掲載日 | 2024.04.16
更新日 | 2024.04.16

高齢者は腸内環境が悪化しやすい?便秘を解消する腸活方法とは

掲載日 | 2024.04.16
更新日 | 2024.04.16
私たちの健康にとって重要な役割を果たす腸内環境ですが、高齢になるとそのバランスを保つことが難しくなります。
腸内環境が悪化すると、便秘だけでなく、腸閉鎖や大腸ガンのリスクも上がるため、腸活で腸内環境を整えておくことはとても大切です。

この記事では、高齢者の腸活に焦点を当て、食事や生活習慣など、健康な腸内環境をサポートする方法を詳しく解説します。年を重ねるごとに変化する腸のニーズに合わせた腸活で、より快適な毎日を送りましょう。

3割近くの高齢者が悩む便秘

3割近くの高齢者が悩む便秘

参考70歳以上の男性で便秘が急増!高齢者にとって便秘は危険なサイン!?

高齢になると多くの健康問題が顕在化しますが、特に便秘は年齢を重ねるごとに悩む人が増えていkます。

令和元年の国民生活基礎調査によると、60歳前半までは便秘に悩むのは圧倒的に女性が多いですが、それ以降は男性も増えていきます。
85歳~100歳の超高齢者になると、約3割の方が便秘で悩まされているという報告もあり、年齢を重ねるほど身近な悩みになっていきます。(※1)

どれくらい出なければ便秘?

便秘と一言で言っても、その基準は個人差がありますが、一般的には週に3回未満の排便または排便に苦労する状態を指します。ただ、排便のペースは個人差があり、毎日出ていてもお腹がスッキリしないという場合もあります。

2017年に日本消化器病学会の附置研究会によって作られた診療ガイドラインでは、便秘を「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義していて、便の回数については言及していません(※2)。便の回数が多くても、お腹が張ったり残便感がある場合は、便秘の可能性があります。

高齢者の場合、排便の回数が減少するだけでなく、排便時の不快感や努力が必要な状況も便秘の徴候とされています。

年齢を重ねると悪化しやすい腸内環境

年齢を重ねると、腸内環境は自然と変化します。特にビフィズス菌の数が減少し、ウェルシュ菌や大腸菌などの有害菌が増加する傾向にあります。このバランスの崩れは、腸内環境を悪化させてしまいます。

ビフィズス菌は腸内環境を整えたり、腸の動きをよくする役割を担っています。ビフィズス菌が減ることで、腸の動きが悪くなり、便秘を引き起こしやすくなります。

高齢者が便秘になりやすい理由

高齢者が便秘になりやすい理由

高齢者の便秘は、ただ単に生活習慣の問題とは異なり、多くの生理的、心理的変化が複雑に絡み合って引き起こされます。以下では、高齢者が便秘になりやすい主な理由を解説します。

腸の動きが鈍くなる「弛緩性便秘」

加齢に伴い、腸の筋肉が衰え、腸の動きが鈍くなることがあります。この状態は「弛緩性便秘」と呼ばれ、腸のぜん動運動の低下が主な原因です。
ぜん動運動は、消化された食物を腸を通じて押し出すために必要な動きであり、この動きが弱まると、食べ物のかたまりが腸内に長く留まり、水分が吸収されて硬くなり、便秘が生じます。高齢者は特にこのタイプの便秘に悩まされることが多くなっています。

ホルモンや自律神経の変化による便秘

加齢によりホルモンバランスや自律神経の機能が変化し、これが消化器官の動きに影響を与えることがあります。
特に副交感神経の活動低下は、腸の動きを遅くする原因となります。

また、女性の場合、更年期に伴うエストロゲンの減少は腸の動きを鈍化させ、便秘を引き起こしやすくします。

薬の副作用による「薬剤性便秘」

多くの高齢者は様々な健康問題のために多種多様な薬を服用しています。これらの薬剤には、便秘を副作用として持つものが少なくありません。特に鎮痛剤、抗コリン薬、抗精神病薬などが腸の動きを抑制し、便秘を引き起こすことがあります。

