掲載日 | 2024.04.19
更新日 | 2024.04.19

睡眠と腸内環境の深い関係を説く!睡眠の質を上げる腸活方法

掲載日 | 2024.04.19
更新日 | 2024.04.19
私たちの健康にとって、腸内環境と睡眠の質は切っても切れない関係にあります。近年の研究によると、脳と腸は互いに密接に影響し合っており、そのつながりは「腸脳軸」として知られています。
特に、腸内のバランスが良好であると、睡眠の質が向上し、逆もまた真実です。

この相互作用を理解することで、私たちは日々の生活の中でより健康的な選択を行う手助けとなります。今回は、腸活に着目し、睡眠の質を高める方法について詳しく掘り下げていきましょう。

脳と腸内環境の深い関係

脳と腸内環境の深い関係

私たちの体内で起こる多くのプロセスは、一見すると独立しているように見えますが、実は互いに深く関連しています。特に、脳と腸内環境との関係は、科学界で注目されている「腸脳軸」によって説明されます。この腸脳軸は、脳と消化器系が化学的および物理的なシグナルで通信する神経系のネットワークを指し、感情や認知機能にも影響を与えることが明らかにされています。

腸内には、膨大な数の微生物が存在し、これらは「腸内フローラ」と呼ばれます。この腸内フローラのバランスが良いと、免疫系の健康、栄養の吸収、そして心の健康に良い影響を与えます。逆に、腸内フローラが乱れると、脳にネガティブな影響を与える可能性があることが研究によって示されています。例えば、ストレスが腸内フローラを乱し、その結果、不安感やうつ病のリスクが増加することがあります。

さらに、腸内環境は脳の機能にも影響を及ぼし、睡眠パターンやストレス応答にも重要な役割を果たしています。腸内の健康が睡眠の質に影響を及ぼすことは、睡眠不足が免疫機能の低下や感情の不安定を引き起こすことと同様に、腸の健康が全体的なウェルビーイングに必須であることを示唆しています。


睡眠時間が短い人ほど腸内環境が乱れやすい

睡眠時間が短い人ほど腸内環境が乱れやすい

睡眠は私たちの体全体に影響を及ぼす重要な要素であり、特に腸内環境と密接な関係があります。睡眠時間が短いと、体は必要な回復と再生のプロセスを完全に行うことができません。これにより、腸内フローラのバランスが崩れ、健康に悪影響を及ぼす可能性が高まります。

研究によると、睡眠不足は腸内の重要な抗菌ペプチドであるアルファディフェンシンの生産を減少させることが示されています。これらのペプチドは、腸内の有害な細菌や病原体を制御するのに重要な役割を担っており、その量が減少することで感染症のリスクが増加します。

また、短い睡眠は、酢酸やプロピオン酸といった重要な短鎖脂肪酸の生成をも阻害します。これらの短鎖脂肪酸は、腸壁の健康を維持し、抗炎症作用を促進し、全体的な免疫機能をサポートするのに不可欠です。その結果、睡眠不足は腸壁の障壁機能の低下を引き起こし、さらには全身の炎症反応を高めることがあります。

このように、睡眠不足は腸内環境の健康を直接的に損ない、結果的に全体的な健康にも悪影響を与えます。

腸内環境が乱れると睡眠の質が低下しやすい

腸内環境が乱れると睡眠の質が低下しやすい

健康な腸内環境を維持することは、良質な睡眠を得るためにも不可欠です。特に食生活がこのバランスに大きな影響を与える要因の一つであり、不適切な食事は腸内環境の乱れを引き起こし、それが直接的に睡眠の質に影響を与えることがあります。

不健康な食事、特に高脂肪や高糖質の食事は、腸内フローラの構成を変え、有益な細菌の減少と有害な細菌の増加を招きます。このような変化は、腸内環境の炎症を引き起こし、腸のバリア機能を低下させる可能性があります。また、この炎症反応は腸脳軸を介して脳にも伝わり、体のストレス反応を高めることによって睡眠障害を誘発することが示されています

トリプトファンとメラトニン

腸内環境の乱れは、睡眠に欠かせないホルモンであるメラトニンの産生にも影響を与えます。メラトニンは主に脳の松果体で生成されますが、その原料となるのはトリプトファンというアミノ酸です。腸内フローラが健康であると、トリプトファンの生物利用率が高まり、効率的にメラトニンに変換されます。しかし、腸内環境が悪化すると、トリプトファンの吸収が妨げられ、メラトニンの産生も不十分になることがあります。これにより、睡眠のリズムが崩れ、結果として睡眠の質が低下します。

