
日常的な判断を下すことが困難になり、例えば金銭管理や運転といったタスクで問題が生じます。
言語能力の低下
単語を見つけるのが難しくなったり、話すこと、書くこと、理解することが困難になります。
時間と場所の感覚の喪失
日付や時間の感覚が失われ、馴染みのある場所でも方向を見失います。
物の置き場所を忘れる
物を不適切な場所に置くことが多くなり、その後、どこに置いたかを思い出せなくなります。
決断や計画をする能力の低下
日常のタスクの計画や実行が難しくなります。
気分や性格の変化
抑うつ、不安、怒りっぽさ、妄想など、感情的な変化が見られます。

これらの症状は個人差が大きく、認知症の種類によっても異なります。しかし、これらのいずれかが長期間にわたって持続し、日常生活に影響を与える場合は、専門の医療機関に相談することが重要です。早期に適切な介入を行うことで、生活の質を保ちながら症状の進行を遅らせることができます。

認知症は早期発見が大切

認知症は早期発見が大切

認知症の進行は、個人の生活の質に深刻な影響を及ぼすため、早期発見と早期介入は非常に重要です。早い段階で適切な支援と治療を受けることで、症状の悪化を遅らせ、患者さん自身とその家族の生活の質を向上させることができます。また、早期に介入することで、患者さんが社会とのつながりを維持し、自立した生活を長く続けることが可能になります。

『軽度認知障害』なら食い止められる可能性も

認知症の発症前段階とされる「軽度認知障害」(MCI: Mild Cognitive Impairment)では、記憶力の低下など軽度の認知機能障害が見られますが、日常生活には大きな支障がありません。MCIの段階では、正しい生活習慣の採用、適切な栄養摂取、そして定期的な運動によって、認知症への進行を遅らせる、あるいは食い止めることが期待できます。

軽度認知障害が認知症へ進行するかどうかは個人差がありますが、この段階での積極的な健康管理と生活習慣の改善によって、認知症への進行リスクを低減できる可能性が示唆されています。そのため、記憶力の低下や他の認知機能の変化に気付いたら、できるだけ早く専門の医療機関に相談することが重要です。

認知症と腸内細菌の関係

認知症と腸内細菌の関係

近年の科学的研究は、私たちの腸内細菌(腸内フローラ)と脳の健康との間に密接な関係があることを示しています。この「腸脳軸」と呼ばれる相互作用は、腸内細菌が脳の機能に影響を及ぼす様々な物質を生産することで、私たちの気分、認知機能、さらには神経系の疾患のリスクにまで影響を及ぼします。特に、認知症の発症と進行に腸内細菌がどのように関与しているかについての研究が注目を集めています。

認知症の人の腸内環境と認知症でない人の腸内環境

認知症の人と認知症でない人では、腸内フローラの構成に顕著な違いがあることが研究で明らかにされています。認知症の人では、炎症を引き起こす細菌の割合が高く、脳の健康に有益とされる細菌の割合が低いことが多いです。これらの炎症性細菌は、腸から発生する毒素や炎症性物質が血液を通じて脳に到達し、神経炎症や認知機能の低下を引き起こす可能性があることを示唆しています。

一方で、認知症でない人の腸内では、抗炎症作用を持つ細菌が豊富で、これが神経保護作用をもたらし、認知症のリスクを低減する可能性があります。このため、腸内環境を改善することによって、認知症の予防や症状の軽減が期待できるのです。

認知症予防に腸活を

認知症予防に腸活を

健康な腸内環境を維持する「腸活」は、認知症予防においても重要な役割を果たします。腸内のバランスを整え、善玉菌を増やすことで、脳の健康をサポートし、認知症のリスクを低減する可能性があります。以下のポイントに注目して、認知症予防のための腸活を始めましょう。

善玉菌を増やす乳酸菌

善玉菌の増加に役立つ乳酸菌は、ヨーグルトだけでなく、日本の伝統的な発酵食品にも豊富に含まれています。特に、味噌や納豆などの発酵食品は、日本人の体質や食文化に合った形で善玉菌を体内に取り入れることができます。これらの食品は、長い歴史を通じて日本人の食生活に取り入れられており、自然と体に合うようになっています。

乳製品に含まれる乳酸菌も腸活に有用ですが、日本人の中には乳糖を消化するのが苦手な人が多いため、乳製品が体質に合わないことがあります。その場合、植物性のヨーグルトが良い代替品になります。豆乳やアーモンドミルクをベースとしたヨーグルトは、乳糖不耐症の心配が少なく、善玉菌を増やす効果を期待できます。これらの植物性ヨーグルトは、乳酸菌の豊富な源でありながら、乳製品に対する消化の懸念を回避できるため、腸活に取り入れやすい選択肢です。