食事量が減ることで腸への刺激が減る

高齢者は食欲不振、咀嚼や嚥下の問題、または栄養吸収の効率の低下などにより、全体的な食事量が減少しがちです。
食事量の減少は、腸内の内容物が少なくなり、腸への物理的な刺激が減るため、便秘を引き起こしやすくなります。食物繊維を豊富に含む食品を意識的に取り入れ、定期的な食事を心がけることが重要です。

便意を感じにくくなる

感覚の衰えは加齢とともに自然に起こる現象で、便意の感覚も例外ではありません。便意を感じにくくなると、トイレに行くタイミングを逃しやすくなり、結果として便秘が悪化する可能性があります。

便秘が続くことで起きやすい症状

便秘が続くことで起きやすい症状

便秘が長期間にわたって続くと、単なる不快感以上の様々な身体的、精神的症状を引き起こすことがあります。ここでは、便秘が原因で起きやすい代表的な症状について詳しく説明します。

お腹の張りや腹痛

便秘が続くと、腸内に未消化の食物が滞留し、ガスがたまることが多くなります。これによりお腹が張った感じが生じ、時には鋭い腹痛を伴うことがあります。これらの症状は日常生活に支障をきたすことも少なくなく、適切な治療が必要です。

イライラ

便秘による不快感や体内の毒素の蓄積が、ストレスや不安を引き起こし、それがイライラや怒りといった感情の変化につながることがあります。特に長期間にわたる便秘は、精神的な健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

食欲が低下する

便秘が原因で腸内に食べ物が滞留すると、新たに食べ物を受け入れるスペースがなくなり、食欲が低下します。これは栄養不足を招くリスクがあり、特に高齢者の健康管理において注意が必要です。

嘔吐

重度の便秘は、消化管の逆流を引き起こすことがあり、これが嘔吐を誘発することがあります。嘔吐が頻繁になると脱水や電解質不均衡を引き起こし、さらなる健康問題につながる恐れがあります。

腸閉鎖

最も重い便秘の合併症として、腸閉鎖があります。これは便が硬く大きくなりすぎて、腸が完全に詰まってしまう状態を指します。腸閉鎖は緊急医療の対象であり、速やかに治療を受ける必要があります。

高齢者に腸活がおすすめな理由

高齢者に腸活がおすすめな理由

年齢を重ねると、腸内の悪玉菌が増え、反対にビフィズス菌などの善玉菌が減ってしまい、便秘を引き起こしやすくなります。そのため、腸活をして腸内環境を整えることは、単純に便秘解消をする以上のメリットがあります。

腸の動きがよくなる

腸活を行う最大の利点の一つは、腸の動きが良くなることです。高齢者の場合、自然と腸の動きは鈍くなりがちですが、適切な腸活によって腸のぜん動運動を活発にすることができます。
腸の動きがよくなることで、便秘が解消されやすくなり、お腹の張りや腹痛を解消することにつながります。

下剤による大腸ガンのリスクを低下させる

高齢者における便秘の一般的な治療法は下剤の使用ですが、長期間の使用は様々なリスクを伴います。特に、一部の研究では、過度の下剤使用が大腸ガンのリスクを増加させる可能性が示唆されています。

腸活を通じて自然な方法で便秘を解消することは、下剤依存を避け、このようなリスクを低減する効果が期待できます。具体的には、プロバイオティクスや食物繊維を含む食事の取り入れ、水分摂取の増加が推奨されます。

これにより、薬に頼ることなく腸内環境を整え、大腸ガンのリスク低下につながる健康的な腸の動きを促進することができます。

高齢者の腸活方法

高齢者の腸活方法

高齢者の腸活は、健康維持と生活の質向上に直結する重要な取り組みです。特に腸内環境を整えることは、便秘の解消や免疫力の向上に役立ちます。ここでは、高齢者が日常生活で実践できる腸活の方法を詳しくご紹介します。

腸にいい菌を摂る

腸の健康を維持するためには、善玉菌と呼ばれる腸に良い菌の摂取が不可欠です。善玉菌は、腸内環境を改善し、有害な菌の増加を抑えることで腸内フローラのバランスを整えます。