さらに、悪化した腸内環境は消化不良や腹痛といった不快な症状を引き起こし、これらが睡眠をさらに妨げる要因となり得ます。

睡眠の質がアップすると腸内環境が整いやすい

睡眠の質がアップすると腸内環境が整いやすい

睡眠と腸内環境は密接な関係にあり、睡眠の質が上がると、腸内環境にもいい影響を与えます。
腸内環境が整うことで、身体の免疫力が上がったり、便秘が解消されたり、肌荒れを改善などの美容効果も期待できます。

まずは、睡眠の質を上げる習慣を紹介していきます。

朝日を浴びて体内時計を整える

朝日を浴びることにより、体は自然なリズムで目覚め、活動を開始するサインを受け取ります。太陽光に含まれるブルーライトが特に効果的で、これが直接的に脳の松果体に作用して、メラトニンの産生を抑制します。その結果、朝の目覚めが自然でスムーズになり、夜には適切な時間に睡眠を促す体の準備が整います

朝日を浴びることでリセットされた体内時計は、夜になると自然に眠気を感じさせるようになります。この習慣は、日中のエネルギーレベルを高め、夜間の睡眠の質を向上させることにも効果があります。

寝る1~2時間前は強い光を避ける

寝る1~2時間前は強い光を避ける

良質な睡眠は、就寝前の環境設定から始まります。特に、寝る1~2時間前には強い光、特にスマートフォンやテレビ、コンピュータの画面から発されるブルーライトの影響を最小限に抑えることが重要です。

デジタルデバイスの画面から発せられるブルーライトは、メラトニンの産生を抑制することが知られています。メラトニンは通称「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、私たちの睡眠サイクルを調節する重要な役割を持っています。夜間にブルーライトに晒されることは、この自然なリズムを乱し、眠りにつくのを困難にします。

就寝前には、スマートフォンやテレビの使用を控える、またはデバイスの設定でブルーライトを低減する機能を活用することが推奨されます。多くのスマートフォンやタブレットには、「ナイトモード」という設定があり、これを利用すると画面が暖色に変わり、ブルーライトの放出が抑えられます

また、部屋の照明を暖色の電球に変更することも、メラトニンの産生を妨げるブルーライトの影響を減らすのに役立ちます。このようにして環境光を調整することで、体は自然にリラックスモードに入り、スムーズに眠りにつくことができるようになります。

良質なたんぱく質でメラトニンを生成

良質なたんぱく質でメラトニンを生成

メラトニンの生産には、アミノ酸トリプトファンが必要です。このトリプトファンは、良質なたんぱく質源から得ることができます。例えば、大豆製品や魚、鶏肉、卵などが良質なたんぱく質を豊富に含んでおり、これらの食品はトリプトファンの優れた供給源です。トリプトファンは体内でセロトニンに変換され、その後メラトニンへと変換されるため、睡眠の誘導には不可欠です。

たんぱく質を適切に摂取することで、体内のトリプトファンレベルを適切に保ち、セロトニンとメラトニンの産生を促進することができます。このプロセスは、全体的な睡眠の質の改善につながります。特に、夕食時にこれらのたんぱく質源を取り入れることで、夜間のメラトニンの産生がスムーズに行われ、より深い睡眠を実現する手助けとなります。

カフェインの摂取は午後3時までに

カフェインの摂取は夕方までに

カフェインは中枢神経系を刺激し、眠気を抑える作用があります。これは、アデノシンという神経伝達物質の受容体に結合し、その活動をブロックすることにより、体が感じる疲労感を一時的に減少させるからです。しかし、カフェインの効果は摂取後数時間持続するため、就寝前にカフェインを含む飲料を摂取すると、眠りにつくことが困難になります。

一般的に、カフェインの半減期は約5時間と言われていますが、これは体質や年齢によって異なる場合があります。そのため、睡眠の質を損なわないようにするには、夕方までにカフェインの摂取を控えるのが理想的です。特に、午後3時以降はカフェインの摂取を避けると良いとされています。これにより、体内のカフェイン濃度が夜間に低下し、自然な睡眠リズムが保たれます。

カフェインを避けることは、特にカフェインに敏感な人や、睡眠障害を抱えている人にとってはさらに重要です。適切な時間にカフェインの摂取を停止することで、メラトニンの産生が妨げられることなく、より深い睡眠を得ることが可能になります。

睡眠の質がアップすると腸内環境が整いやすい

睡眠の質がアップすると腸内環境が整いやすい

睡眠の質は単に一晩の快適さに影響するだけではありません。良質な睡眠は、腸内環境の健康は睡眠の質に大きく影響する要素の一つです。腸内のバランスが取れていると、体の自然なリズムが促進され、より良い睡眠が可能になります。

腸にいい菌を摂る

腸内環境を整える最も基本的な方法の一つは、善玉菌を積極的に摂取することです。善玉菌には、乳酸菌や納豆菌などがあり、これらは腸内フローラのバランスを良好に保つのに役立ちます。乳酸菌はヨーグルト、キムチ、味噌などの発酵食品に豊富に含まれており、納豆菌は日本の伝統的な食品である納豆に含まれています。