これらの食品を日常的に取り入れることで、腸内の善玉菌を増やし、健康な腸内フローラを維持することが、認知症予防に繋がる可能性があります。

善玉菌を育てる水溶性食物繊維

善玉菌を育てる水溶性食物繊維

善玉菌の栄養源となる水溶性食物繊維は、腸内環境の健康を維持し、腸内フローラのバランスを良好に保つ上で欠かせません。水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌によって発酵され、腸の動きを促進し、便通を改善するとともに、有害な物質の排出を助けます。以下の食品には、善玉菌を育てるための水溶性食物繊維が豊富に含まれています。

果物
りんご、バナナ、オレンジ、そしてベリー類などの果物には水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
野菜
にんじん、ブロッコリー、アスパラガスなどの野菜も、善玉菌を育てるための水溶性食物繊維を提供します。
豆類
大豆やレンズ豆、ひよこ豆など、豆類には高濃度の水溶性食物繊維が含まれており、善玉菌の増加を助けます。
全粒穀物
オーツ麦、大麦、玄米などの全粒穀物には、善玉菌を育てるための水溶性食物繊維が豊富に含まれています。

これらの食品をバランス良く取り入れることで、善玉菌の栄養源を確保し、健康な腸内環境を維持することができます。水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を効果的にサポートし、認知症予防に役立つ健康的な腸活に不可欠です。

善玉菌を邪魔しない

善玉菌を邪魔しない

「善玉菌を邪魔しない」ためには、日々の食生活で注意すべき点がいくつかあります。特に、腸内環境に影響を与える可能性のある加工食品や高脂肪食、砂糖の過剰な摂取、そしてアルコールの過度な摂取は避けるべきです。これらの食品や習慣は、悪玉菌の増殖を促し、腸内フローラのバランスを崩すことがあります。

加工食品は保存料や着色料、香料など多くの添加物を含んでおり、これらが善玉菌に悪影響を及ぼすことがあります。新鮮な食材を使った手作りの食事に切り替えることで、このようなリスクを避けることができます。砂糖の摂取も腸内フローラに影響を与えます。砂糖は悪玉菌や有害な酵母の増殖を促し、腸内環境の健康を損ねることがあります。代わりに、果物で自然な甘さを楽しんだり、ステビアやエリスリトールなどの健康的な甘味料を選ぶことが有効です。

脂肪質の選択にも注意が必要です。トランス脂肪酸や過剰な飽和脂肪酸を含む食品は善玉菌にとって不利であり、代わりにオメガ3脂肪酸や一価不飽和脂肪酸が豊富な食品、例えばアボカドやオリーブオイル、魚類を取り入れることが推奨されます。

アルコールの過度な摂取も腸内環境に悪影響を及ぼします。適度な量であれば問題ありませんが、過度になると腸内フローラを崩し、善玉菌に悪影響を与える可能性があります。適量を心がけ、十分な水分を取ることで、腸内環境の健康を守ることができます。

軽い運動も効果的

軽い運動も効果的

軽い運動は、腸の動きを促進し、健康な腸内環境の維持に役立ちます。ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、日常に組み込みやすい軽い運動は、血流を改善し、消化器系の機能を促進します。これらの運動により、腸内細菌のバランスが良好に保たれ、腸の健康がサポートされます。

運動の効果をサポートし、最大化するためには、適切な栄養が欠かせません。軽い運動を行う際には、水分の摂取や、筋肉の回復のためにたんぱく質を意識して摂るのがおすすめです。


認知症予防に腸活を

認知症予防に腸活を

認知症予防のための腸活は、日々の食生活の選択から始まります。善玉菌を増やすためには、乳酸菌が豊富な日本の伝統的な発酵食品や、植物性ヨーグルトの摂取が効果的です。また、善玉菌を育てるためには、水溶性食物繊維を多く含む果物、野菜、豆類、全粒穀物の摂取が推奨されます。

腸内の善玉菌を守り、悪玉菌の増殖を抑制するためには、加工食品や砂糖の過剰な摂取、不健康な脂肪質、アルコールの過度な摂取を避けることが大切です。さらに、軽い運動も腸の健康を支え、腸内フローラのバランスを整える上で有効です。運動をサポートするためには、適切な水分補給、タンパク質、複合炭水化物、抗酸化物質を含む食品の摂取が重要です。

これらの取り組みを通じて、腸内環境を整えることは、認知症予防において有望なアプローチとなります。

健康的な腸内フローラは、腸と脳の間のコミュニケーションを改善し、認知機能をサポートすることで、全体的な健康とウェルビーイングに貢献します。腸活を日常生活に取り入れ、健康的な生活習慣を実践することで、認知症のリスクを低減し、豊かで活動的な人生を送るための基盤を築くことができます。

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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