善玉菌は、身近な食べ物でいうと乳酸菌や納豆菌があります。ヨーグルトや漬物、味噌などの発酵食品や、納豆が好きな方は納豆もおすすめです。昔ながらの和食は、善玉菌が多い発酵食品がバランスよく摂れるので、まずは普段の食事をできるだけ和食にするだけでも変わります。

味噌汁、納豆、漬物は毎日の食事にとりれりゃすいので、おすすめです。

食事で難しい場合はサプリを

食事で難しい場合はサプリを

高齢者の場合、食事の制限や食べる量が少なくなることから、必要な量のプロバイオティクスを食事だけで摂取するのが難しい場合があります。そんな時は、サプリメントの利用がおすすめです。

プロバイオティクスのサプリメントは、善玉菌を直接的かつ効率的に腸に届けることができ、日々の腸活に役立ちます。

生きたまま腸まで届く乳酸菌や、日本人の身体に合う乳酸菌を使用したサプリを取り入れれば、より効果的です。

腸の菌を育てる食物繊維やオリゴ糖を摂る

腸の菌を育てる食物繊維やオリゴ糖を摂る

腸内の善玉菌を効果的に育てるには、食物繊維やオリゴ糖の摂取が非常に重要です。
特に水溶性の食物繊維は、消化されにくいため腸内で長く滞在し、腸の蠕動を促すとともに、善玉菌のエサとなります。これにより、善玉菌が活発に増殖し、腸内環境が改善されます。
水溶性食物繊維は、ぬるぬるしたものに多く含まれています。海藻類や納豆、オクラなどに多く含まれているので、海苔やワカメ、メカブなどをこまめに取り入れていきましょう。

一方、オリゴ糖も善玉菌の増加をサポートする働きがあります。これらの成分は、全粒穀物、野菜、果物、豆類などに豊富に含まれています。
オリゴ糖のシロップもあるので、食事だけで摂取が難しい方は、料理の際に砂糖をオリゴ糖に変えてみたり、ヨーグルトにかけたりするのもおすすめです。

水分をしっかり摂る

適切な水分摂取は、腸活において非常に重要です。水分は腸内の食物がスムーズに移動するのを助け、便の硬さを和らげる効果があります。高齢者になると身体の感覚が鈍くなり、「喉が渇いた」ということに気が付きにくくなっていきます。

脱水状態にもなりやすいため、意識的に水分を摂ることが推奨されます。特に、水やお茶などのカフェインが少ない飲料を選び、一日に6〜8杯の水を目安に摂取することが望ましいです。

喉の渇きに関係なく、時間を決めてこまめに水分摂取する方法もおすすめです。

ウォーキングやストレッチなどを取り入れる

定期的な身体活動も腸の健康には欠かせません。ウォーキングやストレッチなどの軽度から中等度の運動は、腸の蠕動を促進し、便秘を防ぐ効果があります。
特にウォーキングは、どなたにも取り入れやすく、日常生活に組み込みやすい活動です。毎日の散歩は、腸の動きを活性化させるだけでなく、全身の血流を良くし、健康全般に寄与します。また、簡単なストレッチは筋肉をほぐし、体の柔軟性を保ちます。

高齢者こそ腸活をして、病気のリスクも下げよう

高齢者こそ腸活をして、病気のリスクも下げよう

高齢者にとって腸活は、単に快適な日常生活を送るためだけではなく、病気のリスクを低減するためにも非常に重要です。健康な腸内環境は、便秘や消化不良を防ぎながら、免疫力の向上にも寄与します。これにより、感染症や慢性疾患のリスクが低下し、より健康的な高齢期を迎えることができます。

腸活を通じて腸の動きを促進し、善玉菌のバランスを良好に保つことは、消化吸収を改善し、体全体の栄養状態を最適化します。また、食物繊維やプロバイオティクスを積極的に摂ることで、腸内環境を整えることが可能です。これらの取り組みは、大腸ガンなどの重大な疾患の予防にも繋がります。

高齢者の方々にとって、日々の腸活は「健康の維持」と「生活の質の向上」を実現するための重要なステップです。医師や栄養士と相談しながら、自分に合った腸活方法を見つけ、病気のリスクを減らし、活力ある毎日を送りましょう。

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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