これらの菌は、腸内の環境を酸性に傾け、有害な細菌の増殖を抑えることで全体の腸の健康をサポートします。また、善玉菌は免疫系の強化にも寄与し、腸からのシグナルが脳に正しく伝えられるようにすることで、睡眠の質を向上させる効果も期待できます。

食事で摂りきれない時はサプリを活用

日常の食事でこれらの菌を十分に摂取できない場合は、サプリメントの形で摂るのも一つの方法です。市販されているプロバイオティクスのサプリメントは、特定の善玉菌を簡単に、かつ効果的に摂取する手段を提供します。

特に、食品では胃酸や熱で死んでしまう菌も、サプリなら生きたまま腸まで届くものもあります。

なかなか食事にいつも気を遣えない、効率的に菌を摂りたい、という方はサプリメントも検討してみてはいかがでしょうか。

食物繊維で腸を綺麗に

食物繊維で腸を綺麗に

健康な腸内環境を維持するためには、食物繊維の摂取が欠かせません。食物繊維は、消化されにくいため腸を通過する間に、体内の老廃物を吸着し排出を助けることで、お通じを改善します。

また、食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなります。これにより、善玉菌の活動が活発になり、有害な細菌の増殖を抑制し、腸内環境のバランスを保ちます。善玉菌が増えると、短鎖脂肪酸が生成され、これが腸の健康をサポートするだけでなく、全身の炎症を減少させる効果も期待できます。

具体的な食物繊維の豊富な食品には、全粒穀物、豆類、野菜、果物、ナッツなどがあります。例えば、オートミール、レンズ豆、ブロッコリー、リンゴ、アーモンドなどは食物繊維が豊富で、日常の食事に取り入れやすい食品です。これらの食品を日々の食事に積極的に取り入れることで、腸の運動が促進され、便秘の解消や腸内フローラの健康が促進されます。

さらに、食物繊維の摂取は、腸内のpHバランスを整える助けとなり、結果として睡眠の質が向上します。良好な腸内環境は、ストレスや不安の軽減にも寄与し、これがリラックスして眠りにつくための環境を整えることにつながります。

腸の菌を邪魔しない

腸の菌を邪魔しない

腸にとっていい菌を取り入れることも大切ですが、それと同時に、腸内の菌を邪魔しないということも大切です。

ファストフードやコンビニご飯は控えめに

ファストフードやコンビニエンスストアの食事は、便利で手軽ですが、これらの食品は通常、添加物や保存料、高い脂質と糖質を含むため、腸内環境にはあまり好ましくありません。

これらの成分は腸内の善玉菌の活動を抑え、有害な菌が増殖する原因となり得ます。定期的にこのような食品を摂取することは、腸内フローラのバランスを乱し、便秘や下痢などの消化問題を引き起こす可能性があります。

健康な腸活を目指す場合は、これらの食品の摂取を減らし、新鮮な食材を使った自炊を心がけることが推奨されます。

グルテンの摂り過ぎには注意

グルテンは小麦や大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質であり、一部の人々にとって消化が難しいことがあります。特にセリアック病の人々やグルテンに敏感な人々は、グルテンを摂取すると腸の炎症を引き起こすことがあります。

しかし、グルテンに敏感ではない人々にとっても、グルテンの過剰摂取は腸の不快感や膨満感を引き起こすことがあります。バランスの取れた食生活を心がけ、グルテン含有食品の摂取を適度にすることで、腸内環境を健康に保ち、腸内の善玉菌を邪魔しないようにすることが重要です。


腸活をして質のいい睡眠を

腸活をして質のいい睡眠を

健康な腸内環境は、私たちの全体的な健康にとって非常に重要です。特に、腸活は質の良い睡眠を得るための鍵となります。この記事では、腸内環境を改善するための具体的な方法と、それがどのように睡眠の質に影響を与えるかを探究してきました。

  • 腸に良い菌を摂る
  • 食物繊維で腸を綺麗に
  • 腸の菌を邪魔しない

これらの腸活の方法は、直接的にまたは間接的に睡眠の質を向上させます。良質な睡眠は、メラトニンの適切な産生、ストレスの軽減、疲労の回復に直結し、日中の活動性向上にもつながります。腸活によって健康な腸内環境を維持することで、私たちはより快適な睡眠を実現し、エネルギッシュな毎日を送ることができるようになります。

このように、腸内環境の健康は睡眠の質と密接に関連しています。毎日の食事選びや生活習慣に気を配ることで、より健康的な生活が実現可能です。腸活を積極的に行い、質の高い睡眠を目指しましょう。

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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